西地区首位の琉球ゴールデンキングスが好調だ。12月18日のシーホース三河戦で連勝が7でストップしたものの、24、25の両日にホームの沖縄アリーナであったレバンガ北海道戦を80-66、91-70で危なげなく白星を重ね、再び連勝街道に乗った。
現在、平均12.0本でリバウンドランキング1位のジャック・クーリーを中心とした強烈なインサイド陣や、最近復調の兆しを見せているセカンドユニットの層の厚さなど強さを支える要因はいくつかあるが、一つ気になるポイントがあった。
ダーラムの状況判断が改善 セカンドユニットの押し上げ要因に
12月14日の京都ハンナリーズ戦後の記者会見で、田代直希主将が発した言葉だ。「セカンドユ ニットの状態が上がってきたきっかけは」との問いに対する回答である。
「コーとダーラムの状況判断が良くなったことがいい循環に繋がっていると思います。(ダーラムは)すごくスピードもパワーもあって、2、3人に囲まれてもシュートを打ち切れてしまう。彼 の良さでもあるけど、それが多くなり過ぎるとチームオフェンスが停滞してしまう。コーチ陣がそれを伝えたのか、彼が感じるものあったのか分からないけど、状況判断が良くなった印象があります」
コー・フリッピンは11月に日本代表の国際試合に帯同してからチームに戻って以降、システムの違いからキングスにフィットしきれていない時期があったことは明らかだったが、ダーラムの名前が出たことは少し意外だった。確かに無理にインサイドをこじ開けようとする場面はあるにせよ、現在のスタッツは16.2点、8.9リバウンドと平均ダブルダブルに迫る。インサイドを中心 に際立った存在感を放ち、セカンドユニットが停滞している時間帯も個で状況を打開してチームを下支えしている印象があったからだ。
ダーラムの変化とは、一体どういうものだったのか。
アシスト数に変化 ドウェイン・エバンス移籍も要因に
ダーラムが25得点、8リバウンド、4スティール、3アシスト、2ブロックという”化け物”スタッツを残した12月24日の北海道戦後、やっと当事者たちに直接質問することができた。まず、桶谷大HCに田代の言葉を引用し、ダーラムに求めていることを聞いた。答えはこうだ。
「彼には普段から、コーチ陣から『プレーメーカーになってほしい』と話をしています。彼が冷静な時はボールムーブメントを起こすので、彼が起点になる試合はいい試合ができます。今日も多くインサイドアウトをしてくれました」
また意外な言葉が出てきた。「プレーメーカー」である。筋肉の塊のような強靭な体から”超人ハルク”の異名を持ち、インサイドを主戦場とする印象があったからだ。指揮官はその理由をより詳細に語ってくれた。
「ペイントアタックの能力がすごいので、どのチームも彼がボールを持つとディフェンスを収縮させます。そこからインサイドアウトをするとディフェンス側はかなり守りにくくなるので、今季はよりアシスト数を増やしてほしいと思っています。キラーパスをする必要はないし、サイドトゥサイドでもいいから、そういうプレーを続けてほしい。一人でアタックしてしまう場面が目立つことはあるけど、彼にしかできない仕事だと思います」
ダーラム自身も「(プレーメーカーとしての)役割はシーズン前からコーチと話す機会があり、それを理解してシーズンに入っている。自分のベストを一試合一試合積み重ねたい」と受け入れているようだ。実際、昨季のレギュラーシーズンの平均アシスト数は2.6だったが、今季はこれまで3.6。インサイドの選手にとって、平均で1本の増加は大きいと見ていいだろう。
昨季は高い得点力を誇りながらまわりの選手を使うことにも長けていたドウェイン・エバンス が同様な役割を果たし、小寺ハミルトンゲイリーもフロアバランスを整える能力を有していた。2 人が移籍したことでダーラムに求められる仕事が自ずと増えたことはうなづける。
エバンスが移籍したことによる自身の変化を問うと、ダーラムは「彼は非常にいい選手だと思っている。彼が抜けた穴を埋められるように、プレーの一つ一つを丁寧に、かつアグレッシブにやっていきたい」と語り、プレーの幅を広げる必要性を自らも感じ取っているようだ。
チームと個のバランスを重要視
今季はチームづくりのテーマに「ポジションレス」を掲げ、ガードやフォワードの各日本人選手がプレーメークを担う姿をチームの理想系とする琉球。その役割をダーラムもこなすことができれ ば、チームオフェンスの幅はより広がりを持つ可能性を秘める。
一方、桶谷HCはこうも話した。「チームオフェンスをしても、どうしても相手ディフェンスをこじ開けられない時はあるので、ダーラムのように1on1で点が取れる選手がいることは自分たちの強みです。個とチームはどっちも必要だし、どちらかに傾き過ぎてもいけないと思ってるので、そこのバランスは僕がしっかりと見ながら整えていきたいです」。
田代や牧隼利はケガから復帰したばかりで、これからコンディションを上げていく段階にあり、渡邉飛勇も北海道戦からやっとチームに合流したばかり。その都度チームとして新しい戦術も試すなど、まだまだ成熟途中にありながら西地区首位をキープし続ける琉球。レギュラーシーズ ンの折り返しが近づく中、後半戦に向けてどのような進化を遂げていくのか。指揮官の舵取り、選手たちのプレーの変化に注目だ。
(長嶺 真輝)