イタリア南部のシチリア島に位置するトラパニで行われている国際トーナメントに参戦中のBリーグの琉球ゴールデンキングスは7日夜(現地時間)、主催クラブであるイタリアリーグ1部(セリエA)のトラパニ・シャークと初戦を行い、69-78で敗れた。
Bリーグのクラブが、世界的に見てもハイレベルな欧州の国際大会に参戦するのは初めて。「沖縄を世界へ」を掲げる琉球にとってだけでなく、Bリーグ全体にとっても歴史的な一歩となった。
琉球は最終日の8日午後6時15分(日本時間・9日午前1時15分)から、同じくセリエAのデルトナ・バスケットと3位決定戦を行う。この試合は琉球の公式YouTubeで日本時間の9日午後2時頃から配信される予定。
過酷な環境下で収穫も 桶谷大HC「80%は遂行できた」
現地時間の午後9時過ぎにティップオフしたトラパニ戦。琉球は岸本隆一、松脇圭志、脇真大、ケヴェ・アルマ、ジャック・クーリーのメンバーでスタートした。
序盤から相手の素早いトランジションオフェンスになかなか対応できず、先行される時間帯が続いたが、アルマの3Pや岸本の巧みなドライブからのレイアップなどで食らい付く。第1Q終盤には、伊藤達哉がコートに入った直後に前からプレッシャーを掛けてターンオーバーを誘い、イージーレイアップを沈めて逆転する場面もあった。
34ー37の僅差で入った後半は我慢の展開に。プレッシャー強度を高めた相手に対してオフェンスが重たくなるが、脇やアルマらが体を張るなどして一桁点差を維持する。伊藤は第3Qでも躍動。バックビハインドパスでアレックス・カークの得点を演出したり、得点こそならなかったが、素早いドライブからのキックアウトで小野寺のフリーの3Pシチュエーションをつくるなど、持ち味の魅せるプレーを随所に発揮した。
第4Qは二桁点差に放される時間帯もあったが、最後まで植松義也や荒川颯らが高いエナジーを維持。オフェンスファウルを吹かれたが、脇が積極的に縦にアタックする場面もあり、多くの見どころをつくった。
敗れはしたものの、前提条件に大きな違いがあったこの一戦。ホームコートでいつも通りのコンディショニングで試合に入った相手に対して、琉球は片道20時間以上の移動を経て2日前に現地入りし、時差はマイナス7時間。日中は30度を超える天候の中、クーラーの無い会場で試合をする経験は学生以来という選手も多かっただろう。ヴィック・ローの負傷欠場も大きかった。
それらを踏まえ、試合後の会見に臨んだ桶谷大HCは内容に対して及第点を付けた。
「勝ちに行き、結果として負けました。ただ、プレーシーズンのファーストゲームで選手たちはこれまで積み上げてきたことを100%ではなくとも、80%程度は遂行できたと思います。こういったところをしっかり続けていき、成長していきたいと思います」
新加入の伊藤やアルマのほか、脇や植松も積極的なプレーを貫き、収穫も多かったのだろう。
一方、敗因についてはターンオーバーを26個してしまったことを挙げる。Bリーグとは異なるトラベリングの笛の基準に苦しんだ面もあったが、「トラパニはボールプレッシャーがしっかりしていて、ペイントで潰された」と言ったように、相手は高さやフィジカルの強さもさることながら、ペイントエリアに進入した時の寄せの速さは見事だった。
この試合は、欧州における歴史的な一戦という意味合いもあった。ブーイングで大きな鳴り物の音が響くなど、日本とは異なる会場の雰囲気も含めた印象を聞くと、桶谷HCは「ヨーロッパ、そしてイタリアのアウェーの雰囲気は初めてだったのですが、こういう経験ができることは本当に幸せなことです。今後の成長に繋がる一つのきっかけになると思います」と話し、改めて今回の遠征に意義を感じたようだった。
アルマ「良いスタートが切れた」
キングスで初めての対外試合となった2人も手応えを口にした。
伊藤は15分25秒の出場で4得点、2アシスト、2スティール。持ち味のディフェンスで高強度を貫き、存在感を発揮した。以下は総括のコメントである。
「環境が違うところで難しい状況になるのは分かっていたんですけど、スカウティングの部分でチームとして徹底できた部分はあるので、そこはいい材料になりました。勝ち切れなかったのは残念ですけど、また明日チャレンジする機会があるので、キングスらしいバスケを40分間できるように頑張ります」
空調の効いていない会場でプレーするのは学生時代ぶりだと言い、「熱中症になるんじゃないと思って、最初の2、3分くらいは死ぬと思いました」と少し苦笑いを浮かべた一方、欧州でのプレーは自身としても初めてで、過酷な環境も含めて「本当にいい経験になっています」と続けて笑を浮かべた。
第4Qでは岸本と共にコートに立つ時間帯も。「練習中を含めて隆一さんと一緒にプレーしたことがなくて、試合でお互いにパスを出し合って確認する感じでした(笑)。僕の『打て』のパスで隆一さんがディープスリーを打つこともあり、新しいキングスの武器になるんじゃないかなと思います」と話し、好感触を得たようだった。
アルマは試合中、少し足を伸ばしたりして気にする様子もあったが、チーム最多の16得点に加え、6リバウンドも記録。まだ連係を深める時期ではあるが、味方へのスクリーンやディフェンスのカバーに入るタイミングなど、チーム戦術への理解度の高さを伺わせる場面も多く見られた。
新天地での初めてのプレーについて「良いスタートが切れたと感じています。チームメートとのプレーは楽しかったし、これからもやり続けるのが楽しみです」と話した。
8日にはデルトナとの対戦が控える。次戦に向けて「フィジカルなゲームになると思う。自分自身が賢くプレーし、チームメイトが最高の判断とショットをできるように助けるだけです」と力強く語った。
3位決定戦で当たるデルトナ「#2&#13」のハンドラーに要警戒
最後に、3位決定戦で戦うデルトナについて触れたい。初戦でユーロリーグ優勝経験もある名門のパルチザンと対戦し、好勝負を演じた。
試合はパルチザンが終始リードするも、デルトナはバランスのいいオフェンスで食らい付く。第4Qの残り0.3秒でディープスリーを決めて85ー85の同点に追い付き、延長へ。最後は勝負所でパルチザンに所属するドイツ代表のイサック・ボンガがデルトナのエースガードをシャットアウトする好ディフェンスを見せて94ー96で逃げ切られたが、金星まであと一歩に迫った。
昨シーズンにイタリアリーグ1部に昇格したばかりのトラパニに比べ、16位チーム中8位に付けたデルトナはチームバスケの完成度がより高く、特にオフェンスは欧州のバスケらしく内外からバランス良く攻める印象だ。
特に警戒すべきは、16得点、4アシストを記録した#2のトミー・クースと、イタリア代表選手で、21得点、5アシストと大活躍した#13のトンマーゾ・バルダッソである。二人ともハンドラーとしての質が極めて高く、スクリーンを巧みに使いながら3Pやドライブで得点を量産する。琉球は伊藤や小野寺、荒川らガード陣が、ビッグマンと連係しながらどう守るかに注目したい。
遠くイタリアの地で、新しいチャレンジを続ける琉球。よりレベルの高い相手との対戦となる2戦目も、多くの学びを得られるに違いない。
(長嶺 真輝)