
Bリーグ2部(B2)は22日と23日の両日、各地でレギュラーシーズンの第27節が行われ、東地区首位のアルティーリ千葉はアウェイで同3位の信州ブレイブウォリアーズと対戦し、第1戦を89-82、第2戦を100-71でそれぞれ勝利した。
第27節を終えて、A千葉の成績は48勝3敗。連勝を9に伸ばし、悲願のB2優勝、B1昇格に向けて弾みをつけている。その圧倒的な強さの理由とはーー。
相手主力が揃わないからこそ「準備はチャレンジ」
3月15日のライジングゼファー福岡戦に勝利し、早々に東地区優勝を決めたA千葉。昨季同様、圧倒的な勝率でレギュラーシーズンを駆け抜けている。
ペリン・ビュフォードやテレンス・ウッドベリーらタレントが揃う信州との第1戦では、チェンジングのゾーンプレスやマンツーマンを折り混ぜた堅守で、信州から16個のターンオーバーを誘発。ターンオーバーから20得点を奪い、好守からイージーオフェンスへと繋げた。
相手のメンバーが多く欠ける中で挑んだ第2戦でも、決してディフェンスの強度を緩めない。どんな状況であれ、自分たちがやるべきことを徹底的に遂行する。そこには慢心や驕る姿勢は一切なかった。
試合を通して徹底されたディフェンスについてアンドレ・レマニスHCはこう語る。
「相手チームの外国籍選手がいない状態での試合は、全く違ったプレースタイルになると思っていました。そういった状況の中、自分たちのメンタルセットの準備はチャレンジでした」
相手の主力選手が欠けたからといって、簡単な展開にならないことはバスケットボールではよくあることだ。スカウティングしきれていない伏兵が活躍するなど、想定外のことが起こりやすい状況になるからだ。しかし、その可能性さえもA千葉は理解して試合に臨んでいた。
「こういった状況は以前にもあったのですが、そういうときというのはあまり良い形で試合に入れていなかった。なので『今回は同じことが起きないようにするべきだ』という話をして試合に臨みましたが、選手全員がしっかりと出だしからハードワークをしてくれました。今日(第2戦)のような機会は、これまでの試合やこれからの試合と同様に成長の機会として見るべきなので、しっかりと自分たちが良いスタンダードで維持することができる試合になって良かったと思います」
2021-23シーズンの2年間を信州で過ごした前田怜緒も「信州さんもけが人とかいろいろと難しいシチュエーションだったと思います。その中で僕たちは、いつも通り自分たちのバスケットをすることを目標にして試合に入りました」と試合を振り返る。
「自分たちはディフェンスからリズムを作るチームなので、それを誰が出ても強度を落とさずにやれたことが今日の勝因だったかなと思います」

古巣凱旋の前田「いいプレーをして恩返しを」
信州を離れた後にA千葉に移籍した前田にとっては、古巣凱旋となる2日間だった。第2戦ではスターティングメンバーに起用され、ドライブや外角のシュート、アシストにディフェンスなど攻守にわたりA千葉のリズムを作っていた。前田の得意とする独特なステップやエースを抑える執ようなディフェンスには、A千葉のファンのみならず、信州のブースターも惹きつけられていたに違いない。
「このアリーナ(ことぶきアリーナ)っていうのは本当に思い入れがありますし、少しでも良いプレーをして信州ブースターの皆さんに恩返しができたらなというふうに思っていました。その中でウッドベリー選手や、ペリン選手といったスコアラーの選手をマークすることが僕の仕事。その中でも昨日(第1戦)は反省点の方が多かった。今日は2人が出ていなかったけど、インテンシティを変えずにこの2試合はやりました」
その強い思いはスタッツにも表れており、その選手が出場している間の得失点差を示す「プラス/マイナス(+/-)」では、接戦となった第1戦がチームで2位の+13、第2戦も+13と勝利に大きく貢献したことが表れている。前田の活躍についてレマニスHCは第1戦後に次のようにコメントを残している。
「ここ2ヶ月ほどずっと身体のコンディションと戦っていて、ようやくこの3週間ほどでかなり良い状態になってきたんじゃないかなと思います。ディフェンスもかなり良かったと思っていて、難しいマッチアップもいくつかあったんですけど、しっかりとコート上で良いパフォーマンスを出してくれたと思っています。オフェンスでもしっかりとボールを動かしたりだとか、逆に自分がアタックするタイミングっていうのを見据えてしっかりとアタックできていたんじゃないかなと思います」

過去2年は涙 プレーオフへの「意識が違う」
圧倒的な強さで東地区優勝を決めたA千葉だが、選手たちは誰一人として油断はしていない。その根底には、過去2年のポストシーズンでの苦い経験がある。B2初年度となった2023年は、東地区優勝を果たしたものの、プレーオフではセミファイナルで敗退。B2史上最多となるレギュラーシーズン56勝を挙げた2024年も、同じくセミファイナルで涙を飲んだ。
負けた経験があるからこそ、短期決戦の怖さや難しさを知っている。前田は語る。
「プレーオフが近づくにつれて、僕たちは昇格しなきゃいけないですし、そういう気持ちは昨季から変わらずあります。ただ、昨季と違うのは誰も過信していないというか。レギュラーシーズンはレギュラーシーズンだし、プレーオフはプレーオフということを昨季は学んだ。しっかりと、いかにレギュラーシーズンを戦い抜いて、勝率うんぬん関係なしに良い試合を毎試合できるかということは、今季はみんな一人ひとり意識が違うかなと思います」
その姿勢は試合を通して強度が変わらないディフェンスや、コミュニケーションにも表れている。たとえ審判の判定に対して不満を持っている選手がいたとしても、すぐに他の選手がハドルに巻き込み、やるべきことの再確認や修正を行う。だからこそ、高い遂行力が維持できる。
「我々のチームとしても選手としても、全員で意図を持ってやっています。自分たちがコントロールできるものに集中してコントロールしていこうということを常々話しています」とレマニスHCは語る。 悲願のB2優勝、B1昇格に向けて抜かりはない。
前田も同じだ。
「レギュラーシーズンが終わったとしても、プレーオフに向けてどれだけプレーオフモードに入れるかっていうのはここ数年の課題です。短期決戦がいかに大事かっていうのは、もうこの2年間で学んでいるので、自分たちの気持ち作りっていうのは今後課題になっていくのではないかなというふうに思います」
レギュラーシーズンは残り9試合。終盤に差し掛かり、プレーオフに向けてさらに勢いを増すアルティーリ千葉。自分たちに矢印を向け続けた先に、目指すのは悲願のB1舞台だ。

(芋川史貴)