勝久マイケルからの“推薦状” 躍動ジョシュ・ホーキンソンの日本代表デビューを後押ししたもう一人の指揮官
日本代表デビューを飾ったジョシュ・ホーキンソン©Basketball News 2for1
バスケットボールニュース2for1代表。スポーツニッポン新聞社の編集者・記者を経て、2020年に現メディアを立ち上げる。日本代表やBリーグからNBA、WNBAまで国内外さまざまなバスケイベントを取材。スポーツライターとしても活動している。

 男子日本代表(FIBAランキング38位)は23日、「FIBAワールドカップ2023 アジア地区予選 Window6」でイラン代表(同20位)と対戦し、96−61で勝利した。チーム最多20得点を記録した金近廉(東海大)やフィールドゴール6本中6本を決めるパーフェクトゲームを見せた河村勇輝(横浜ビー・コルセアーズ)など、多くの選手の活躍が光ったこの試合。コート上で大きなインパクトを残したのがジョシュ・ホーキンソン(信州ブレイブウォリアーズ)だった。

 今月6日に日本国籍を取得すると、すぐさま代表に招集されたホーキンソン。この試合では先発で出場すると、23分28秒間のプレーで17得点11リバウンド4アシストと攻守に大活躍。河村や渡邉飛勇(琉球ゴールデンキングス)と息の合ったコンビネーションプレーも披露し、華々しい日本代表デビューを飾った。

17得点11リバウンド4アシスト ホーバスHC「素晴らしかった」

 試合後の記者会見に登場したトム・ホーバスヘッドコーチ(HC)とホーキンソン。ホーバスHCは試合を振り返り、こう語った。

 「我々のスタイルをほとんど40分間、38分間ほど遂行できたと思います。12人のメンバー全員がプレーに絡み、ディフェンスからしっかりと役割を全うしていた。リバウンドが強いイランを相手にリバウンドを頑張れたのもよかったです。私がHCに就任してからの1年半でのベストゲームだったと思います。

 ジョシュ(ホーキンソン)のデビューも金近のデビューも素晴らしかったです。それぞれの選手のエネルギーが伝染して、素晴らしい勝利になったと思います」

試合後、記者の質問に答えるトム・ホーバスHC©Basketball News 2for1

 国際試合を戦う際、日本にとって長年の課題となっていたのがリバウンドとインサイドでのディフェンスだった。実際、昨年8月のWindow5でイランと対戦(68-79で敗戦)した時にはイランのリバウンドが51本だったのに対し、日本のリバウンドはわずか32本。オフェンスリバウンドでも17本を奪われていただけに、改善が急務なポイントとなっていた。

 今回の対戦ではイランの33本に対し日本は48本とリバウンドで大きくリード。イランのインサイドの要であるハメド・ハッダディが不在だったこともあるが、ホーキンソンや渡邉(8リバウンド)ら“動けるビッグマン”が奮闘したことがインサイドでの大きなアドバンテージにつながったことは間違いない。

 「リバウンドはよかったと思います。ジョシュが素晴らしい働きをしてくれましたし、飛勇もよかったです。今日の試合で一番よかったのは、全員が諦めずにリバウンドに飛び、最終的にボールを確保したシーン。チーム全員でつかみ取ったリバウンドで、それぞれが勝利のために何をすべきなのかということにしっかりと集中できていました」(ホーバスHC)

 ホーキンソンの加入が好影響をもたらしたのはリバウンドだけではない。代表初得点が3ポイントシュートだったように外からの得点力もあり、速攻では誰よりも速くゴールへと駆ける走力もある。Bリーグではリーグ3位となる平均1.4ブロックを記録するなど、リムプロテクターとしても優秀だ。そんな中で、指揮官はホーキンソンの「パス能力」も勝利の大きな要因だったと話す。

 「(ホーキンソンは)万能です。素晴らしいパサーで、それがイランにとっては痛手だったと思います。エルボーでボールをもらい、相手のビッグマンにプレッシャーをかけることができた。(ホーキンソンが)ディフェンスの注意を引きつけられるし、素晴らしいパスも出すことができる。状況判断能力も高いので、河村と2メンゲームをしていれば河村からいいパスをもらうこともできますし、逆コーナーにいる須田や比江島、金近などのシューターたちにパスを送ることもできる。ハッダディがいるときのイランがやっていたようなことを、今回は我々がやり返すことができました」

インサイドで奮闘するホーキンソン©Basketball News 2for1

「トムさんのバスケにはジョシュが日本一合うと思う」

 まだ1試合をプレーしただけだが、もはや日本代表にとって欠かせないピースになっている感すらあるホーキンソン。ホーバスHCとは今回の代表招集後に初めてコミュニケーションを取ったというが、そんな万能ビッグマンを指揮官に推薦した人物がいた。信州ブレイブウォリアーズの勝久マイケルHCだ。

 ホーキンソンの代表デビューの2日前、チーム練習後にバスケットボールニュース2for1のインタビューに応じた勝久HCはこう話す。

 「(昨夏の)オフシーズンに(ホーバスHCに)お会いさせていただいたときに、『トムさんのバスケにはジョシュが日本一合うと思うよ』と伝えました。その時には彼も『そうだよね、そうだよね』と反応してくれていましたね」

 ホーバスHCとの交流も深く、B1昇格後3シーズンにわたってホーキンソンとともにプレーしている勝久HCだからこそ、ホーバスJAPANにどれだけフィットするかがわかっていたのだろう。

 「ジョシュは(日本国籍取得のために)ずっと頑張ってきていて、遠征に行くときにも(日本語を)勉強しているような選手。なので(日本代表に選ばれて)本当に良かったですし、嬉しいです。これから長年日の丸を背負っていける選手で、それにふさわしい人間だとも思っています(ホーバスHCには)『本当にいい選手、そしていい人間、いいチームメイトだよ』ということは伝えました」

インタビューに応じた信州ブレイブウォリアーズの勝久マイケルHC©Basketball News 2for1

いい選手であり、いいチームメイト

 デビュー戦での自身のハイライトプレーについて聞かれ、ホーキンソンはこう答えた。

 「飛勇と一緒にプレーしていた時、僕がダブルチームをされて彼が素晴らしいカットでゴール下に飛び込んできた。その時にパスを出して、彼がダンクを決めたシーン。あのプレーでアリーナを沸かせることができたし、観客も喜んでいたし、僕もうれしかったです。彼にとってもチームにとってもエネルギーをもたらしたプレーでした」

 それを横で聞いていたトム・ホーバスHCが笑顔で一言。

 「いい答えだ」

 高い能力を持ちながら、個人成績よりもチームメイトの成功や勝利を何よりも優先するホーキンソン。「いい選手」であり「いいチームメイト」であるビッグマンの加入が、AKATSUKI JAPANのさらなる成長のカギを握るに違いない。

(滝澤 俊之)

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