日本男子バスケットボール代表チームが、2021年11月から始まったFIBAワールドカップ・アジア地区予選の最終ウインドウ(Window6)を戦う。
初戦は2月23日に世界ランク20位のイランと、そして同26日に同84位のバーレーンとの対戦となる。
「勝ちたい。15か月くらい前の中国戦(同アジア地区予選・1次ラウンド、2021年11月)は全然だめでしたが、少しずつ良くなってきました。ステップアップしたい。だから明日も本当にいいバスケットボールを見せたいです」
イラン戦を翌日に控えた22日、会場の高崎アリーナ(群馬県)で練習を行ったあとに取材対応したが、トム・ホーバスヘッドコーチ(HC)は最後のウインドウへ臨む意気込みをそのように語った。
FIBAワールドカップアジア地区予選最終ウインドウに意気込み
昨年、ホーバスHCから見いだされ代表招集をされて以降、欠かせないメンバーとなっている井上宗一郎(サンロッカーズ渋谷)は、このウインドウを戦うメンバーが決まり、よりチームとしての結束が高まってきたと言う。
「(選手たちは)選考で落ちるかもとかそういう余計なストレスがかかっていたと思うんですけど、これでしっかりメンバーが決まったことですし、それでみんなの団結力も高崎に入ってから感じられるようになってきていて、昨日や今日の練習でもすごいいい雰囲気でできているので、みんな準備はできていると思います」
1次ラウンドを1勝4敗でスタートした日本は、その後は4勝1敗とし、ここまで5勝5敗と勝率を五分としている。フィリピン、日本、インドネシアの共催となるワールドカップ本戦で日本は開催枠で出場を決めてはいるものの、2019年ワールドカップと一昨年の東京オリンピックで全敗に終わっている同チームが世界大会での1勝を目指すうえで、アジアで負け越すわけにはいかない。
しかし、勝ち星もさることながら、より肝要なのは中身だ。
2021年の東京オリンピック後に日本のヘッドコーチに就任したトム・ホーバス氏の打ち出す「ファイブアウト」に代表される、よりポジションレスなスタイルに取り組んできた。だが、一定の時間帯では痛快なほどに機能してはいるものの、試合全体では上下動が大きい。
オフェンスの生命線である3Pについて、ホーバスHCは40%ほどの高確率で決めることをチームに求めるが、ここまでのアジア予選でのそれは28.4%と遠く及ばない。結果、1試合の平均得点は同予選参加チーム中8位の72.6点と物足りないものとなっている。
それは他の国も同条件ではあるが、オフシーズン中だった昨夏以降、まとまった合宿期間を設けられていない。とりわけ選手間の連動性が求められるホ―バスHCのスタイルを、十全に熟成させる時間が足りていない。
今回のウインドウでは「きれいなエクセキューションがしたい」と指揮官は言うが、シーズン中である今回の事前合宿では練習試合も10分のゲームもできていないという。今回は若手や新たな帰化選手であるジョシュ・ホーキンソンが加わったこともあって、ケミストリーの構築は容易ではなかったようだ。
今回のウインドウの2試合で、より白熱した戦いが見られるのは23日のイラン戦だろう。イラン(6勝4敗)はグループFからワールドカップ本戦出場の最後の椅子をカザフスタン(5勝5敗)で争っており、イランは26日にアウェイで強敵の中国と対戦することを考えると、日本戦は必勝となる。
強敵イランに昨夏リベンジへ 河村勇輝「楽しみ」
今シーズン、Bリーグでアシストだけでなく得点面でも大きく飛躍を遂げている河村勇輝(横浜ビー・コルセア―ズ)がこのウインドウでも最注目の選手の一人となる。ただし河村は、対イラン戦ではあまり活躍ができておらず、昨年7月のアジアカップと同8月のウインドウ4での試合ではそれぞれ、8分半、11分強の出場時間にとどまり、得点も2得点と5得点。チームへの貢献度を表す指標であるプラスマイナスでもそれぞれ-8、-7と躍動できていない。
河村は、イランのスイッチディフェンス(動きのなかでマッチアップする選手を替えること)に苦戦したことが一つの理由だったと振り返る。
「イランのオールスイッチのディフェンスがすばらしいので、そこで自分もそうですし、チームとしてもアジャストがうまくいかずに、僕自身もポイントガードとして悩んでしまって、チームがうまく機能しない分、雑念がちょっと増えてしまってなかなかプレーにうまく入っていけないというところはあったと思います」
ドライブインからペイント内での得点か、もしくはそこからのキックアウトパスからの3Pというのが日本のオフェンスの生命線で、そこを承知するイランを含めた相手はスイッチで守ってくることが多々あり、そこに対して苦戦することが多かった。今回のウインドウはスイッチディフェンスにどれだけ対応できるかが大きなテーマとなる。
今シーズン、B1で日本人トップ(帰化選手を除く)の18.5得点、アシストは全体1位の8.9を記録。昨年11月のウインドウ5の2試合でも平均16.5得点と、周囲の想像を超える急成長を見せている河村は、23日のイランとの試合に際しても自信を崩さない。
「イランとは何度も戦ってきて、この合宿中もずっと対スイッチ、オールスイッチのところにアジャストしながらのオフェンスはすごくやってきたので、今回は楽しみです」
そのイランは今回、元NBA選手で長年同国代表を支えてきたベテランセンター、ハメッド・ハダディが故障により不在で、これまでとは違った戦い方をしてくる可能性はある。
登録メンバー12名発表 東海大19歳・金近廉も
22日夜には、イラン戦に臨む12名の登録メンバーが発表され、河村や富樫勇樹(千葉ジェッツ)、比江島慎(宇都宮ブレックス)ら常連が選ばれたほか、東海大所属の19歳、金近廉やジョシュ・ホーキンソンら新顔が選出された。
今月帰化申請が認可されたばかりながらいきなりの代表デビューとなるホーキンソンは、静かな口調で次のように話した。
「NTC(ナショナルトレーニングセンター)から荷物が運び出されるときに自分の番号があって、ちょっと感情的になったよ。明日はどんな試合になるかまったく想像がつかないけど、とても楽しみなのは間違いないよ」
イラン戦は午後3時、26日のバーレーン戦は2時5分のティップオフだ。
(永塚 和志)
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