イタリア南部のシチリア島に位置するトラパニで開催された国際トーナメントで、Bリーグの琉球ゴールデンキングスは大会最終日の8日夜(現地時間)、イタリアリーグ1部(セリアA)のデルトナ・バスケットと3位決定戦を行い、71ー80で敗れた。ヴィック・ローは負傷で欠場した。
同日に決勝も行われ、欧州の中でも名門とされるセルビアリーグのパルチザン・ベオグラードが主催クラブであるセリエAのトラパニ・シャークに89ー61で圧勝し、優勝した。
Bリーグのクラブが欧州で行われる大会に参戦したのは今回が初めて。琉球は2戦2敗で勝利こそできなかったが、琉球というクラブにとどまらず、日本バスケ界全体にとっても意義深い遠征となった。
ファウルトラブルも総力戦で健闘 カークが「ダブルダブル」
デルトナ戦は7日のトラパニ戦と同じく、岸本隆一、松脇圭志、脇真大、ケヴェ・アルマ、ジャック・クーリーのラインナップでスタート。クーラーがなくて暑い会場やマイナス7時間の時差に体が慣れてきたのか、前日に比べて各選手とも序盤から動きが良く、松脇や岸本が軽快なタッチで3Pを沈めてリードを奪った。
しかし、高さやフィジカルの強さで勝る相手にペイントエリア内を攻め込まれると徐々に引き離され、33ー40で前半を折り返した。ファウルが混み、この時点で岸本、脇、アルマが既に三つとなっていた。
第3Q途中にはアルマとクーリーが立て続けにファウル四つとなるが、この試合で14得点、11リバウンドのダブルダブルの活躍を見せたアレックス・カークがインサイドで奮闘。伊藤達哉や荒川颯、小野寺祥太らセカンドユニットは得点こそ伸びないものの、ディフェンスで我慢を続けて食らい付いた。
第4Qは開始直後にアルマが5ファウルで退場。それでも脇の積極的なゴールアタックやクーリーのオフェンスリバウンドからのゴール下、岸本のディープスリーなどで粘り強く戦い、一桁点差で試合終了のブザーを迎えた。最終的にチーム全体のリバウンド数は相手と同じ37本。クーリーは16得点、9リバウンド、岸本は11得点、3アシストを記録した。
岸本「誠意は伝わる」試合終了後に地元客から拍手
試合後、桶谷大HCは「ローポストを狙われ、ファウルでフリースローを多く与えてしまいました」と敗因を語ったが、それ以上に今回の欧州遠征に大きな意義を感じたようだった。
「自分たちにとってとてもいい経験になりました。国内だけでやっていても、ここまでフィジカルが強いチーム、オーガナイズされたチームと試合をすることはなかったです。本当に勉強になったし、これからトラパニ、デルトナのバスケを学んで、国内リーグでの戦いに生かしていきたいです」
ゲームが終わった直後、琉球の選手たちが各方面に頭を下げて挨拶すると、客席の地元客から大きな拍手が湧いた。中には立ち上がって手を叩く人も。岸本は「すごく嬉しかった」と言い、こう続けた。
「誠意を持ってプレーすることで、伝わるものが必ずあるんだなということを再認識できた試合になりました。あとはやっぱり勝ちたかったですが、それはまた来シーズンか、いつになるかは分からないですけど、次の機会にとっておきます。次は本当に勝つつもりで、調整の部分からしっかりやれたらいいかなと思います」
コート上では終始、笑顔も多かった。
「日本でずっとプレーをしていると初見ということはあまりありません。純粋に、駆け引きの中で初めて対戦するチームに対して自分が持っているものを出したり、いつもと違う空気感でプレーできること自体がすごい楽しい。なんにも縛られていない気になれるので。そういう意味で、すごく楽しい試合でした」
遠征出発前に「パスタが食べたいです」と楽しみにしていた岸本は、滞在中に「6回くらい食べて、とっても美味しかったです」と満足げ。チーム全員で欧州らしい建築物や地中海を望むトラパニの市街地を散歩したり、ピザを食べて談笑したりして、シーズン開幕前に絆を深める上でも良い機会になったようだ。
ゴールにアタックし続けた脇「コーチ陣に求められていること」
ディフェンス力やスピードに優れた伊藤と、206cmながら万能なプレーができるアルマという新加入選手が持ち味を発揮した遠征だったが、今シーズンが本格的なルーキーシーズンとなる脇が2試合とも先発出場して存在感を発揮したこともチームにとっては好材料になった。
昨シーズン途中に特別指定選手として加入したものの、今年2月に負傷離脱した自身にとっては、イタリアでの試合が復帰戦でもあった。
デルトナ戦のスタッツはちょうど23分の出場で5得点、4リバウンド、2アシスト。ディフェンスでフィジカルの強い相手にポストアップされた時に体を張って止める場面もあり、その選手が出場している時間帯の得失点差を示すプラスマイナスは、アルマに次いで高い「+5」だった。
オフェンスではドリブルからスクリーンを使って相手ディフェンスのズレを作り、その瞬間にゴールへ果敢にアタックするプレーが多く見られた。ファウルをもらって2度フリースローを獲得し、気持ちの強さが見て取れた。
「それがコーチ陣に求められていることなので、意識的にやっていました」と振り返る一方、「そこからビッグマンに落とすのか、外の隆一さんとか松さん(松脇)とかにキックアウトするかとかは自分の判断ですけど、そこがまだまだなので修正していきたいなと思います」と課題も口にした。
欧州のチームのフィジカル面については「本当に強かったですが、自分たちも全然やれるという感覚はありました。日本だと僕のところでポストアップしてくる選手はあまりいないですが、外国人選手にそれをされても体を張ってディフェンスできることも証明できたと思います」と手応えを語った。
強い自信を持ちながら貪欲に成長を求めるルーキーに対して、桶谷HCも頼もしく感じているようだ。
「こういう経験を1年目でできるのは彼にとってプラスになる。何もやらずに帰るより、チャレンジして一つでも多く失敗をすることが今後の成長につながると思うので、それをしっかりやってくれたことは良かったです」
昨シーズンまで得点源の一人としてハンドラーも務めていた今村佳太が退団したため、ルーキーシーズンから重要な戦力として期待される脇。イタリア遠征という特別な経験が今後の成長の糧になることは間違いないだろう。
(長嶺 真輝)