FIBA男子ワールドカップにおいて、2024年に行われるパリ五輪の出場権獲得を狙う日本代表(FIBAランキング36位)に強烈な「追い風」が吹いている。
出場権獲得の条件は日本を含むアジア6カ国の中でトップになること。現状では27日にフィンランド(同24位)に勝利した日本以外、アジア勢で白星を挙げた国はいない。もし日本が、29日にある1次ラウンド最終3試合目のオーストラリア(同3位)戦に勝利すれば、ぐっと目標に近づく。現状を整理し、今後をシミュレーションする。
現状でアジア勢1位の日本
W杯に出場している国は32カ国で、最終的に全ての国を順位付けする。現在は4チームずつに分けられたA〜Hの8グループが1次ラウンドを戦っており、28日までに全チームが2試合を消化した。今後、全3試合を終えた時点でグループごとの上位2チームは決勝トーナメント進出を懸けた2次ラウンドに進み、下位2チームは17〜32位決定戦を戦うことになる。
アジア6カ国は全て別のグループに属しており、1次ラウンドで直接対戦することはない。ただ、勝敗数や得失点差で順位付けすることはできる。28日現在では、以下のようになる。
1位 日本・グループE 1勝1敗(得失点差:−8)
2位 フィリピン・グループA 0勝2敗(−16)
3位 ヨルダン・グループC 0勝2敗(−29)
4位 イラン・グループG 0勝2敗(−43)
5位 中国・グループB 0勝2敗(−62)
6位 レバノン・グループH 0勝2敗(−94)
このように、現状ではパリ五輪の出場権争いで日本がトップを走っている。フィンランドという格上を相手に勝利したことに加え、25日にあった同じく強豪国のドイツ(FIBAランキング11位)に対して63ー81で敗れはしたものの、「18点」という差に抑えたことも得失点差で優位に立っている大きな要因だ。
フィンランド戦前の公開練習後、トム・ホーバスHCも「ドイツ戦は前半で22点差だったから、40点差とかで負ける可能性もあった。でも、うちは後半にディフェンスを細かく直してモメンタムをつくり、18点差になった。普通18点差で負けると気持ちが落ちるけど、あの試合は違う。負けたから悔しいけど、みんな自信を持っています」と語り、ポジティブな評価をしていた。
アジアの強豪 “アフリカ勢”に軒並み敗北
冒頭で「追い風」と表現したのには別の理由もある。それは、2試合目までを終えた時点で、アジアの強豪国がアフリカ勢との対戦で軒並み敗れているためだ。アフリカの国々はFIBAランキングで下位のチームが多いため、予想外の展開と言える。以下は、アジア勢とアフリカ勢の主な対戦成績だ。
グループA:フィリピン(FIBAランキング40位)70ー80 アンゴラ(41位)
グループB:中国(27位)69ー89 南スーダン(62位)
グループG:イラン(22位)69ー71 コートジボワール(42位)
28日にニュージーランド(26位)と対戦したグループCのヨルダン(33位)は格上を相手に延長までもつれ込む接戦を演じたが、最終的に87ー95で勝利にはあと一歩届かなかった。
河村勇輝、パリ五輪へ「オーストラリアに勝てばほぼ決まる」
これらの結果を受け、もし日本が29日のオーストラリア戦で金星を挙げれば、2次ラウンド進出が決まり、パリ五輪出場に大きく近づくことができる。28日の公開練習後、フィンランド戦で大活躍したPG河村勇輝はこう意気込みを語っていた。
「アジアの他のチームが2勝してないというところで、明日オーストラリアに勝てば、パリオリンピックの出場権がほぼ決まるという状況にある。勝利だけを目指し、絶対勝ちたいです」
アジア6カ国の中で2次ラウンド進出の可能性を残しているのは日本、フィリピン、中国の3カ国。ただ、中国は得失点差や他カードの結果を加味するとかなりハードルが高いため、現状における最大のライバルはフィリピンだ。
中国を除いて考えると、29日に日本がオーストラリアに勝ち、フィリピンがイタリア(FIBAランキング10位)に敗北、もしくは勝利したとしても点差や他カードの結果によりグループ内で3位以下となった場合、日本がアジア勢で唯一2次ラウンドに進む。すると、その時点で日本のパリ五輪出場権獲得が確定する。
一方、日本がオーストラリアに負け、フィリピンがイタリアに勝利して点差や他カードの結果によりグループ内で2位以上となった場合、フィリピンがアジア勢で唯一2次ラウンドに進出することとなり、その場合はフィリピンのパリ五輪出場権獲得が確定する。
日本にとって大一番となるオーストラリア戦は、29日午後8時10分(日本時間)にティップオフ。フィリピン対イタリアは午後9時(同)に開始する。両カードに注目し、熱い夜を楽しみたい。
(長嶺 真輝)