Bリーグ2部(B2)は11月26から29日にかけて各地で第9節が行われ、ロートアリーナ(奈良県奈良市)ではバンビシャス奈良とアルティーリ千葉が対戦した。
ホームのバンビシャス奈良は創設10年目の節目。今シーズンは富山グラウジーズから宇都直輝らが加入するも、第8節を終えて2勝13敗、西地区最下位に沈んでいた。対するA千葉は、昨シーズンにB3参入1年目にして昇格を果たし、B2初挑戦となる今シーズンも順調に勝ち星を積み重ね、東地区2位と好位置につけている。
約1か月ぶりの白星 ビッグショット沈めた板橋は感涙
今回の試合が初めての対決となる両者。
今シーズンは日本代表経験もありアシスト王(B1)に2度も輝いた宇都や,横浜ビー・コルセアーズから古牧昌也,広島ドラゴンフライズから柳川幹也とB1チームから3名が移籍してきたが、ここまでの成績は2勝13敗と振るわなかった。
そんな中で迎えた第1戦、第1クォーター(Q)は奈良の薦田拓也の3ポイントシュート(3P)から開始。A千葉の強い攻撃を受けながらもイタリアリーグより移籍してきたジェレマイア・ウィルソンのブロックも見られ、24-18とA千葉からリードを奪い、好スタートを切った。
続く第2Q、早くにチームファールが溜まってしまった奈良はオフェンスが停滞。ターンオーバーで流れをつかみきることができず、試合の流れがA千葉へ。43-42でハーフタイムを迎えた。
後半もシーソーゲームの展開が続くも、第4Qのオフィシャルタイムアウト直前に板橋真平が放った3Pにより奈良が逆転。その後もホームの後押しを受けた奈良がリズムをつかみ、89-84で見事勝利。優勝候補のA千葉を相手に、およそ1か月ぶりの白星をファンにプレゼントした。
この日は宇都が25得点4R7A、シェイク・ムボジが22得点16R3A、板橋が14得点2R1Aと主力が躍動。4Qにビッグショットを沈めた板橋は、試合後に感極まって涙を流すシーンも。会場に集まったファンからはあたたかな拍手が送られた。
全員で話し合い チームミーティングが転機に
「素直にめちゃくちゃうれしい」。
試合後、顔を綻ばせながらこう答えたキャプテンの藤髙宗一郎。「良い所でシュートを打てるようになってきて,これまでやってきたことがようやく実ってきた」と強豪チームからの勝利を喜んだ。
一方で宇都は「今日の僕の1番良かったところはフリースローを15本打てたことと被ファール数が9回。これを見て十分仕事をしたなと思っている」と冷静に自身のプレーを分析。大きな勝利にも浮つく様子は見られなかった。
試合後の記者会見、石橋晴行ヘッドコーチ(HC)、宇都、藤髙の三者ともが「チームミーティング」について言及した。このA千葉戦が開催された週の始めに、チーム全員で試合を観て振り返り、互いに思っていることや言いたいことを言い合う時間をつくった。特に、普段なかなかコミュニケーションを取りづらい外国籍選手と日本人選手間での会話をする時間を多くとり、思っていることを伝え合えたという。
在籍3シーズン目となる藤髙はこれまでの奈良をこう振り返る。
「今までは接戦になると負けるんじゃないかというマインドがあった。チームの雰囲気が『勝てない,自分達には外国籍選手がいない』と自分ではなくあちこちにベクトルが向いていた」。
ミーティングを経てチームの関係を再構築した奈良は、試合中も積極的にコミュニケーションを取るシーンが多くなり、全員で同じ目標を共有している様子が伺うことができた。
宇都と藤高 “両親”がチームをけん引する
奈良は今シーズン,藤髙に加えて宇都もキャプテンとなり、2人体制となった。キャプテン2人体制になったことによって、藤髙は「これまでよりも荷が軽くなった」と話す。宇都は「宗一郎(藤髙)がチームを包み込んで僕が引っ張っていく。僕がチームの父親で宗一郎が母親」とそれぞれの役割を例えた。若い選手が多いチームの中で、藤髙と宇都という「両親」がチームを一つの家族としてまとめ、一致団結させているのだろう。
チームに大きな変化を生んだチームミーティングの後につかんだ勝利。翌日の第2戦に敗れはしたものの、チーム一丸となり勝ち取った白星は、きっと大きな自信につながったに違いない。
まだまだ始まったばかりの今シーズン。藤髙と宇都というチームの「両親」を中心に、全てを出し切って「ALL OUT」し、勝ち星を増やしていくことを期待したい。
(田名さくら)