存在感を増す牧隼利の”プレーメークと声” もがく琉球ゴールデンキングスにとって光明となるか
日に日に存在感を増している琉球ゴールデンキングスの牧隼利©Basketball News 2for1
沖縄を拠点とするフリーランス記者で2for1沖縄支局長。沖縄の地元新聞で琉球ゴールデンキングスや東京五輪を3年間担当し、退職後もキングスを中心に沖縄スポーツの取材を続ける。趣味はNBA観戦。好物はヤギ汁。

 西地区3位の琉球ゴールデンキングスは1月11日、1ゲーム差で追う西2位の島根スサノオマジックとホームの沖縄アリーナで対戦し、大接戦の末、80-81で惜敗した。

 通算成績は21勝8敗(.724)で依然として勝率は高いが、直近10試合は5勝5敗。負けた相手は島根のほか、アルバルク東京や横浜ビー・コルセアーズなど好調なチームが多いが、元日にあったA東京との試合後、桶谷大HCがホームブースターの前で「上位のチームに勝つ事もあれば、下位のチームに負けることもあります。僕たちはまだまだ強いチームではないです。今シーズン優勝するためには、この茨の道を通りながら進んでいきたいと思います」と語ったように、チームはCS で勝ち上がれるだけの力を身に付けようと、まだもがいている段階にある。

 そんな中、チームで存在感を増してきているのが牧隼利だ。昨年11月、約9カ月ぶりにケガから復帰した直後はまだ試合の速度や強度に着いていけていなかったが、ここにきて従来のプレーメークや声でのリーダーシップを取り戻してきている。「ボールシェア」を軸とするチームオフェンスを掲げる琉球にとって、いずれも欠かせない要素だ。

セカンドユニットにおける「ハンドラー」の役割

 島根戦で牧の復活を印象付ける2つの場面について触れたい。

 第4Q開始約1分ほど、スリーポイントラインの外側中央でボールを受けた牧。ピック&ロールのユーザーとしてジャック・クーリーのスクリーンを使い右側からドライブを仕掛け、相手ディフェンダーに体をぶつけながら左に大きく一歩を踏み、ペイントタッチしてもう1人のディフェンダーを引き付ける。ターンしてキックアウトすると見せかけ、リングへダイブしたクーリーにアシ ストしてイージーな形でのスコアを演出。シュートが決まった直後、珍しく右手で力強くガッツポーズを決めた。

 この試合、クロージングタイムも含めて21分間コートに立ち、チームトップの5アシストを記録。チームの現状を「自分たちがやりたいバスケができてる時間はまだ半分もないと思っています。苦しい場面で外国人選手の1対1に頼ってしまう部分は昨シーズンも今シーズンもありますが、個の力に逃げずにチームとして向き合っていくことが大事で、今はチームとして打開する時期だと感じます」と評価する。

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 その上で、自身の役割についてこう続けた。

 「セカンドユニットの中でハンドラーとして流れをつくる役割をここ数試合は与えてもらっています。日本人選手も外国人選手も個が強く、能力のある選手がいるので、そこをうまく回すためのチームバスケットをするべきだと思います。1対1ではなく、ずれができたところで簡単に得点 ができるというイメージが僕の中にはあるので、セカンドで出ても、スタメンのメンバーと出ても、チームを回すことを意識しています」

 牧の復調は、他の選手や指揮官も心強く感じているようだ。桶谷大HCは「今日は一番牧が落ち着いていたと思ってます。点数こそ取れていないですが、彼のところのアシストでアドバンテージがしっかり取れていました。チームの中でもエクスキューションが高い選手なので、すごい信頼しています」と高く評価する。

 田代直希主将も「牧は元々ああいう選手なので、劇的に上手くなったというより、ようやく自分の中の感覚が掴めてきているという印象です。チームにフィットしてきているのも相まって、すごいいいプレーをしています」と見る。「特にセカンドユニットで出てる時は牧がバランスを取ってくれているので、彼のようなプレーに僕や松脇、小野寺とかも続いて、このチームを押し上げていけたらもっと良くなると思います」と自らの刺激にもなっているようだ。

失意のジャック・クーリーに真っ先に駆け寄る

 もう一つの場面は、試合時間残り3.2秒でクーリーが同点の懸かったフリースローを外し、勝敗が決した時だ。表情を歪めながら両手で頭を抑えた後、ゴール下で下を向いたクーリーに真っ先に駆け寄り、背中をぽんっぽんっと叩いてコートに引き戻したのが牧だった。

 筑波大学では4年時に主将を務め、チームをインカレ制覇に導いた。試合中に率先してハドルを呼び掛けたり、大声で味方に指示を出す場面も以前のように多くなっている。リーダーシップを発揮する意識があるのかを問うと、「自然と出てるんですかね」と笑みを浮かべた。「大学の時は苦しみながらもキャプテンをやらせていただいたので、その経験は絶対に自分の武器だと思っ ています」と力強く語る。

第4Q、FTを外したクーリーに声をかける牧©Basketball News 2for1

 一方、自身の課題についても明確だ。この日はアシストで存在感を示したが、放ったスリー3本を全て外して無得点。「3Qでのスリーであったり、ああいう場面で僕が決め切らないといけない。『何点取りたい』という感覚はありませんが、そういう大事な場面で決め切る力はまだ足りてないと感じます」。自らの客観的に見詰める牧らしい答えだった。

フィリピンの「若手ナンバーワン」カール・タマヨ加入

 牧の復調に加え、琉球にはもう一つ大きなニュースが舞い込んできた。島根戦が行われた1月11日、フィリピンのカール・タマヨがアジア枠で入団することが発表されたのだ。タマヨは202cm のSF/PF。2001年2月生まれの21歳と若いが、2017年からフィリピン代表として活動しており、将来有望な選手だ。

 島根戦後、桶谷HCにタマヨについて聞くと、こんな答えが返ってきた。

 「主に4番の選手ですが、彼の一番の特徴はアウトサイドシュートです。外国人選手相手にどれだけできるかというところはありますが、フィジカルも強くてバスケIQもめちゃくちゃ高いです。彼はフィリピンの若手ナンバーワンの選手だと思っているので、その辺りも踏まえてしっかり成長させていきたいと思います」

 さらに1月13日には、昨年末のウインターカップで開志国際高校(新潟県)の優勝に大きく貢献し、中学生の頃にはキングスU15、U18に所属していた平良宗龍が特別指定選手として加入することも発表された琉球。模索が続く中、ケガ人の復調、新戦力の加入という要素がチームにどのようなインパクトを与えるのか。シーズン後半戦に向け、ファンにとっては楽しみな要素が多い。

(長嶺 真輝)

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