「ウォリアーズに愛着を持ってほしい」 B2から再出発の信州ブレイブウォリアーズ 生え抜き三ツ井利也が目指す新戦力との“カルチャー”再構築
信州ブレイブウォリアーズの三ツ井利也©Basketball News 2for1
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 チーム史上最低勝率となる10勝50敗(勝率16.7%)で2023-24シーズンを終え、B2降格となった信州ブレイブウォリアーズ。昨季は主力選手の相次ぐ退団に加え、得点源として活躍を期待されたスタントン・キッドウェイン・マーシャルがケガで長期離脱。チームのアイデンティティであった守備でもリーグ下位に沈むなど、苦しいシーズンを送った。

 B1復帰、そして2026-27シーズンから始まる「Bプレミア」参入を目指す信州は、このオフに大規模な改革を実施。石川海斗栗原ルイスら昨季の主力メンバーの残留に加え、B1で2年連続ベスト5に選出されたペリン・ビュフォードやB2で得点王を獲得したテレンス・ウッドベリー、日本代表としてパリ五輪で活躍を見せた渡邉飛勇、元日本代表のアキ・チェンバースら実力派の選手たちを次々と獲得した。

 新シーズンへの期待が高まる中で、チームを支えるのが三ツ井利也だ。生え抜き選手として9シーズン目を迎える三ツ井に、昨季の振り返りや自身のキャリアとチームの未来、新加入選手への思いなどを語ってもらった。

主力の退団にエースのケガ 根付かなかったカルチャー

 日本代表のジョシュ・ホーキンソン(サンロッカーズ渋谷)や「三銃士」の熊谷航(秋田ノーザンハピネッツ)、岡田侑大(京都ハンナリーズ)、前田怜緒(アルティーリ千葉)、アンソニー・マクヘンリー氏(琉球ゴールデンキングスAC)の退団によりチームが大きく変わった昨シーズン。主力選手が大きく入れ替わり、B2時代から勝久マイケルヘッドコーチが築き上げてきた”信州のカルチャー”も完全にはチームに浸透しなかった。チーム在籍期間が一番長い三ツ井も、チームの変化を感じていたという。

 「昨シーズンは、点差が離されたら『それでもうおしまい』みたいな試合が多くて。今までのウォリアーズはどんなに点差が離れて、たとえ負けたとしても、最後まで諦めない姿を見せられていたと思うんですけど、昨シーズンに関しては、言葉は悪いんですけど、前半で点差が離れた段階で白旗を上げてしまうような試合内容でしたし、追い上げるようなチームの雰囲気ではなかった」

 信州のカルチャーの根幹を担う強固なディフェンスや粘り強く戦い続けるメンタリティーも影をひそめることが多かった。チームとしてスタイルを徹底できなかったことについては、三ツ井も悔しさをにじませる。

 「そのような部分がやはりああいうシーズンになってしまった原因かなと思いますし、そういうチームに作り上げることができなかったというのも、長くいる身としてすごく責任感は感じています」

なかなか勝ち星が伸びなかった2023-24シーズン©Basketball News 2for1

信州一筋9年目 葛藤乗り越え再出発

 信州一筋9年目を迎える地元出身の三ツ井だが、昨季のインタビューではたびたび悩むような姿や葛藤する様子が見受けられた。シーズンが終了後には「チームの中での役割とかいろいろと考えたときに、もっとステップアップするためには何が必要なのか。それが僕自身のワークアウトもそうかもしれないし、環境なのかもしれないし。ということを含めて悩む、考えないといけないというのが正直な感想。改めて自分はどういう選手であるべきかというのを再確認したい」と語り、自身のキャリアやチームとの今後について悩んでいる姿があった。

 「30歳という節目もあるので、そこで一度自分のバスケット観を見つめ直すとか、一度環境を変えてみるのも、もしかしたら選択肢としてはあるべきなのかなって思い始めた。節目だからこそ、そういうところも今までと違って、一回冷静になって考えないといけないかなと思います」

 自身の役割が変化してきていることは三ツ井も感じていたことだろう。持ち前のディフェンスでは信頼を得ているものの、オフェンス面での役割が小さくなっていることは否めない。個人のスタッツで見ると、昨シーズンは59試合に出場し平均1.8得点と、平均得点ではキャリア最低を記録。自己最多の平均6.5得点を記録した17-18シーズンと比べると、シュート試投数は約3分の1にまで減っている。

 「守備職人」以外のスタイルを模索していた三ツ井にとって、環境を変えることも選択肢の一つとなっていたはずだ。それでも信州と再契約を結び、B2からの再出発を支える決断をした。どのような思いでチームとの契約を決めたのだろうか。三ツ井は語る。

 「大前提、降格して悔しい思いもありましたし、再昇格に向けてこのチームで、チームの一員として成し遂げたいという気持ちはありました。あったんですけど、オファーとかも含めていろいろとチームと話した段階で、僕の今後やっていきたいことと、チームからのオファーが少しずれていた部分があったというのが本音です。そこを上手く整理する時間が欲しかったので、今まで以上に考える時間をもらって、その分発表が遅くなったというのが経緯としてありました。ですが今は、自分が今年やるべきこととか、もっと良くなれる部分にフォーカスして、トレーニングやバスケットのところも励んでいる感じです

 チームからの「オファーのずれ」とは何かを訪ねると、三ツ井は「難しいな」と一呼吸を置き、こう答えた。

 「『今シーズンはこういうことにチャレンジしたい』という気持ちとかもちゃんと伝えさせてもらったんですけど、来シーズンの起用法であったり、『こういうことをやってほしい』と言われたときに、なにか腑に落ちなかったと言ったらあれですけど。『もっと自分はやれるのにな』って思ってしまったところがあったので、少しネガティブになってしまったというか。『それぐらいしか求められていないんだな』と思ってしまった。本当にチームがそう思ったかは分からないですけど、そのようなことがあって僕自身がショックを受けてしまった。ただ、それは僕が招いた結果だったので、まずそれを整理する時間が欲しかったというのが正直な感想です」

 チームとしっかりと向き合い、それでも再契約を決めた。三ツ井の表情からは、自身の葛藤を乗り越え、大きな決意と覚悟を持ってシーズンに臨むという気合が伝わってきた。

信州での9季目となる三ツ井©Basketball News 2for1

「ホワイトリングで昇格決めたい」

 試練の年を乗り越え、再出発を目指す信州と三ツ井。まず必要なのは、カルチャーの再構築であり、新加入選手が多くなるチームの中でそれを浸透させていくのは生え抜き選手の大きな役目となる。

 「新加入も含めてマイケルさんのバスケはどういうものかっていうのをしっかり伝えなきゃいけないっていうのは僕の大きな仕事だと思います。もちろん僕がそれをプレーでできないと説得力も生まれないので、そこは引き続きやっていきたいです」

 三ツ井は続ける。

 「あとは、(新加入選手には)ウォリアーズの経緯(いきさつ)を知ってほしい。こういう経緯があってここまで来れたというのを知ってほしいし、それを含めて少しでも『ウォリアーズに対して愛着を持ってほしい』『長野県のために頑張ってほしい』というのは伝えていきたいと思います。どれだけそれを伝える場があるか分からないですけど、イベントの場などで少しでもウォリアーズの魅力などを伝えていければいいかなと思っています」

 B2に戦いの舞台を移し、2度目のB1昇格を目指す信州ブレイブウォリアーズ。ビュフォードやウッドマン、渡邉飛勇ら期待のニューピースを獲得し、補強も着実に進めている。

 「今シーズンのスタートはかなりSNSで皆さん厳しい言葉をかけられていて、至極真っ当なものもあれば、少しお門違いなものもあってどれも大事な意見だった。もちろんそれは昨シーズンの不甲斐なさも含めてだと思うので、まずはそのような部分を期待に変えられるように、『今季はやってくれるだろうな』とか『今シーズン楽しみだな』って思ってもらえるチームをプレシーズンや天皇杯に向けて作り上げたい。

 よくマイケルさんがいう『日々成長』。シーズン中でも成長し続けて、シーズンが終わったときにファンの皆さんと一緒に笑って終われるようにしたいです。僕の夢としては、ホワイトリングで昇格を決めたいという気持ちはあるので、そこに向けてチームとして頑張っていくので、会場だけではなく、いろいろなところから応援していただきたいと思っています」

 苦い経験を力に変え、覚悟を胸にチームに戻ってきた三ツ井利也。地元を愛する生え抜きスターとともに、信州ブレイブウォリアーズが歩み出す新たな1ページに期待が高まる。

(芋川 史貴)

開幕に向けて練習を重ねる信州ブレイブウォリアーズの選手たち©Basketball News 2for1

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