今シーズン、土壇場での勝負強さが際立つBリーグ1部・琉球ゴールデンキングスの今村佳太。オフェンス能力にフォーカスが当たることが多いが、進化はそれだけにとどまらない。桶谷大HCが「ペリメーターを守らせたらこのチームで一番のディフェンダー」と評するように、さまざまなタイプの選手とマッチアップできる“万能ディフェンダー”としての能力に磨きをかけている。
琉球は4月5日にホームで行った大阪エヴェッサ戦でチームの平均失点(73.1点・リーグ3位)を大きく上回る89点を許して痛い黒星を喫するなど、最近は持ち味であるはずのディフェンス面で課題が顕在化している。6シーズン連続のチャンピオンシップ(CS)進出を決め、悲願の初優勝を狙うチームにあって、今村が本来のチームディフェンスを取り戻すための舵取り役となるか。
西地区6連覇に黄信号 広島も1ゲーム差に迫る
5日の試合は序盤から大阪にペースを握られる。エースのディージェイ・ニュービルを警戒する中、センターのショーン・オマラにインサイドで次々と加点され、最大11点までリードを広げられた。それでも第3Qにジョシュ・ダンカンの連続スリーなどで逆転に成功し、第4Q中盤にはオマラを退場に追い込んで完全に優位に立った。しかし、この試合で34得点を挙げたニュービルや勝負強い木下誠らのピックプレーからのシュートを最後まで止められず、接戦を落とした。
この結果を受け、西地区2位の琉球は通算成績が37勝11敗となり、18連勝中の1位島根スサノオマジックとのゲーム差は残り12試合の状況下で「4」に広がった。
地区6連覇に黄信号が灯ったことに加え、3位の広島ドラゴンフライズが1ゲーム差、4位の名古屋ダイヤモンドドルフィンズも2ゲーム差に迫っており、CS初戦のクォーターファイナルのホーム開催権も危うい状況となっている。
チームディフェンスに危機感 求められる「セイムページ」
ただ、それ以上にチームが危機感を持っているのはチームディフェンスにほころびが見られる事だ。試合の総括を求められた桶谷HCはこう語った。
「89点を取られたらなかなか勝つのは難しい。どんなチーム相手でも自分たちはディフェンスからリズムを掴むということをやらないといけない。ハードワークを大前提にして、みんながセイムページで同じ方を向いて努力することが大切だと思います。何回も転んでいるシーズンですが、七転び八起きじゃないですけど、何回でも立ち上がってCSで勝てる強いチームになっていきたいです」
今シーズン琉球が80点以上の失点を喫した試合は15試合あり、成績は7勝8敗。もちろん延長戦までもつれた試合は得失点とも増加するため、この指標だけでの評価は難しいが、チームの平均得点がリーグ10位の80.9点であるため、指揮官が指摘するように勝つためには89失点は多過ぎる。ちなみに、千葉ジェッツに敗れた4/1の試合のスコアも85ー89で同じ失点数だった。
チームのリバウンドランキングが42.0本でリーグトップの琉球はインサイドが強く、中で崩される事は少ないが、最近はピックプレーでインサイド陣が外に引っ張り出され、平面のミスマッチを突かれる場面が目立つ。大阪戦でもシーソーゲームとなった最終盤にニュービルとクーリーの1対1をつくられ、クイックネスやシュートレンジの広さに対応しきれず、立て続けにスコアされた。
それに対し、指揮官は「ジャックの所を狙われた時、スイッチしてやられたり、前に出なくてやられたりしましたが、もう一つできたのはトラップを仕掛けてボールを離させることだったと思います。ただ、それ以前に決められていいシュート、ダメなシュートがチーム内である中で、ニュービル以外の選手も含めて結構やられている部分がありました。反省点が多いです」と振り返る。その他、オーバーヘルプやボールマンへのプレッシャー不足なども課題に挙げた。
「強さ」と「スピード」に対応できる今村
そんな中、ディフェンスでの存在感を高めているのが今村だ。桶谷HCが「フィジカルでくる選手に対しても、スピードでくる選手に対してもどっちも守れるところは一番評価している」と語る通り、191cm、92kgでクイックネスと体の強さがあるため、相手のエース級を中心に様々なタイプのプレーヤーにつくことができる。
大阪戦ではマッチアップしたニュービルが大量得点を挙げたが、1対1の場面では随所で厳しくシュートチェックをしたり、体を当てたりして好ディフェンスを見せた。他の試合でもビッグマンに対して体を張ったり、小柄なガードの鋭いドライブからのレイアップをブロックしたりする場面も多い。
今シーズンの総スティール数は53本(平均1.1本)で、既にキャリアハイまであと1本に迫る。「40分間、相手にとって嫌なディフェンダーでありたい」という目標を掲げる今村自身も、成長を実感しているようだ。
「シーズンを通していろんな選手につかせてもらっていて、その経験を通して自分なりに手応えをつかんでいる状態ではあります。フィジカルの部分で体を当て続けられるようになったと思いますし、相手に得意としないプレーをさせるように仕向けるということも少しずつできてきています」
一方で、今村も現在のチームディフェンスについては危機感を抱いており、「強度もそうですし、チームとしての連携がまだまだうまくいってないと感じています。コミュニケーション、戦術、ローテーションと、いろいろ要素はありますが、共通認識の中で失点を80点以内に抑えていくことが大切だと思います」との認識を示す。
今シーズン、オフェンスでも平均得点が11.4点、平均アシスト数が3.7本といずれもキャリアハイの数字を残しており、名実ともにエースへと成長を遂げた今村。毎年平均失点の少なさでリーグの上位に入り、琉球の代名詞となっている「堅守」の部分でもチームを牽引していきたいところだ。
(長嶺 真輝)
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