マクヘンリー氏の「55番」が信州で永久欠番に 渡邉飛勇「いい選手に成長できそう」“師匠”に成長誓う
アンソニー・マクヘンリー氏の永久欠番セレモニーが行われた©Basketball News 2for1
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 Bリーグ2部・信州ブレイブウォリアーズは14日、ことぶきアリーナ千曲でプレシーズンゲームを開催し、韓国の蔚山現代モービスフィバスと対戦。”マザータウン”千曲市での開催に2828人が駆けつけ、勝利を後押しした。

 試合は0-5と出遅れるも、信州は石川海斗の3Pシュートで流れをつかむ。その後もテレンス・ウッドベリーウェイン・マーシャルが得点を重ねると、堅守で失点を抑え、前半を51-39で折り返す。後半は我慢の時間帯が続くも、第4クォーターには2年目の小玉大智が躍動。ルーズボールへ果敢に飛び込み、2本の3Pやゴール下で得点を重ねるなど、チームをけん引。信州はそのまま逆転を許さず、91-75で勝利した。

 信州はウッドベリーがチーム最多の20得点、石川とペリン・ビュフォードがそれぞれ13得点、小玉も3本の3Pを含む11得点でチームの勝利に貢献した。

試合後には2017年から6年間信州に在籍したアンソニー・マクヘンリー氏(現・琉球ゴールデンキングスAC)の永久欠番セレモニーが行われるなど、“ことアリ”は大盛り上がりの一日となった。

怪我から復帰の渡邉がホームデビュー「熱いサポート感じた」

 プレシーズンゲームの3試合目となった蔚山現代との試合では、日本代表としてパリ五輪でプレーした渡邉飛勇が待望のホーム初出場を果たした。8月末の宇都宮ブレックスとの試合で足首を痛めており、今月7日に行われたソウル三星サンダースとのプレシーズンゲームを欠場していた渡邉。ホームでの最初の試合ということもあり、ベンチから途中交代した際には、ブースターから大きな声援が送られた。

 ホームでの初めてのプレーについて渡邉は「声援は試合中だったので聞こえなかったけど、とても嬉しい。(ホームでの出場は初めてということで)心から熱いサポートを感じたのは初めて。心の底からみんなにサポートされていると感じた」と振り返る。

 9得点に加え、長身を生かしたディフェンスや2本の豪快なブロックショットで貢献。信州のインサイドを守り続けた。昨季まで大阪エヴェッサに在籍していたショーン・ロングらとマッチアップした渡邉は、結果的には5つのファールを犯し退場となったものの、会場からは惜しみない拍手が送られた。

 自身のコンディションについては「コンディションは100パーセントではないです。でも天皇杯のために今週は出て、足首のチャレンジをしないといけなかった。来週には100パーセントになっていると思う」と語り、感触はいいようだ。パフォーマンスについては「自分のディフェンスのための良い練習になった。良いステップだと思う」と評価しつつも、「でもこれから。試合の中で一貫性を持って高いレベルのプレーをキープすることが大事だと思う」とさらなる高みを見据える。

 勝久マイケルヘッドコーチ(HC)も「宇都宮戦で足首を捻挫したときは本当に心配していたんですけど、こうやって早く復帰できて良かったです。彼も期待をものすごくしている選手ですけど、同時に若い選手で経験も積ませたい選手。なので、プレシーズンゲームに出ることが大事で、今日は少しでもそういう経験を積めて良かったです」と笑顔を見せた。

ホームデビューを飾った渡邉飛勇©Basketball News 2for1

勝久HC万感「 マックはこのクラブにとってものすごく大きな存在

 試合後にはアンソニー・マクヘンリー氏の引退・永久欠番のセレモニーが開催された。2017年に信州に加入したマクヘンリー氏は、B2優勝やB1昇格に大きく貢献。2022-23シーズンを最後に現役を引退し、昨シーズンからは琉球でアシスタントコーチとして新たなキャリアを歩み始めている。

 信州で着用していた背番号55にちなみ、会場の時計がすべて「5」にそろえられた中でスタートしたセレモニー。元チームメイトからのあいさつやビデオメッセージが寄せられ、式の最後にはB2優勝時と同じく黄色い風船を全員で飛ばす演出も。ことアリに集った全員がマクヘンリー氏の功績と素晴らしいキャリアを讃えた。

 セレモニーを終えたマクヘンリー氏は「ビューティフルなセレモニーでした。感情的になる部分もありましたが、全てにおいてセレモニーを開いていただけたことにすごく感謝しています。自分の”55番”という番号がここに掲げられること、永久欠番になることはす信じられないし、とても光栄に思います」と万感の様子だった。

 昨年は沖縄で、そして今年は信州で永久欠番となったマクヘンリー氏。2つのチームのカルチャーを築いただけではなく、キャリアを通して日本バスケ界にとっても大きな影響を与えてきた。

 改めてどのようなキャリアだったかを尋ねると、「すごく誇りに思っています」と一言。

 「このようなセレモニーを昨年は沖縄で、今年は信州で開いていただけたことを感謝しています。その中で、自分の選手としてのキャリアを通して、コーチングスタッフやトレーナー、選手、そしてファンの皆さんにインパクトを与えられたと感じていますし、謙虚になることも大事だと感じていながらも、こういう日を迎えられたことに感謝しています」と言葉を噛み締めながら語った。

琉球に続いて信州でも永久欠番となったマクヘンリー氏©Basketball News 2for1

 特別な思いを持っていたのは、勝久HCも同様だ。昨季、沖縄での永久欠番セレモニー直前のインタビューに対して指揮官は以下のように語っていた。

 「我々もマックに同じくらい感謝の気持ちを伝えたい。当然、いつかは信州でもそういうセレモニーをしたい。というか、絶対します。スケジュール上、沖縄でというのが先になりましたけど、琉球さんが『信州が来るときに』とやってくれるのは本当に嬉しいです。きっと我々がホームでセレモニーをやるときになるんでしょうけど、マックへの感謝の気持ちは個人的にもクラブ全体としても、彼に伝えたいなというのはあります」

 この言葉から約1年後。B2優勝などの思い出の詰まったことぶきアリーナのコートで、マクヘンリー氏のセレモニーが実現した。そこにはマクヘンリー氏にスピーチを送る仲間や、熱い抱擁を交わす指揮官とマクヘンリー氏の姿があった。

 特に、勝久HCは信州のカルチャーを築いたマクヘンリー氏とマーシャルの久々の共演を微笑ましく見つめていたという。

 「マックがここにいるのが嬉しくて、最初入ってきたときは感動しました。マックが入ってきたときにも感動しましたし、選手たちを見ていたり、ウェインがマックに対してスピーチをして2人が向き合っているところのちょうど間で自分は見ている。自分の中でこんなにも大きな存在の2人をこういう形で見ることができて、自分の心の中ではあの画が特別だなと思った。あの2人の画をただ見て『これは特別だな』と自分の中でその瞬間を楽しんでいました」

 勝久HCは続ける。

 「スピーチはいつもやっていて決して好きな方ではないんですけど、毎年この立場なので多くやってきて。ですけど、今日はいつも以上に大事に感じて、そのことを感じて多少緊張しました。スピーチで話した通り、マックはこのクラブにとってものすごく大きな存在で、我々がここまで成長してこられたファンデーションの大きな一人。彼だったり、マックの家族だったりに、しっかりと我々信州の彼らに対する愛情を見せるという場は絶対に作りたかった。最後の風船とかとても信州らしくて良かったと思いますし、雰囲気もことアリで素晴らしかった。信州らしくできたと思いますけど、何よりも彼に我々の感謝と愛情を伝えられたことが良かったです」

永久欠番となったユニフォームをともに持つマクヘンリー氏(左)と勝久マイケルHC©Basketball News 2for1

最短B1復帰目指し始動「毎日成長することが大事」

 プレシーズンゲームの全日程を消化した信州。10月のリーグ戦開幕を前に、今週末21日からは天皇杯の2次ラウンドが開催され、信州は愛媛オレンジバイキングス(B2)と対戦する。勝ち上がることができれば川崎ブレイブサンダースなど今季対戦ができないB1のチームとも手合わせが可能だ。

 天皇杯、開幕戦を前に勝久HCは「時間はあまりないですし、毎日成長することが大事な中で、先週からまた少し成長できた部分もあったと思うんですけど、同じミスの話をしていることもあって、それだけはしたくない。しっかりと成長していきたいという部分もあったので、危機感を持って毎日取り組んで、特にディフェンス面だったり、遂行力だったりという面でコントロールできる部分を今より遥かに上達させないといけないと思っています」と気を引き締める。

 昨季はマクヘンリー氏やマーシャルがつくったスタイルを体現できずにB2降格となってしまっただけに、選手やコーチ陣、チーム全体で今季にかける思いは非常に強い。昨季はマクヘンリー氏とともに琉球で戦った新加入の渡邉も、“師匠”の背中を見て成長を誓う。

 「昨年はマックが僕のコーチでした。僕は琉球(ゴールデンキングス)ではあまりプレータイムがなかったし、悔しい状況がいっぱいありました。でも、マックは毎朝9時からワークアウトをして、練習にも参加して、正しいことを教えてくれました。本当に昨年のマックのおかげで、今年は良い選手に成長できそうだと思います」

 日本一を目指し、「1年でのB1復帰」を掲げている信州ブレイブウォリアーズ。マクヘンリー氏が築き上げた信州のカルチャーに新しい1ページを加えるべく、新たな挑戦が始まる。

(芋川 史貴)

黄色い風船が宙を舞ったことぶきアリーナ©Basketball News 2for1

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