年をまたぐBリーグのシーズンが、2024年の戦いを終えた。消化した試合数はレギュラーシーズンの60試合中26試合。各地区とも強豪チームが順当に上位に付けている印象ではあるが、まだまだ混戦模様だ。
中でも、西地区は20勝に達しているチームが唯一なく、勝率5割以上の5チームが6ゲーム差の中でひしめいている。昨シーズンの成績と比較した場合、最も勝率の変化が大きく、混戦に拍車を掛ける存在となっているのが、13勝13敗で4位に位置する京都ハンナリーズだろう。
若手主体で臨んだ昨シーズンは17勝43敗で西地区最下位。逆襲に向け、オフに古川孝敏や川嶋勇人、小野龍猛ら実績のあるベテランに加え、アンジェロ・カロイアロ、ジョーダン・ヒースという有力な外国籍選手も獲得した。エースの岡田侑大やアウトサイドシュートが得意な前田悟らも健在であり、今の成績を見れば、補強は「成功」と言って差し支えないだろう。
ただ、2017-18シーズン以来、長らく遠ざかっているチャンピオンシップ(CS)の舞台に進むためには、白星をさらに加速度的に積み重ねる必要がある。
求められる変化とは何か。2024年最後の試合となった12月29日の琉球ゴールデンキングスとのアウェー戦後、記者会見に姿を見せた古川の飾らない言葉に、そのヒントがある。
序盤のエナジー不足とリバウンドで劣勢に
12月28、29の両日、沖縄アリーナで行われた西地区首位の琉球戦。1戦目は前半こそシーソーゲームだったが、序盤からなかなかエナジーが上がらず、インサイドで強みを持つ相手に第2Q終盤から突き放された。
2戦目は第1Q終盤から先行を許し、前半だけで21点ものセカンドチャンスポイントを献上。第3Qに最大22点までリードを広げられ、プレー強度を高めて第4Qに一時一桁差まで戻したものの、逃げ切られた。
数字で見る最大の敗因はリバウンドだ。平均リバウンド数がリーグトップの琉球に対し、2試合とも10本以上上回られ、2戦目ではオフェンスリバウンドだけで23本を掴まれた。それを念頭に、ロイ・ラナHCも以下のように2戦目を総括した。
「前半が非常に大きかったと思っていて、また入りから少しエナジーが欠けてしまいました。あと、一番はリバウンドのところでかなりやられてしまった。ターンオーバーが9回で、後半はバウンスバックしたところはありましたが、琉球のように良いチームに勝つためには40分間やるべきことをやらないと勝てないというところが出た試合でした」
今シーズンの平均失点は80.6点なのに対し、この連戦はいずれも90点以上を奪われた。1戦目のターンオーバーもわずか8回で、オフェンスのミスを少なく抑えることができていただけに、リバウンドとディフェンスで我慢ができていたら、より勝利に近付けていたかもしれない。
劣勢の中で奮闘が光ったのが、37歳のベテランである古川だった。
特に2戦目は、岡田と前田の二人が第1Qでファウル二つとなった影響もあり、プレータイムが増加。25分52秒の出場でチームトップタイの16得点を挙げ、琉球最大の得点源であるヴィック・ローに激しいプレッシャーを仕掛けるなどディフェンスでも存在感を発揮した。手を叩いたり、声を出したりして味方を鼓舞する姿も目立った。
指揮官も古川について「ショットセレクションが良く、非常に良かったです。スマートにプレーをしていて、いろんな方法でスコアができるところが彼の強みだと思います。後半のロー選手に対するディフェンスも良かったです」と高く評価していた。
豊富な経験を共有「全員が一つになって戦いたい」
ただ、自己評価を聞かれた当の本人は「チームの勝ちにつながらなければ、なんとも言えないというのが正直なところです」と話し、連敗を重く受け止めているようだった。言葉を探しながら、ゆっくりと語った総括コメントからは、チームの現状に対する危機感がうかがえた。
「今日に限らず、昨日の試合も含めて、全て後手に回ってしまいました。同じ地区で、直接対決で勝ち切らないといけない力のある相手に対して、先手を取られるような試合をしてしまうと、やっぱり勝てません。もっともっと高みを目指してやっていきたいという思いを持っていますが、まだパフォーマンスとして追い付いていないというところが正直あります」
自身は「『気持ちが』という言葉で片付けたくない」と言ったが、やはりチームのメンタル、そして戦う姿勢に課題感を感じているようだ。「追い付いていない」部分について追加で聞くと、以下の答えが返ってきた。
「自分たちが強いメンタルで戦わなければならないという部分で、足りないところはあります。そこで相手にやられましたし、流れを持っていかれそうになった時に全員が下を向いてしまうような雰囲気もある。そこで我慢をして戦い切れるかということはすごく大事です。勝つメンタリティをしっかり持ってやらないと、厳しいと感じます」
他にも「相手にリードされてから自分たちが頑張る、ではもう遅い」「最低限、勝つメンタリティを持ち、そこに細かい戦術や相手に対するアジャストを積み重ねていくと厚みが出てくると思います」など、戦う姿勢を説き続けた。
Bリーグ初年度の2016-17シーズンに栃木ブレックス(現・宇都宮ブレックス)で優勝を果たし、ファイナルの初代MVPに輝いた古川。その後に所属した琉球、秋田でも求道者のごとき安定したメンタルとプレーでチームをけん引し、長らく日本代表のジャージも着ていた実績十分のベテランの言葉は重い。
もちろん、言うだけではない。前述のように攻守で結果を残しながら、コート上でチームメートを鼓舞して「勝つメンタリティ」を体現しているように見える。それを将来性のある若手も多いチームに植え付けることが、自らの役割だという自覚もある。
「これまでいろんな経験をさせてもらってきたので、それをみんなに共有しながら、京都としてどういう強みを持って、全員が一つになって戦っていくのかをつくれるようにしたいです。それは僕ができることでもあると思うので、積極的にチームメートに声を掛けながら、みんなと一緒に作り上げていけたらいいなと思っています」
現状、オフェンシブレーティング(100ポゼッションでの平均得点)が115.1でリーグ4位に付け、攻撃力は申し分ない京都。一方、ディフェンシブレーティング(100ポゼッションでの平均失点)は113.9は19位の数字であり、36.4本で16位の平均リバウンド数と合わせて課題となっている。
古川が求めるような戦う姿勢がチーム全体に浸透し、より安定的にエナジーを持ったプレーができるようになれば、自然と改善していく部分も多いだろう。もう少しで折り返し地点を迎えるレギュラーシーズン。後半戦で京都が西地区の“台風の目”となり、ファンとCSへ「共に、登る」(今シーズンのチームスローガン)ためにも、試合に臨むメンタリティを一層強固なものにしていきたい。
(長嶺 真輝)