
あの悔しさは、鮮明に覚えている。
2023年3月15日、沖縄サントリーアリーナで行われた琉球ゴールデンキングスのホーム戦。第4Qの残り26秒、約8,000人もの大観衆に迎えられ、特別指定選手だった地元出身の平良宗龍(当時、開志国際高校1年)が初めてBリーグのコートに立った。
再開後、尊敬する岸本隆一からパスが飛んできた。
「パスをもらったら打とうと決めていました」
右コーナーでほぼフリーの状態でボールを受け、迷うことなく3ポイントシュート。「緊張で手が震えていました。ただ、いい感じで飛んだので『入るかも』とは思ったのですが…」。ボールは無情にもリングの付け根に弾かれ、Bリーグ初得点とはならなかった。
あれから約2年。高校3年生となった平良が選んだ卒業後の進路は、琉球だった。今シーズン中は練習生として活動し、来シーズンからはクラブ初となるU22枠のプロ選手としてチームに加入する。
悔しさが残った「26秒」の、その先へ。
高卒でプロの世界に飛び込む決断をした背景、自らが描くキャリアの青写真を聞いた。

原動力は挑戦心「チャンスがあるなら掴みたい」
開志国際高では入学直後から主力の座を掴んだ。1年時の「全国高校バスケットボール選手権(ウインターカップ)」では4本連続で3ポイントシュートを沈め、チームの初優勝に貢献。学年が上がるごとにエースのオーラを増し、世代屈指のプレーヤーの一人として注目を集めた。
当然、強豪大学からも声が掛かったはず。なぜBリーグ、そして地元沖縄のチームである琉球入りを選んだのか。
「大学に行くという選択肢もありましたが、小学生の頃からずっとお世話になってきたキングスからU22枠で契約したいと言っていただきました。自分次第では、プロでトップレベルの試合に出ることができる。18歳の若さで、こういう環境でバスケができるのは本当にありがたいことです。挑戦してみたいと思いました」
琉球というクラブと平良の関わりは長い。小学5年生から琉球が運営するバスケスクールに通い、中学ではユースチームのU15に加入。高校でも特別指定選手契約を結んだほか、帰省時に練習参加することもあった。
父はバスケコーチで、兄弟も学生カテゴリで注目を集めるバスケ一家で育った。琉球は小さい頃から追い続けた地元チームであり、中でも「岸本選手には憧れた」。だからこそ、「キングスでプレーしたいという気持ちは人一倍強い」という自覚がある。高校2年生の半ば頃には既に進路を決めていたという。
一方、BリーグにおけるU22枠の運用はまだ始まったばかり。期待と不安は「半々」というのが本音だ。それでも、より高いレベルにチャレンジができる機会は誰にでも訪れる訳ではない。「挑戦」という言葉を繰り返し口にしながら「チャンスをしっかり掴み取りたいです」と強い決意を示した。

高校で伸びた3Pシュート力…同世代から刺激も
小中学生の頃からハンドリングスキルは非凡なものがあった。自らボール運びをして、そのままシュートを決め切ることもしばしば。高校に入ると、3ポイントシュートに磨きをかけた。
富樫勇樹の父で知られる開志国際高の富樫英樹監督からは、1年時から「どれだけ外しても打ち続けることが仕事。迷わず打て」と言われていたという。「リズムで打つ」ことを意識し、徐々にクイックモーションでも打てるように。2年時以降はシューティングガードとしての力と高いハンドリングスキルを融合させ、得点力がさらに進化した。
千葉ジェッツの瀬川琉久(東山高校出身)を筆頭に、いずれも東海大学に進学する渡邉伶音(福岡大学附属大濠高校出身)や十返翔里(八王子学園八王子高校出身)など、同世代には将来日本を背負って立つような選手になるかもしれない逸材が多い。
特に瀬川は、小学生の頃にあった日韓交流戦で共にプレーしたこともある。「自分には課題がいっぱいあるので、まずは自分に目を向けて足りない部分を伸ばしていきたいです」という思考が前提ではあるが、既に千葉Jというトップクラブで輝きを放つ同級生に対し「ライバルという感覚は少しありますね」と競争心を燃やす。
他にも刺激を受ける存在がいる。琉球U15時代に共闘した同級生たちだ。
今春から強豪の白鴎大学に進学する新垣元基をはじめ、平良南海輝、新垣龍太郎の3人は特に仲が良い。自身が高校進学で新潟県に居を移した後も頻繁に連絡を取り合い、帰省時にはよく遊びに行った。バスケットの話をすることも多く、「彼らも成長してる分、自分ももっと成長しないといけないと感じていました。いい刺激になっています」と笑みを浮かべる。

来季開幕まで半年…フィジカルと状況判断力の強化へ
来シーズンの開幕までは、あと半年ほどの時間がある。この貴重な期間に注力すべきことは明確だ。
「今のままでは外国籍選手とぶつかった時に怪我をするリスクがあるので、まずは体を大きくしてフィジカルを鍛える必要があります。プロのスピード感は高校とは全く違うので、そこにも慣れていきながら、キングスが重視するディフェンス力を上げていきたいです」
身長183cmで、現在の体重は76〜77kg。昨年末のウインターカップが終わった後に一時は70kgほどまで落ちたが、今は夕食だけで3〜4kgの量を食べ、体を動かして筋肉を付けながら体重を増やしている。理想は「身長の数字のマイナス100くらい」と言い、肉体改造に努める。
もう一つはポイントガードとしての能力の向上である。高校時代は、上級生になるに連れてボール運びをする機会は増えたが、琉球U15の頃に比べるとシューティングガードとしての役割がメインになった。「(ポイントガードとしての役割は)少しブランクがあるので、勘を取り戻していきたいです」と語る。
憧れの選手には岸本隆一と富樫勇樹を挙げる。2人が持つ傑出した「勝負強さ」と「状況判断力」が理由だ。「相手のディフェンス強度も高校とは段違いに上がるので、焦らず、落ち着いてプレーできるようになりたいです」と成長を見据える。
冒頭で触れた「26秒」では、Bリーグの中でも熱狂的で知られる沖縄サントリーアリーナの大声援を一身に浴びた。「体全体を飲み込まれるような感覚でした」と回顧する。
バスケ熱の高い沖縄で生まれ育ち、地元出身選手の一人として大きな期待がかけられていることを肌身に感じたからこそ、2年前のBリーグデビュー戦で放った3ポイントシュートの失敗は忘れられない。「いやあ、悔しかったですね。本当に決めたかったです」と唇を噛む。
ただ、大舞台でのほろ苦い経験は、チャレンジ精神にさらに火を付けた。
「まずはロスター入りして、試合に出て、得点を決めたいです。3ポイントシュートで決めたい気持ちはありますが、それだけにこだわらず、行けるところでしっかり点を取れればと思います」
「27秒目」から再開するBリーグキャリア。その瞬間に向け、とことん自分磨きを続けていく。

(長嶺真輝)