Bリーグ西地区の琉球ゴールデンキングスは23日、韓国KBLの昌原LG Sakersとプレシーズンゲームを行い、84ー88で敗れた。試合の30分以上はリードをしていたが、立て続けに3Pを決められるなどして第4Qに逆転され、競り負けた。
この試合をもって、イタリアで参戦した国際トーナメントを含め、組まれていたプレシーズンの全7試合を終了。中地区・三遠ネオフェニックスとの開幕カードは、10月5、6の両日にホームの沖縄アリーナで行われる。
琉球は例年に比べて少ない11人というロスターで今季に臨むことや、琉球や宇都宮ブレックスでヘッドコーチを歴任してきた佐々宜央アソシエイトヘッドコーチが加わったことなど、特徴的なトピックも多い。プレーシーズンゲームを通して、スタッフ陣や選手がどのような実感を持ったかは気になるところ。
現状の課題も含め、23日の試合後に桶谷大HCや選手が会見で語った。
最大の課題は「ターンオーバー」
プレシーズンゲームを通して、昨シーズンとの違いが鮮明だったのは高い位置からのハードなディフェンスである。新加入の伊藤達哉とケヴェ・アルマが1対1で強度の高いプレッシャーを与えられることが変化の最も大きな要因だろう。特にセカンドユニットにはディフェンスが武器である小野寺祥太と荒川颯もいるため、伊藤を合わせた「ガードトリオ」は強烈だった。
もう一つの変化はトランジションの素早さである。高い位置でターンオーバーを誘ってイージーな得点を決めたり、伊藤らがプッシュして速攻を仕掛けたりする場面が増加。昨シーズン、ファストブレイクからの得点は1試合平均で24チーム中22番目に少ない7.3点だったが、23日の試合では11点を記録した。
桶谷HCの中でも、今シーズンはより速いペースのバスケットボールを目指す考えがあるようだ。
「昨シーズンよりも、オフェンス、ディフェンスともにトランジションの意識を高めていきたいです。簡単な得点をもう少し取りに行きましょう、と。トランジションの中でのスコアが増えてきているので、そこら辺は良くなってきていると思います」
一方で、課題はターンオーバーの多さと質だ。22日にあった昌原LG Sakersとの第1戦では、87ー67で快勝したものの、ターンオーバーの数は相手を九つも上回る19回に達した。23日の試合は12回だった。
もちろん新チームになってからまだ試合数が少ないため、連係が未成熟な部分はある。とはいえ、脇真大が「(23日は)ターンオーバーの数はそこまで多くはないですが、大事なポゼッションでのミスが目立ったので、修正していけたらいいかなと思います」と語ったように、オフェンスの攻め所が明確になっていなかったり、プレシーズン序盤の頃は味方のボールマンに対する声掛けが不足していた場面もあったため、修正が必要であることは間違いない。
桶谷HCも「ターンオーバーが自分たちの生命線になる」と重要視した上で、「ターンオーバーが連続して出てから流れが変わってしまった。これからの試合で負ける時はそこが原因になると思います。起きたターンオーバーの事象が何かということをはっきりさせて、そこをまたトライしていく。プレシーズンでこういう課題が出たことは良かったと思います」と語り、改善を誓った。
11人体制を「チャンス」と見る植松義也ら
プレシーズンゲームについては、練習中に右ヒラメ筋肉離れの負傷を負ったヴィック・ローが全て欠場したため、10人での戦いとなった。今シーズンは11人という例年に比べて少ないロスターなため、こういうシチュエーションは開幕後も発生する可能性は十分にある。東アジアスーパーリーグ(EASL)への参戦もあり、過密な日程を戦う琉球であれば、なおさらだ。
指揮官に選手起用における感触を聞くと、以下のようなコメントが返ってきた。
「プレータイムを考えながら、なるべく偏らないようにしていました。イタリアも行って厳しいスケジュールの中、10人でローテーションし、すごく実りのある7試合になりました。スタッフも含めてみんながハードワークしてくれたから、課題も見付かりました」
大方のチームは12人以上のロスターを揃え、8〜10人ほどでローテーションすることが多い。そもそもが11人という体制下で、当然桶谷HCも「怪我だけは怖い」と言うが、「動ける選手が溢れていないので、ローテーションしながらみんなを起用できるのはいいところだと思う」と語り、選手の試合勘を保つ意味でもポジティブな側面を感じているようだ。
選手のモチベーションを上げる効果もある。以下は、ローが復帰した後は「11番目」になると見られる植松義也の言葉である。
「今シーズンはずっとチャンスだと思っています。ヴィックが戻ってきて11人が揃った後、最初の方はプレータイムが少ないかもしれないですけど、ちょっとずつ自分を成長させていって、安定的にプレータイムをもらって活躍できるようになりたいです」
セカンドユニットの一人としてコートに立ち、プレシーズンゲームでは出場時間が10分超の試合も多かった植松。昌原LG Sakersとの第1戦では18分15秒出場した。昨シーズンは平均6分22秒で、出場機会すらない試合も多かったことから考えると大幅な増加であり、自らが「チャンス」と見ていることもうなずける。
昨シーズンの平均出場時間が8分13秒だった荒川颯も今オフに同様なコメントを口にしており、今季に懸ける気持ちは強い。
佐々氏の加入で「指揮系統」整理 新たな魅力まとい新シーズンへ
佐々アソシエイトヘッドコーチのチームへの復帰については、どんな効果が生まれているのだろうか。
既に森重貴裕氏、穂坂健祐氏、アンソニー・マクヘンリー氏、キース・リチャードソン氏という4人のアシスタントコーチを抱える中、さらに経験豊富な佐々氏がスタッフ入りしたことで、桶谷氏は「最初は指揮系統をどんな感じでやるのか、難しさはありました」と振り返る。それでも「そのあたりを整理してやりやすいようにしました」と言い、スタッフ陣全体にとってもいい刺激にもなっていると見る。
「今はスタッフ陣がみんな高いモチベーションを持って仕事をやってくれています。いる人が変わるということは、僕はそういう部分で良いことだと思っています」
桶谷氏、佐々氏、穂坂氏と、B1でのヘッドコーチ経験者が3人もいる琉球。層の厚いコーチ陣がいかにそれぞれの役割をこなし、どのようなチームを構築していくのかは、今季の注目ポイントの一つだ。
3シーズン連続となるファイナル進出を経て、王者奪還の懸かる今シーズン。選手、コーチともに開幕前からモチベーションは高い。どんなチームをつくりたいかを問われた桶谷HCは、笑みを浮かべながらこう言った。
「愛のあるチームでいたいです。みんなでチームを作り上げているので、言動一つにとっても『愛がないと駄目だよね』と思っています。正直、それさえあればめちゃめちゃ強いチームになるし、やっててみんな気持ちがいい。それこそ、観てる人たちに元気を与えられるチームになると思う。みんなが好き勝手やってバラバラのチームは、観ている人もおもしろくない。僕がチームをつくる限りは、そのあたりはみんなに理解してやってもらいたいと思います」
今村佳太やアレン・ダーラム、牧隼利など近年の繁栄を支えた多くの主力が抜けた一方、既に新チームならではの魅力をまとい始めている琉球。新キャプテンの一人に就任したローが復帰し、フルメンバーが揃った時、どんなバスケットボールを披露するのか。沖縄アリーナで行う開幕戦では、昨シーズン中地区王者の三遠ネオフェニックスという強豪の一角と対戦するため、早速その全貌が見られそうだ。
(長嶺 真輝)