
東地区の群馬クレインサンダーズは3月29、30の両日、沖縄サントリーアリーナで西地区首位の琉球ゴールデンキングスと2連戦を行い、68ー87、64ー73でいずれも敗れた。
2戦ともエースのトレイ・ジョーンズが不在で、2戦目はヨハネス・ティーマンも欠場。高さと重量のあるインサイド陣を揃える琉球に対してリバウンドで劣勢に立ち、いずれの試合も良い流れを長く継続することができなかった。
これで3連敗となり、通算成績は31勝16敗。4連勝中の千葉ジェッツと順位が入れ替わって東地区3位に後退し、千葉Jを1ゲーム差で追う立場となった。地区順位の枠ではチャンピオンシップ(CS)進出圏外となったが、ワイルドカードではシーホース三河と1ゲーム差の2位に付けている。
レギュラーシーズンは残り13試合。ワイルドカード3位の名古屋ダイヤモンドドルフィンズとは5ゲームの差が開いており、クラブ初のCS進出に向けて「窮地」とまでは言えないだろう。ただ、4月には三遠ネオフェニックス、宇都宮ブレックスという地区首位との連戦も残っているため、選手のコンディションも加味すると今が正念場であることは間違いない。
一方で、チームの中心を担う外国籍選手不在で臨んだ琉球戦では、劣勢の中でも最後まで「戦う姿勢」を貫いた。ルーズボールに飛び込んでハッスルする場面もあり、2戦目終了後の記者会見に姿を見せたカイル・ミリングヘッドコーチ(HC)とコー・フリッピンの口からは前向きなコメントが多く聞かれた。
「スモール」で対抗 試合終盤でルーズボールにダイブも
1戦目はスタートからビッグラインナップを敷いてきた琉球に対し、高さとフィジカルで対抗できず、リバウンドの本数は25本対45本。一度もリードを奪えなかった。
一方、外国籍選手2人を欠いて迎えた2戦目は群馬ペースで試合に入る。藤井祐眞や辻直人がピックを繰り返しながらフリーのシチュエーションを作り、序盤から高確率で3ポイントシュートをヒット。ケーレブ・ターズースキーもミドルジャンパーを決め切り、第1クォーター(Q)で22ー12のリードを奪った。
第2Q以降はシューター陣に対するプレッシャーを強められて3ポイントシュートの成功率が低下。それでも日本人選手のみのスモールラインナップでスピードを強調したり、全員でリバウンドに飛び込んで体を張ったりして食らい付き、同点で前半を折り返した。
後半は琉球に3ポイントシュートを効果的に決められるなどして突き離されたが、第4Qに追い上げて一桁点差で試合を終えた。終盤では藤井がルーズボールにダイブしてポゼッションを継続するなど、気持ちが切れることはなかった。
リバウンドでは1戦目に続き29本対40本と劣勢に立ったが、ターンオーバーの数は琉球の15回に対して7回。この数字からも、いかに最後まで集中力を保っていたかが伝わるだろう。
ミリングHCは会見冒頭の総括コメントで悔しさを滲ませつつも、好感触を口にした。
「何人かの選手がプレーできない状態でしたが、40分間すごくいい戦いだったと思っています。群馬からもたくさんのファンが来てくださった中、戦う姿勢を見せられたのは良かったです。最終的に琉球にビッグショットを決められ、こういう形で終わってしまったのは悔しいです」
バウンスバックの懸かる2戦目の序盤で、チームの強みであるシューター陣が意地を見せたことも高く評価した。
「昨日は相手のビッグラインナップに対抗しようとして勝てなかったので、今日はスモールラインナップでシューターが良いポジションに入れるようにすることを狙いの一つとしてやっていました。その中でシューターが自分たちのプライドを持ってプレーしてくれました。こういう試合になると技術より心の内面的なものが出てくると思うので、シューターをいい形でポジション配置できて良かったです」

優勝請負人・フリッピン「強豪との対戦は学びに」
残り13試合の道のりにおける最大の山場は、4月12、13の両日にホームである中地区首位の三遠戦、同26、27の両日にアウェーである西地区首位の宇都宮戦だ。群馬とのゲーム差が9と大きく離れているものの、東地区4位の秋田ノーザンハピネッツとの対戦も3試合残っているため、CS進出に向けてはコンディション管理も含めてチーム状態を上げていくことが求められる。
レギュラーシーズン終盤戦を戦ううえで重要なポイントを聞くと、昨シーズンの終盤で一気にチーム力を上げ、広島ドラゴンフライズを初優勝に導いたミリングHCは「選手全員が健康な状態でいることが一番大事」という前提のもと、こう続けた。
「出られない選手がいたとしても、自分たちは精神的な部分で絶対に負けてはいけない。同じインテンシティで40分間ずっと戦い続けることが残りのシーズンで大事になってきます。それができれば、プレーオフにつながってくると思います」
昨季、CSで逆転勝ちを連発した広島の姿を思い返せば、ミリングHCが求める強固なメンタルの必要性は言うまでもないだろう。
ポジティブなマインドは選手も共有している。
ポイントガードの一人としてチームをけん引するコー・フリッピンは、我慢の時期も含めて「今日みたいな(外国籍選手が2人いない)シチュエーションの時もありますが、マインドセットがネガティブだといい形のプレーにならないと思っています。常にポジティブなエナジーがあることを心掛けています」と語る。
フリッピンは大一番での爆発力を備え、千葉Jと琉球で2度に渡りチャンピオンリングを獲得している「優勝請負人」だ。その瞬間に向けた準備の大切さも重々承知しており、CSに入る前に地区上位のチームと対戦できることも前向きに捉えている。
「強豪チームとプレーオフの直前に戦えるのは自分たちにとって良いチャンスです。そこから学べることはたくさんある。それぞれの選手の中に、一つひとつのプレーに対する責任も芽生えてくると思います。プレーオフにつなげられるように、しっかり学んでいきたいです」
B1昇格から4シーズン目。まずは悲願である初のCS進出を勝ち取るべく、前を向いて戦い続ける。

(長嶺真輝)