
Bリーグ西地区の琉球ゴールデンキングスは10月4、5の両日、ホームの沖縄サントリーアリーナに東地区の横浜ビー・コルセアーズを迎え、2025-26シーズンの開幕2連戦に臨んだ。結果は初戦から順に75-77、75-79。昨シーズン準優勝の強豪が、中地区7位だったチームを相手にまさかの連敗スタートとなった。
琉球がホームの同一カードで2連敗を喫したのは、Bリーグ初年度である2016-17シーズンの2017年4月15、16の両日にあったシーホース三河戦以来のこと。2021年4月に沖縄サントリーアリーナがホームコートになってからは初めてとなる。
昨シーズンからほぼ主力が残留し、日本代表の佐土原遼を補強しただけに驚きも大きかった。大前提として横浜BCが敵地で高い遂行力で戦い抜いたことがこの結果を生んだ最大の要因ではあるが、接戦に強い琉球にとっては“らしくない”プレーが散見されたのも事実。
何がホームでの開幕2連敗につながったのか——。
桶谷大HCが開幕前から口にしていた「謙虚さ」の不足
初戦のスタートから出来が悪かったわけではない。小野寺祥太を中心に安藤誓哉にチームでプレッシャーをかけ、ボールシェアをしながら各選手が内外からバランス良くスコアを重ねた。ただ、引き離したい場面でことごとくターンオーバーが起こり、つかず離れずの展開が続いた。
第4Qの序盤には最大10点差までリードを広げたが、終盤の勝負所で再びターンオーバーを連発。ディフェンスのオーバーヘルプも散見され、3ポイントシュートを高確率で決められるなどして競り負けた。
試合後、桶谷大HCは冒頭の総括から厳しい言葉を口にした。
「シュートが入らない中で、前半はそれなりにディフェンスで我慢できていたんですけど、勢いに乗りたい時にターンオーバーが出てしまいました。正直、謙虚さがない戦いをしてるなと思っています。スカウティングに対して全然真摯に取り組んでいない。それが勝負どころで出たと思います。一つひとつのディフェンスをパーフェクトにすることはできませんが、それでも『何やってんですか?』という戦いでした」
この試合では横浜BCのビッグマンがファウルトラブルに陥っているにも関わらず、ジャック・クーリーとアレックス・カークのシュート数がいずれも4本のみ。日本人選手にマークされたヴィック・ローのところのミスマッチも効率良く突くことができず、攻守において、全体として状況判断の質が低かったと言わざるを得ない。
指揮官は「『いつでも勝てるからいいだろ』という雰囲気でやっていました」とも言った。「謙虚さがない」というコメントも含め、これらは開幕前から何度か口にしていた言葉だ。オーストラリア遠征の初日を振り返った時、そして、アルティーリ千葉とのプレシーズンゲームの時も発していた。
開幕をわずか11人で迎えた昨季から一転、優勝候補の一角に挙げられる今季は、慢心への危機感は常に示していた。だからこそ、憤りも大きかったのだろう。
ただ、序盤から先行された2戦目は小野寺や小針幸也、松脇圭志らが体を張ったディフェンスで流れを引き寄せ、後半に猛追する場面も。結果的に敗れはしたが、桶谷HCは「エナジーを持って戦い、昨日よりは格段に良かった。ポジティブに捉えて、台湾での試合(EASL)に向けてチームを作り直していきたいです」と前を向いた。
連戦の合間には、プロとして在るべき姿、試合との真摯な向き合い方について選手たちに訴えかけたという。
「昨日負けてるのに、沖縄ではこうやってメディアがたくさん来てくれて、ファンの人たちも連敗してるのにほとんどの人が帰らずに最後までいる。これはあり得ないと思っています。そういう状況の中で、自分たちはお金をもらってバスケットをしている。SNSをやるのもファンクラブを作るの全然いいけど、それは付属的な部分で、真摯にバスケットと向き合うことが仕事です。ここで勝って、初めて喜んでもらえる。そういう姿勢は絶対に忘れてほしくない。キングスだから人気もあるし、見てもらえるし、メディアに取り上げてもらえる。それは忘れたらいけないということを伝えました」
桶谷HCが2021年に指揮官に復帰して以来、4シーズン連続でCSファイナルに進出している琉球。チーム戦術や個々の技術以前に、こういったプロ意識を常に選手に求めていることも常勝チームであり続ける大きな要因の一つだろう。

「オプションの多さ」を整理する必要性
初戦の後には司令塔の岸本隆一も会見に登壇した。佐土原遼の加入で選手層の厚みが増した今季の琉球にとって、チーム力を底上げするための鍵になるポイントを口にした。
「まだ(シーズンは)始まったばかりなので、そこまで悲観はしていません。ただ、第4Qの一番大事な時間帯でターンオーバーが続いたりして、自分の中ではオフェンスを整えられませんでした。ボールの落ち着きどころというか、どこが起点になるのかが僕の中でぼやけてしまったので、そこは反省しなきゃいけないと思っています」
整理ができなかった要因について追加で聞くと、以下のように補足した。
「(共通認識が)ズレてる感覚はありませんでした。いい言い方をすると、オプションがいっぱいあるので、何を選択するかという部分でぼやけたと感じます。もう少し責任を持って、はっきりしたものを提示できれば良かったと思います」
各選手がそれぞれの強みを持つ中、どこにアドバンテージがあり、どこで重点的に攻めるのか。厚みを増したからこそ、試合を重ねながら状況に合わせた最適解を見つけていく必要がありそうだ。

新加入の佐土原をいかにフィットさせるか
移籍後の公式戦初陣に臨んだ佐土原について、もう少し触れたい。
2試合とも先発でコートに立ったが、初戦は19分45秒の出場でわずか2得点1リバウンド、2戦目に至っては8分のみの出場にとどまった。チームカラーや役割も異なるため、単純比較はできないが、ファイティングイーグルス名古屋で日本人エースを張った昨季の平均スタッツが出場時間29分43秒、12.8得点だったことからも、いかに少ない数字かが伝わるだろう。
いずれもプラスマイナス(その選手が出ている時間帯の得失点差)はチーム最低の−10。体の強さを生かした本来の持ち味を発揮することができなかった。
その要因として、横浜BCはメインのビッグマンが外国籍3人のみなのにも関わらず、佐土原に対してその内の一人が主にマッチアップしたことが挙げられる。一方で、ローに対しては日本人のウイング選手をつけた。
この守り方について、ローが「自分がポストアップしたら佐土原のインサイドの強みが引き出せない。その逆もしかり。それで少し苦しみました」と振り返ったように、攻略に手を焼いた感は否めない。
移籍後、初めてのメディア対応で佐土原は「昨シーズンとほとんどメンバーが変わっていないので、その中に入ることは結構難しいです」と語っていた。すぐにフィットするのが容易ではないことは間違いない。

ローが「ニュービルや富樫のような素晴らしい選手でも、チームメイトの助けがなければいいプレーを引き出せません」と言ったように、チームとして佐土原のストロングポイントを生かす戦い方を模索する必要がある。
桶谷HCも「佐土原は11、12番目ではなく、ローテーションを張るメインプレーヤーなので、選手たちも(すぐに連係をするのは)難しいと思います」と見る。その上で「佐土原や他の選手ともコミュニケーションを取りながら、うまく回るようにしていきたいと思います」と今後を見通していた。
10月8日には台湾で東アジアスーパーリーグ(EASL)の開幕戦を迎え、10月11、12の両日にはアルバルク東京をホームに迎える琉球。今季も厳しい日程が続くが、試合を重ねながら、戦う上でのメンタルや連係の熟度を上げていきたい。
(長嶺真輝)






