西の頂上決戦は”痛み分け” 琉球ゴールデンキングスと島根スサノオマジック、双方に見えた課題とは
琉球アレン・ダーラム(左)と島根ペリン・ビュフォード©Basketball News 2for1
沖縄を拠点とするフリーランス記者。沖縄の地元新聞で琉球ゴールデンキングスや東京五輪を3年間担当し、退職後もキングスを中心に沖縄スポーツの取材を続ける。元バスケ日本代表の渡邉拓馬選手に似てると言われたことがある。趣味はNBA観戦。好物はヤギ汁。

 連戦前、西地区で最も勝率の高い9勝2敗で並んでいた琉球ゴールデンキングスと島根スサノオ マジックが11月26、27の両日、琉球ホームの沖縄アリーナでぶつかった。昨シーズンのCS準決勝の再現でもあったため、2日とも6千人超に及ぶ多くのファンが頂上決戦を見守った。

 延長戦までもつれ込んだ第1戦は琉球が96-86で勝利。第2戦は第4クオーター(Q)に抜け出した島根が80-68でやり返し、1勝1敗の痛み分けとなった。


 これで両チームとも10勝3敗と再び勝敗数で並び、リーグ全体を見てもトップの勝率となる。琉球と島根はシーズン序盤から好調を維持しているように見えるが、この連戦ではどちらも課題が顕在化した連戦でもあった。

第1戦 琉球が土壇場で追い付く インサイド陣の活躍で延長制す

 まずは試合内容を振り返る。


 第1戦は試合開始から島根ペース。安藤誓哉とペリン・ビュフォードの二枚看板を中心に得点を重ね、琉球の強力なインサイド陣に対しても全員で激しいプレッシャーを掛けて前半で一時18点差を付ける。


 粘る琉球に対し、第3Qの序盤にビッグマンのウィリアムス・ニカが小野寺祥太に対するディスクオリファイングファウル(悪質なファウル)で一発退場となったが、それでも第4Qの序盤には再び16点までリードを広げた。しかしニカの退場に加え、ニック・ケイもファウル4つに追い込まれると、琉球のアレン・ダーラムとジャック・クーリーが存在感を増し始め、試合時間残り20秒でダーラムがフリースローを沈めてついに同点となった。


 延長は安定して加点するインサイド陣に加え、岸本隆一も外から沈めて突き放し、琉球に軍配が上がった。
激しいファウルを受ける場面もありながら、いずれもチームトップの28得点、16リバウンドを記録したクーリーは「ハードな島根に対し、リバウンドが取れない時間帯もあったけど、楽しみながらプレーできた。感情が昂る場面もあったけど、ハーフタイムにHCから『いい状況でも悪い状況でも冷静でいろ』と言われて、それが結果につながったと思います」と満足そうに振り返った。

第1戦勝利の立役者となった琉球ゴールデンキングスのジャック・クーリー©Basketball News 2for1

第2戦 島根が終盤抜け出す ロールプレーヤーが存在感発揮

 続く第2戦は、両チームとも激しいディフェンスでロースコアの展開に。抜け出したのは、またも島根。第4Qにビュフォードを中心に得点を重ねてじわじわと差を広げると、残り約5分で阿部諒がリードを10点に広げるスリーを正面からヒット。続いてビュフォードのキックアウトから津山尚大も3点を沈め、抜け出した。


 その後、粘る琉球が再び6点差まで詰め寄ったが、ビュフォードのスリーが外れたところを阿部がオフェンスリバウンドを掴み、空中でファウルを受けながらそのままゴール下をねじ込むビッグプレーを見せ、勝負を決めた。


 前日に比べ、琉球のインサイド陣に対してダブルチームなど強いプレッシャーを終始掛け続け、 試合を通してローテーションの乱れもほとんどなかった島根。前日は「規律がなく、収穫はない」と酷評していたポール・ヘナレHCは「ゲームプラン通り、非常に高い強度の守りを見せてくれた」とうなづいた。


 島根は沖縄アリーナで行われた昨シーズンのCS準決勝第2戦で、ドウェイン・エバンス(現・広島ドラゴンフライズ)によるブザービーターで琉球に敗れる悔しさを味わった。昨シーズンから通して、今回の第1戦まで琉球に6連敗中でもあった。自身が挙げた8得点を全て第4Qに記録した阿部は、それらを念頭にこう言った。


 「昨シーズンは最後にああいう負け方をして、どうしても相手のホームで勝ちたいという気持ちがありました。ただ勝ったのは良かったんですが、まだあと2試合直接対戦をしますし、チャンピオンシップにいけば必ず当たる相手だと思っているので、もっと自分達のバスケを突き詰めていかないといけないと思っています。(CS準決勝の)あの瞬間は忘れられない出来事の一つです。あの借りはチャンピンシップの同じ舞台で返したいです」

第2戦、8得点と存在感を発揮した島根スサノオマジック阿部諒©Basketball News 2for1

層の厚さが武器も…セカンドユニットで停滞する琉球

 この2試合を通して琉球はクーリー、ダーラムらの強力なインサイド陣、島根はビュフォード、安藤という個の得点力の高さという武器は多くの場面で発揮された。ただ一方で、まだシーズン序盤でチームの完成度を高めていく時期ということもあるが、冒頭で記したように両軍とも課題も見えた。


 まずは琉球。シーズン前から”層の厚さ”が最大の武器と見られていたが、最近の試合ではむしろ”薄い”印象を受ける。スターターを務める岸本、小野寺、今村佳太、クーリー、ダーラムのラインナップでは守備のローテーションがスムーズで、オフェンスでもボールが良く回り、内外から得点を重ねることができる。


 一方で、今季けがから復帰した田代直希や牧隼利、バイウィーク中に日本代表に帯同していたコー・フリッピンらがコートに入るセカンドユニットでは守備の強度が落ち、流動性が停滞して苦しいシュートが頻発している感は否めない。それは桶谷大HCも感じている。以下は第2戦後の会見コメントだ。


 「そこまで悪くはなかったですが、セカンドユニットがちょっと元気がない。田代は足の影響なのか、なかなかステップアップできていなくて、コー、松脇も含めてこの3人の調子を引き上げないといけないです。牧も含めてこの4人は一緒に出る時間帯も多いと思うので、しっかりゲームをつくれないといけない。今日みたいに隆一や佳太のプレータイムが伸びて負担が増え、シュートが入らないということになってしまってる。コーチとして、一緒に成長できるようにしたいです」

「セカンドユニットがちょっと元気がない」と琉球・桶谷大HCは語る©Basketball News 2for1

 チームオフェンスの停滞でシュートセレクションが悪化する時間帯があるためか、現在のスリーポイント成功率は29.7%で24チーム中23位。今村は「今季はビッグマンがすごい頑張ってくれていて、攻守の要になってくれています。その一方で、僕たちウイング陣のシュート確率が良くないので、決めきれていればウチの流れになったのに、というタイミングが多いと感じています。個々が自分に矢印を向けてやっていく必要があります」と気を引き締める。

島根が頂上を狙うために ビュフォード、安藤に次ぐ”3人目”

 一方の島根。ビュフォードと安藤が相変わらず巨大な戦力としてチームをけん引しているが、阿部の活躍が勝負を決めるポイントとなった第2戦で証明されたように、リーグトップクラスのチームから勝ち星を重ねていくためには”3人目”以降のステップアップが強く求められる。平均14.2得点を挙げていたリード・トラビスがバイウィーク明けの仙台戦で右手を骨折して戦線を離脱した今だからこそ、その重要性はより増している。


 ヘナレHCは第2戦後、「阿部選手も含めてベンチメンバーは今節本当にいい準備していた。白濱選手は多く交代する中でリズムがつかみにくかったと思うが、いいプレーを見せてくれた。 谷口選手も琉球のインサイド陣に対して踏ん張ってくれた」と各選手を高く評価。ロールプレーヤーの中でも、今季際立った存在感を発揮しているのは新加入の津山だ。

島根“第3の男”として津山が存在感を示すことができるか©Basketball News 2for1


 安藤とのコンボガードとして、これまでの13試合で全て30分以上出場し、平均得点は12.5点。中でもスリーの成功率は41.6%と極めて高く、島根のオフェンスの幅を広げる役割を担っている。この2連戦も10点、16点と安定して二桁得点を挙げた。


 第1戦後、地元沖縄で躍動して「しっかり活躍することが沖縄の人たちへの恩返しになると思っています。そこはしっかりできました」とコメントした津山。これまでのチームではなかなか主力として定着できなかったが、島根では「ハードなディフェンスから速い展開に持っていくというスタイルがフィットして、自分の持ち味が出せています」と自身も手応えを感じているようだ。昨季所属した金丸晃輔と比較されるという見方に対しては「金丸さんはトップの選手だし、そこと比べられるのはプレッシャーもありますが、それは見返したいです。でもそこまで意識はせず、自分らしさを出せば勝ちに貢献できると思う。そこに集中してやっています」と力強く語った。

 西地区は昨シーズンまで琉球が5連覇していたが、現在は琉球と島根に加え、広島と名古屋ダイヤモンドドルフィンズも含めた4チームが10勝3敗で並ぶ混戦模様だ。群雄割拠の時代に突入した西のトップ争いを抜け出すのはどのチームか。互いに高め合いながら、しのぎを削る上位陣の直接対決から今後も目が離せない。

(長嶺真輝)

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