
10月18日に2025-26シーズンが開幕するWリーグ。昨シーズンはプレミア6位だったトヨタ紡織サンシャインラビッツは、シーズン終盤にはENEOSサンフラワーズに連勝するなど、チームは尻上がりに調子を上げてシーズンを終えた。ルーカス・モンデーロHC体制を継続した今シーズンは、長岡萌映子や奥山理々嘉、桂葵、窪田真優といった経験豊富な新戦力を獲得。若手の育成と新戦力の融合で、プレーオフ進出(4強入り)を目指す。
そんなチームを支えるのが、東藤なな子だ。東京オリンピックでは最年少として日本代表でプレーし、先日行われたFIBAアジアカップ2025でも存在感を見せた東藤。生え抜き7季目となる今季は副キャプテンに任命された。若手とベテランを繋ぐリーダーとしても期待されるチームの顔に、昨シーズンの振り返りや日本代表での経験、今シーズンの意気込みなどについて聞いた。
足りなかったのは「チームとしての成熟度」
――昨シーズン、トヨタ紡織はプレーオフ進出は叶いませんでした。プレーオフはご覧になりましたか?
自分がこの舞台に立ったらというイメージは持ちながらも、普段対戦している人たちのプレーを楽しみに、「みんな頑張っている!」という目線で見ていました。
――昨シーズンはプレミアとフューチャーの2部制になり、トヨタ紡織はプレミア6位でした。新体制で1シーズンやってみて、いかがでしたか?
育成というか、チームの若い子たちにチャンスが多く与えられた(シーズンだった)ので、なかなか実らない時期が多かった。でも、最後の方は本当に勝負のかかった試合で勝ち切るという流れにできました。(2部制により)降格というものができて、「本当に勝たなきゃいけない」という今まで感じることがなかった危機感があったので、そういう意味では本当に勝ちにこだわることの重要性を学ぶことができた年でもあったかなと思います。
――降格というのは、かなり怖いものですか?
めっちゃ怖いです。自動降格は避けられたんですけど、入れ替え戦に行くという可能性があったので。入れ替え戦というものも今まで体験したことないですし、勝って終わりたかったので、そういう意味では、(終盤は)毎日勝たなければいけないというプレッシャーの中で試合をしていたと思います。
――シーズン終盤にはENEOSに連勝しました
私が紡織に6年間所属してきた中で、ENEOSに勝った年はなかったので、そういうチームに勝てたというのは、チームの成長を感じましたし、今後の自信に繋がってくると思いました。
――シーズンを通して紡織が全敗したのは富士通レッドウェーブだけでした。その富士通の優勝を見て、自分たちに足りなかった部分は何だと思いますか?
チーム力というか、チームとしての成熟度。(富士通は)同じメンバーで何年もやっているというのももちろんあるとは思うんですけど、そういう部分で全員が共通理解を持って、ディフェンスもオフェンスも40分間続けられているというところは、自分たちが持てていないというか、実力が足りないなと思いました。
――オフシーズンはどのように過ごしましたか?
シーズンが終わって、日本代表活動の前後でオフがあったんですが、ハワイに行ったり、今までのオフシーズンで初めてくらいゆっくりできました。同じチームメイトの都野選手やスタッフとユニバーサルスタジオにも行きました。代表活動が終わってからは2週間くらいオフをいただいたので、そこは実家に帰りました。今回のオフは満喫できました。

副キャプテンとして若手とベテランの懸け橋に
――新チームの感触はいかがですか?
新加入の外国籍選手も入ってきて、新しいメンバーの力も加わって、何段もステップアップしていると思います。長岡さんの影響がすごくて、長岡さんがボールを持つとプレーがまた変わってくる。(プレーの)新しい選択肢が増えたので、これからどんどんシーズンを重ねていって、どれくらい成長できるか楽しみです。自分達が(長岡)モエコさんのレベルに合わせていくことで、もっと成長できるんじゃないかなと思います。
――同じ札幌山の手高校の先輩である長岡選手はどんな存在ですか?
雲の上の存在だと思っていて、リオ五輪の時(※長岡は当時22歳で全試合出場)は、自分は山の手の一年生で、見ていたので、(当時は)一緒にプレーできるとは思っていなかったような大先輩でした。憧れの方です。
――その長岡選手と同じチームになり、一緒にプレーしてみた感想は
長岡選手は常に後輩にプレーや試合の流れの大事な部分を教えてくれるので、バスケットの勝ち方というか、内容をすごく見ている。そういうIQの部分はモエコさんと一緒にプレーすることで、自分も成長できると思います。
――長岡選手と東藤選手は共に副キャプテンに任命されましたが、どうチームをけん引していきますか?
キャプテンは北村(悠貴)選手で、副キャプテンが萌映子さんと私なんですけど、年齢が私とモエコさんとで7歳離れています。そういう意味では、ゆうきさんとモエコさんはチームをまとめていく、私は逆にプレーに集中できるというか、チームのことに目を向ける必要もあるけれど、自分のプレーに集中しやすい環境をルーカス(モンデーロHC)が作ってくれています。逆に、自分は年下の子たちと距離が近いので、コミュニケーションを円滑にしていく役目は意識しています。若手とベテランの間が一気に抜けたので、自分がうまく繋げていきたいです。
目標はプレーオフ進出「確実に勝っていけるチームに」
――日本代表ではハンドラーという役割も経験しましたが、いかがでしたか?
ポイントガードを初めてやったので、本当に頭を使って冷静にやらないといけないポジションだと分かりましたし、新しいポジションやることで、視野が広がったのでよかったです。
――コーリー・ゲインズHCのスタイルについての印象は
それぞれがそれぞれの役割を理解して、この人はこういうプレーが得意だからここに合わせよう、というのがありながらやっていかなければいけないので、難しさはありましたが、すごく楽しかったです。
――アジアカップは準優勝という結果でしたが、アジアの中での日本の立ち位置についてはどう感じていますか?
パリ五輪で予選敗退となってしまって、前回大会(東京五輪)では銀メダルということがあり、もっと日本のスタンダードを上げていきたいという思いがあります。今回、今まで勝てなかった中国に勝てたのは、結果としてすごく成長した部分だと思いますし、相手に身長の高い選手が2枚いた中で、勝ち切れたというのは、高さじゃない日本の良さを証明することができたと思います。そういう日本の良さをもっとレベルアップさせていけば、今まで勝てなかった相手にも(勝つ)チャンスが出てくるんじゃないかなと思いました。
――東京五輪で銀メダルという結果を受けて、他の国からのスカウティングが厳しくなっていると感じますか?
感じます。3ポイントのケア、3ポイントを打たせないという意識はすごく感じました。そういう意味では、コーリーの速いバスケットでシュートに持っていけたので、リズムをつくれたのかなと思います。
――代表戦とチームでの試合とで、プレッシャーに違いはありますか?
代表は基本ベンチから出ることが多いので、そこまで緊張しないというか、試合を見極めて、自分自身が今出たらこういうことをやろうと落ち着いて入れるんですけど、それがスタートとかになってくると、かなり緊張すると思います。
紡織ではスタートで出させてもらっていることが多いので、責任をより強く感じますし、出だしから高いレベルでやらなければいけないので、どちらかというと(スタートで出ている)紡織の方が緊張します。
代表は選考の方が緊張します。試合になってしまえば、もう自分の役割を果たすだけですが、選考は結果を残さないと、と思ってしまうので、なるべくそこは考えない様にしています。あと何人(外れる)か、くらいの時は緊張します。もう大変です(笑)。

――今後はどんな選手になっていきたいですか?
紡織で日本一になりたいという思いがあるので、その中で自分の必要とされるところである得点力を高めて、高確率でシュートを決められるような選手になっていきたいです。また、年を重ねるごとに積み重ねてきた経験をモエコさんに教わったりもしながら、後輩にも伝えて、チームのスタンダードを上げていけるような選手になっていきたいです。
-今シーズンのチームの目標、また具体的な勝ち数の目標はありますか?
チームの目標はベスト4(プレーオフ進出)。それに必要なだけ勝ちたい(笑)。去年はギリギリ勝てる試合を落としてしまって、それが何勝(何敗)分になってしまったので、そういうところを落とさないで確実に勝っていけるチームになりたいです。
(高久理絵)






