【バスケ日本代表】渡邉飛勇が乗り越えた3年間の「きつく悔しい旅」 東京五輪雪辱へ パリでメンバー入りなるか
日本代表の渡邉飛勇©Basketball News 2for1
バスケットボールニュース2for1代表。スポーツニッポン新聞社の編集者・記者を経て、2020年に現メディアを立ち上げる。日本代表やBリーグからNBA、WNBAまで国内外さまざまなバスケイベントを取材。スポーツライターとしても活動している。

 バスケットボール男子日本代表(FIBAランキング26位)は7日、パリ五輪前に国内で行う最後の強化試合を有明アリーナで行い、韓国(同50位)に88ー80で勝利した。2日前の韓国戦、6月にあったオーストラリア(同5位)との2戦を合わせ、強化試合4戦を1勝1分2敗という成績で終えた。なお、八村塁はコンディション調整、渡邊雄太は左ふくらはぎの肉離れで欠場となった。

 日本代表は8日中にも最終メンバー12人が決定するとされており、韓国戦は代表候補16人にとって最後のサバイバルとなった。特に激しい競争が予想されたのがビッグマンのポジションだ。パリ五輪で対戦するフランス(同9位)は224㎝のビクター・ウェンバンヤマ(NBAスパーズ)、216㎝のルディ・ゴベア(NBAティンバーウルブズ)ら規格外のサイズを持つ選手が揃っており、他の強豪国にもNBA経験を持つ屈強なビッグマンが多い。日本は八村やジョシュ・ホーキンソンら主力のビッグマンが多くの時間をプレーするとはいえ、2人を支える控えビッグマンの役割は非常に大きくなる。

 207㎝の渡邉飛勇もパリ五輪でのメンバー入りを目指す1人だ。八村と渡邊が欠場した韓国戦では2戦ともに先発としてプレーし、7日の第2戦では約16分間の出場で7得点3リバウンド2ブロックを記録。ホーキンソンや河村勇輝とも息の合ったコンビプレーを披露し、ロスター入りへ大きくアピールした。

韓国戦で先発も「自信はないです」

 「自信はないです」

 韓国戦を終えて、最終メンバー入りへの自信を聞かれた渡邉は笑顔で答えた。

 5日の第1戦を84-85と競り負けた日本。選考要素が強い強化試合とはいえ、パリ五輪に弾みをつけるためにも7日の第2戦は絶対に勝っておきたい試合だった。

 試合開始直後、ホーキンソンからパスを受けた渡邉が先制点を含む最初の5得点すべてを決める活躍を見せる。その後も体を張ったディフェンスやリバウンドなどで献身的に貢献。第4クォーター残り2分の「クロージングラインナップ」にも登場すると、残り1分24秒には豪快なブロックショットを披露し、勝利に決定づけた。

 韓国戦2試合でのプレーやトム・ホーバスヘッドコーチの起用法を鑑みると、渡邉の最終12人へのメンバー入りは有力とも思える。それでも、渡邉が気を緩めることはない。

 「今日(7日)は川真田もすごくよかったし、(ジェイコブス)晶もすごくよかった。井上も昨日(第1戦)はすごくリバウンドが強かった。このサバイバルはとてもきついと思います。毎日毎日120%を出さないといけない。(先発でプレーしたとしても)関係ない。吉井や馬場もスターターをやっていたりしたし、誰がスタートで出るかは関係ないと思う。僕は自分の出場時間の中で、自分の役割を果たすだけです」

 負傷中の渡邊雄太が万全ではない状況を踏まえると、パリ五輪本番では3番4番ポジションの厚みが必要となる。韓国戦ではジェイコブス晶川真田紘也も素晴らしい活躍を見せただけに、どの選手が選ばれてもおかしくない。

 5日の試合後にはホーバスHCが「川真田みたいなディフェンダーか飛勇みたいなディフェンダーか、そういうコンペティション(競争)がある。どちらがこのチームにいいかなと。多分この2人で凄いサバイバルがあると思います」と言及しており、最終的に指揮官がどのような判断を下すのか注目が集まっている。

韓国戦では先発でプレーした©Basketball News 2for1

ホーキンソンとも好相性「チームにとって大きなピース」

 韓国戦では渡邉とホーキンソンの両ビッグマンが同時に出場するラインナップが多用された。万が一渡邊が万全でなかったり、出場できない場合、八村を3番に据えて4番に渡邉、5番にホーキンソンという高さのあるラインナップを使う可能性もある。

 慣れない4番ポジションでの起用について渡邉は「4番でのプレーはよかったと思います」と手ごたえを口にする。終盤のプレーに関しては「もっといいプレーができたと思う」と課題に挙げたものの、「動きが速いペリメーターの選手たちとマッチアップすることはいいチャレンジだと思うし、90%はいい仕事ができたと思う」と胸を張った。

 息の合った連係プレーを披露したホーキンソンも「素晴らしい活躍だった」と渡邉のプレーを振り返る。

 「いつもリバウンドに飛び込むし、ボックスアウトやリバウンド、とてもハードにフィジカルにプレーしてくれます。チームにとって大きなピースです。彼のような運動能力が高くリバウンドを取ったりダンクしたり、全力でフロアを走って細かいことをいろいろできる選手がいるのは大きいです。今日の活躍も素晴らしかったし、彼のパフォーマンスを誇りに思います」

ジョシュ・ホーキンソン(左)との相性も抜群だ©Basketball News 2for1

3年間の思いぶつけ「すべてを出し切った」

 2021年、当時22歳の渡邉は東京五輪のメンバーに選出されたものの、本戦での出場機会はなかった。「東京五輪の時の僕はただの若者で、将来のためにメンバーに選んだもらったようなものでした」と渡邉は当時を振り返る。

 東京五輪後は活躍が期待されたものの、度重なるケガに苦しんだ。五輪直後の9月には右腕の骨折で3度の手術を経験。メンバー入りが期待された昨夏のワールドカップでは、開幕直前に右肩を負傷し、チームからの離脱を余儀なくされた。

 「長い旅でした」

3年間の思いをかみしめるように、ゆっくりと言葉をつなげていく渡邉。

 「すごく長い旅。きつい、悔しい旅だった。東京オリンピックから今回まで本当にきつかったよ。マジできつかった。もう二度とやりたくない(笑)。ここにいられるだけでとても嬉しいです。感謝したいです」

 所属していたBリーグ琉球ゴールデンキングスは外国籍ビッグマンの層が厚く、なかなか出場機会にも恵まれなかった。ケガにも悩まされ、波乱万丈な3年間だった。それでも、腐らずに努力を続けた。

 「すごく自分を誇らしく思います。このキャンプでもケガを抱えながらプレーしてきたし、これまでも3回手術をして、琉球でもあまりプレーできなくて。いろんな要素がありながら自分がコートで出し切れたことはとても誇らしいです。すべてを出し切りました」

ゴール下で体を張る渡邉©Basketball News 2for1

 3年間の思いを代表活動にぶつけ、すべてを出し切ったからこそ、8強入りを目指すパリ五輪への思いは強い。

 「(パリ五輪でプレーすることは)とても楽しみです。僕たちが前回のオリンピックからどうバウンスバックできるか。最終予選を勝ち上がったチーム(ブラジル)には勝てるチャンスがあると思うし、フランスはウェンバンヤマとかもいるけど、できるだけハードにぶつかっていくだけ。前回大会からどうバウンスバックできるかワクワクしています」

 いよいよパリ五輪に向けたロスター12人が発表されるアカツキジャパン。「今はトム(ホーバスHC)の判断を待つだけです」と渡邉の表情は明るい。

 「パリ五輪のロスターに入ったら多分泣くと思う(笑)。もしロスターには入れれば(トップレベルの選手たちとマッチアップすることを)考えていくだろうし、もし落ちたらBリーグでまた頑張るだけ。とにかく自分はやることをやり切ったと思います」

 2大会連続の五輪出場、そして東京五輪のリベンジとなるか。運命の発表はもうすぐだ。

(滝澤 俊之)

4番ポジションでプレーする渡邉(右)©Basketball News 2for1

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