Bリーグ西地区首位の琉球ゴールデンキングスは25、26の両日、沖縄アリーナで東地区首位の宇都宮ブレックスと対戦した。
1戦目は最大の武器であるリバウンド数で上回られたことに加え、宇都宮に3Pシュートを47.4%(38本中18本)の高確率で決められ、86-105で敗れた。2戦目は序盤こそ点の取り合いとなったが、徐々にディフェンスから流れをつかみ、最後までリードを保って97-88とバウンスバックに成功した。
この連戦において、試合ごとでパフォーマンスの質が極端に異なった選手がいた。今シーズン加入したビッグマンのケヴェ・アルマである。
初戦は攻守でほとんど存在感を示すことができず、5得点2リバウンド。「+/-」(その選手が出ている時間帯の得失点差)はチームで最も低い「-29」だった。それから一転、2戦目は3Pシュート6本の成功を含むキャリアハイの31得点。6リバウンドに加え、ディフェンスでも好プレーが目立ち、「+/-」はチームで2番目に高い「+12」だった。
身体能力の高さはピカイチだが、以前から調子に波のあるアルマ。“ムラ”のある要因、そして、スタンダードを上げるための改善点は何か。アルマ自身や桶谷大HCのコメントからポイントを探る。
初戦を完敗を経て「より攻撃的になれた」
2戦目終了後、記者会見に姿を見せたアルマは、冒頭の総括でこうコメントした。
「とてもいい試合ができました。もう少し決めることができたかもしれませんが、自分は3Pシュートを多く打てました。チームとしてよく戦えたと思います。自分たちはディフェンシブにプレーをしていましたが、昨日はいい試合をできなかったので、もっと良くする必要がありました。いい試合になりました」
初戦は難易度の高い距離のあるフローターシュートが多く、フィールドゴール成功率はわずか20.0%(10本中2本成功)。地区首位同士でチャンピオンシップ(CS)さながらの高強度でのぶつかり合いとなる中、レフェリーの判定に苛立ちを見せる場面もあり、精彩を欠いた。
2戦目は一転、オープンでの3Pシュートを積極的に打ったり、素早いトランジションから豪快にダンクをしたりしてオフェンスをけん引。フィールドゴール成功率は55.0%まで上昇した。ジャック・クーリーの出場時間がファウルトラブルで11分49秒のみに制限された中、ディフェンスでD.J・ニュービルに体を当ててドライブの進路を防いだり、リバウンドに飛び込んだりして、いい動きが目立った。
自身としても、前日からの反省と修正をあったようだ。
「昨日(第1戦)はとてもフラストレーションが溜まってしまって、いいプレーができず、チームの雰囲気を悪くしてしまったと感じています。今日はより攻撃的になり、どのシュートを打つべきかを判断できて良かったです。チームメイトも自分を見つけ、いいパスを送ってくれました」
オープン3Pの鍵は「しっかりスクリーンをかける」こと
アルマについては、桶谷大HCも2試合での出来の違いを感じていた。2戦目が終わった後、アレックス・カークの名前も挙げながら以下のように評した。
「昨日に関してはケヴェとアレックスが『ふにゃふにゃ』しちゃっていて、戦術以前に薄っぺらいバスケットになってしまいました。今日は2人とも気持ちを見せたなと思います。昨日のバスケットで勝ったとしても、本当にそれが2人のハードワークなのかというと、それは違ったと思います。今日はケヴェもカークも良かったので、ジャックがファウルトラブルでいない間の3BIGの時間帯も良かったです」
中でも、アルマについて一つ気になる変化があった。本人のスコアに対する積極性が増したこと以前に、2戦目はオープンの3Pシュートシチュエーション自体が多かった。なぜか。指揮官の説明が分かりやすい。
「昨日はちゃんとスクリーンをかけずにポップしたりしていたので、それでは誰もオープンにはなりません。しっかりとスクリーンをかけ、自分のディフェンダーがボールに反応し、その上でポップをするというシーンをつくれました」
スクリーンをかけた上で、相手ディフェンスがスイッチをすれば、今度は高さのミスマッチができやすい。そうなれば、次はアルマが面を取ってハイローなどを狙えばいい。だから、桶谷HCは「『スクリーンをちゃんとかけなさい』というところが一番重要かなと思います」と強調した。
プロ3年目のアルマ チームにとっての“伸びしろ”に
今後、29日には西地区3位の大阪エヴェッサと対戦し、2月1、2の両日にはアウェーで中地区2位のアルバルク東京と対戦する琉球。さらに2月5日にはホームで天皇杯セミファイナルが行われ、中地区首位の三遠ネオフェニックスとぶつかり、強豪とのカードが続く。その先にあるEASL「ファイナル4」、そしてBリーグのCSを見据える上でも、アルマがいかにプレー精度の“ムラ”を無くし、スタンダードを上げていくかはチームの成績に直結する大きなポイントとなる。
桶谷HCにアルマが成長すべき点を聞くと、以下の答えが返ってきた。
「彼は熱くなるタイプなので、平常心でバスケットをすることが重要です。強い相手と対戦する時は、正直、審判もあまり(ファウルを)吹いてくれません。それこそプレーオフに入ったら、本当にファウルは取ってくれない。それでも決め切らないといけない。昨日は僕たちがソフトに入ってしまいましたが、今日は取り戻してくれました。それをやり続け、スタンダードになるようにしたいと思います」
いかに冷静にプレーをし続けるか、という部分とつながる話ではあるが、アルマ自身は自らの改善したい点に「Decision Making」を挙げる。「意思決定」や「状況判断」という意味だ。「オフェンスでパスを出すのか、シュートをするのか。その部分に一番力を入れたいと思っています」と語った。
まだプロデビュー3年目で、26歳のアルマ。指揮官は「プレーをハードにしたり、しなかったりと、まだまだムラのある選手です。ただ、彼がリーグのトップ・オブ・トップで戦うのであれば、成長していかないといけない。マクヘンリーACも本人にそういう話をしてくれています。初日もマックが一番怒っていました。そういう状況も含め、成長していってほしいと思います」と期待感を込める。
西地区首位を走りながら、まだアルマという大きな“伸びしろ”を抱える琉球。彼の成長は、チームをさらに一段階上のレベルへと引き上げる可能性を秘めている。
(長嶺真輝)