B3→B1…チャンスで早速“2番手PG”に昇格した琉球ゴールデンキングスの平良彰吾 「所縁の地」を沸かせた強烈DFと親族孝行
琉球ゴールデンキングスに期限付き移籍をした平良彰吾©Basketball News 2for1
沖縄を拠点とするフリーランス記者で2for1沖縄支局長。沖縄の地元新聞で琉球ゴールデンキングスや東京五輪を3年間担当し、退職後もキングスを中心に沖縄スポーツの取材を続ける。趣味はNBA観戦。好物はヤギ汁。

 Bリーグ西地区の琉球ゴールデンキングスは26日、同地区の広島ドラゴンフライズを沖縄アリーナに迎え、100ー82で快勝した。昨シーズンのファイナルと同じ顔合わせとなり、来場した7,405人を沸かせた。琉球は5勝3敗となり、西地区3位につけている。27日も午後2時5分から同アリーナで広島と対戦する。

 最大の勝因は52本対25本と広島の2倍以上に達したリバウンドである。26本ものオフェンスリバウンドをつかんだことで、セカンドチャンスポイントで38ー14と圧倒。粘る相手に逆転を許さなかった。

 中でも過去に3度リバウンド王に輝いたジャック・クーリーは一人で17本を荒稼ぎし、そのうちオフェンスリバウンドが11本。インサイドを完全に制圧し、これまでのキャリアハイを2点更新する33得点を挙げた。

 そしてもう一人、この試合が自身にとってメモリアルな一戦となった選手がいる。

 PG伊藤達哉の負傷に伴い、今月15日にB3横浜エクセレンスから期限付移籍したPG平良彰吾である。自身は千葉県の生まれ育ちだが、両親は沖縄出身。これまでB2とB3を主戦場とし、琉球でのプレーが自身初のB1の舞台となる。広島戦では、「所縁の地」で強烈な存在感を放つ沖縄アリーナのコートに初めて立ち、岸本隆一に次ぐ2番手PGとして躍動した。

「100点目」奪う3Pで締めくくりも

 この日、琉球ファンの“大好物”であるディフェンスで最も沖縄アリーナを沸かせたのは平良だった。

 第1Qの開始から5分半、早くもコートイン。ボール運びや積極的なペイントアタックを見せる。さらに第3Qの終盤からも出場すると、今度はハンドラーの中村拓人に1対1で強烈なプレッシャーを掛け、簡単に抜かせない。その後も強靭な脚力を生かして上澤俊喜に密着マークし、バックコートバイオレーションを誘うなど、度々アリーナから拍手や歓声を浴びた。

 100点ゲームの最後を締めくくったのも平良だった。試合時間残り20秒ほどでペイントタッチした脇真大からキックアウトを受け、左コーナーから迷わずキャッチ&シュート。ゴールを射抜いてホーム初得点を挙げた。

 ホーム戦で初めて記者会見に出席し、冒頭コメントで「自分が出たタイミングでは、ディフェンスから流れをつくりたいと思っていて、その面でチームに貢献できたのは良かったです。また明日もあるので、そこに向けて準備してやっていこうと思います」と語った。沖縄アリーナの雰囲気について聞かれると、「一つ一つのプレー、特にディフェンスでハッスルした時に歓声が聞こえますし、盛り上げてもらえる。本当に素晴らしい雰囲気でした」と話し、頬を緩ませた。

 最後の3Pについては「脇がいいパスをくれたので、打ち切ろうと思っていました。自分でもオープンの3Pは自信があるので、1本しっかり決めることができて良かったです」と振り返った。

記者の質問に答える平良©Basketball News 2for1

桶谷HC、島根戦でのハッスルで「使わない手はない」と判断

 3日前の23日には、アウェーで西地区首位の島根スサノオマジックに61ー98で大敗を喫した琉球。一気に突き放された第3Qから集中力が落ちたようなミスも散見されたが、平良が第4Qから出場し、前線から激しいディフェンスを仕掛けると、終盤はチーム全体が息を吹き返したように活気を取り戻した。平良はオフェンスでも4得点、4アシストを記録した。

 島根戦などを念頭に、桶谷大HCは広島戦から平良をメインのローテーションに組み込んだ理由を語った。

 「前節に関しては、自分たちの唯一良かったところが彰吾の頑張りでした。ディフェンスでチームを奮い立たせる部分は、使わない手はないと。もちろん(荒川)颯も四苦八苦しながらやってくれていますが、この何試合かの結果からして、彰吾が出るべきだと判断をしました」

 ディフェンスの評価ポイントも説明した。

 「プレッシャーを掛けて抜かれないところです。僕らは味方だからいいですけど、相手からしたら相当きついと思います。ハンドラーはボールを離したくても離せない。あれはチームにとってすごくプラスになると思います」

 琉球からオファーを受けた時を「正直、すごいびっくりして、ちょっと考えられないことが起きているという感覚でした」と振り返る平良。目指していたB1の舞台に立てるチャンスが目の前に現れ、「素直に行きたいと思いました」と言う。

 強い決意で移籍したからこそ、プレーの強度は落ちない。「点差が付いてようと、付いてなかろうと、自分が出たらやることは変わらない。こんなにいいチャンスをもらえているので、常に全力を出していかないといけないと思ってやっています」と頼もしいコメントを発した。

琉球でのプレーが自身初のB1舞台となる©Basketball News 2for1

親戚も会場に「応援してもらえてうれしい」

 両親の故郷である沖縄は、幼少期からよく訪れる場所だった。この日も母親とおばさんが沖縄アリーナの観客席で見守ってくれていたという。

 「沖縄に住んだことはないですけど、小さい頃から来ているところです。沖縄アリーナもオフシーズンに観客として見に来たことがあって、そういった場所でプレーできるの本当に嬉しいです。親戚もみんな応援してくれて、喜んでもらえたので、うれしいです」

 父の平良勝利さんは沖縄初の男子日本代表であり、沖縄ではレジェンドの一人として知られる。琉球との契約が決まった時には「彰吾らしく、思い切りやってくればいいよ」と声を掛けてもらったという。

 期限付き移籍は、11月13日まで。短い期間ではあるが、現在27歳の平良はこの経験を今後のキャリアに生かしていきたいと考えている。

 「ここでできたことと、できないことがこれからも見えてくると思う。自信にするところと修正するところ、もっとうまくなるべきところを考えながらやって、自分の成長の糧にしたいです」

 琉球は東アジアスーパーリーグ(EASL)の試合も控えており、今後も様々な経験ができそうだ。巡ってきたチャンスをものにし、一人のプロ選手としてさらなる飛躍につなげたい。

(長嶺 真輝)

ファンに手を振る平良(中央)©Basketball News 2for1

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