Bリーグ西地区の琉球ゴールデンキングスは5、6の両日、沖縄アリーナに中地区の三遠ネオフェニックスを迎え、2024-25シーズンの開幕カードを戦った。初戦は延長戦にもつれ込む接戦の末、92ー96で逆転負けを喫したが、2戦目は82ー74でバウンスバックに成功。8,509人が詰め掛けたホーム戦で今季初勝利を挙げた。
昨シーズンまで3季連続でファイナル進出を果たしてはいるが、今季は近年の繁栄を支えた今村佳太やアレン・ダーラムなど多くの主力が退団し、リーグ内での立ち位置が未知数な部分もあった琉球。その意味で、昨シーズンの中地区王者で、オフにデイビッド・ヌワバや吉井裕鷹らの補強に成功した三遠を相手に星を分けたことは、上々なスタートを切ったと言えるだろう。
そんなチームにあって、プレーに明らかな変化が見て取れる選手がいる。一度入り出したら止まらない3Pと、フィジカルの強さを生かしたディフェンスを武器とするリーグ屈指の「3&D」プレーヤー、松脇圭志である。
「3Pが入らない時」の得点の幅を広げる
所属3シーズン目。オフェンス面では3Pが中心のシューターというイメージが極めて強いが、三遠との2連戦では積極的にゴールへアタックし、2試合で5本放った2Pの成功率は100%。全てペイントエリア付近からのシュートだった。
変化を象徴するゴールを振り返る。
一本目は第1戦の第2Q。左45度からドライブし、一度は吉井に正面に入られて跳ね返される。それでもすぐに再度アタックを試み、ペイントエリアを区切るライン付近で急ストップしてフローターシュートを成功させた。
もう一本は、2戦目の第3Qの場面だ。左コーナーから右手でドライブを仕掛け、マークマンの佐々木隆成に左半身を当てながら右手でフックぎみに決めた。自らの得点ではないが、第4Qの勝負所では左45度からドリブルでディフェンスの間を割り、ウィークサイドから飛び込んだヴィック・ローにパスを合わせて簡単なスコアを演出した。
第1戦の終了後には、2Pに対する考え方の変化を口にした。
「今シーズンは2点も多く狙っていこうと思っているので、それが今日は出せたかなと思います。3Pだけだと、それが入らない時に得点が伸びなくなるので2点も狙っていきたいです」
スコアが伸び悩んだ分かりやすい例は、昨シーズンのチャンピオンシップだろう。レギュラーシーズンの3P成功率は34.1%で、勝負を決めるようなクラッチシュートを沈める試合もあったが、CSでは確率が23.1%に急落。1試合の平均3P試投数も半分近くまで減少し、オフェンス面でなかなかチームに貢献できなかった。シュートの幅を広げ、より存在感を増したいところだ。
もともと武器だったドライブ 琉球以前は2Pが「4割近く」
そもそもの話ではあるが、前述したような体の強さを生かしたドライブが示すように、ペイントアタックは以前から松脇の武器の一つでもある。それは、数字からも明らかだ。
富山グラウジーズに所属していたルーキーイヤーの2020ー21シーズン、放った265本のシュートのうち、4割近くの99本が2P。そのうち77本をペイントエリア内から打っている。この77本のシュート成功率は、実に72.7%(56本成功)に上る。三遠に移籍した2021ー22シーズンも同様な傾向のショットチャートとなっている。
一方、琉球へ移籍した2022ー23シーズン、放った287本のシュートのうち2Pは2割弱のわずか47本に激減。直近の2023ー24シーズンも364本のうち47本と、さらに2Pの比率は下がった。
インサイドにジャック・クーリーやアレン・ダーラムなど得点力のあるビッグマンが揃っていたことに加え、昨シーズンまでは今村や牧隼利などハンドラーを担える選手が多かった。以前所属したチームとは役割が異なっており、良好なスペーシングを維持する上でも2Pの比率が下がることは必然だったと言える。
しかし、今オフには今村や牧に加え、ハンドラーを務めることもあったダーラムも退団。松脇はシーズン開幕前から「今シーズンはハンドラーを務めることもあると思うので、準備をしていきたい」と話していた。
特に今村はチームの得点源の1人でもあったため、その部分を補う役割も期待される。三遠戦後の会見では「得点を取らないとチームに勢いが来ないと考えているので、狙ってやっていきたいです」と意気込みを語った。
ドライブに対する相手の警戒感やディフェンスを寄せ付ける吸引力が増せば、自身の最大の武器である3Pや味方へのアシストにも生きてくる。もともと持っていた武器にさらなる磨きを掛け、シーズンを通してペイントアタックに対する高い意識を維持したい。
リバウンドへの意識、脇のメンター… 増える役割
松脇の意識の変化は2P以外にもある。三遠との第1戦でキャリアハイに並ぶ7本を奪取したリバウンドである。ディフェンスリバウンドだけでなく、オフェンスリバウンドに飛び込んでシュートを押し込む場面も2試合とも見られた。
「チームとしてもリバウンドが大事ということは言われていました。今シーズンはリバウンドに絡んでいこうという意識も持っています。(7本という数字は)スタッツを見てびっくりしました。ヴィックに(リバウンドへの意識を)言われていたので、自慢しました(笑)。これをコンスタントにしていきたいです」
共に先発メンバーとしてコートに立っているルーキーシーズンの脇真大に対し、メンターとしての役割も自覚しているよう。「脇はまだ分からない部分とかがあって、ミスが多くなる部分もあると思います。一緒にスタートで出ているので、『こうした方がいいよ』ということは言うようにしています」と言う。
27歳となり、中堅の域に入った松脇。転換期を迎える琉球で中心プレーヤーの一人を担い、さらなる飛躍のシーズンにしたい。
(長嶺 真輝)