「正直、内容は負けゲームでした」
Bリーグ西地区の琉球ゴールデンキングスは6日、沖縄アリーナに同地区の京都ハンナリーズを迎え、84ー78で勝利したが、試合後の記者会見に姿を見せた桶谷大HCは険しい表情でそう振り返った。
琉球は連勝を5に伸ばし、通算成績は9勝3敗。西地区首位の島根スサノオマジックと勝敗数で並び、地区2位につける。
リバウンドの強さと、今季から増えたファストブレイクなどを武器にオフェンシブレーティング(100ポゼッションでの平均得点)は119.7でリーグ2位となっており、攻撃力の高さが際立つ。一方、ディフェンシブレーティング(100ポゼッションでの平均失点)はリーグ12位の106.5で中位に位置し、安定感に欠ける試合もある。
この日、会見でメディアの取材に応じた桶谷HCと荒川颯は、いずれもディフェンス面の課題に言及した。
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残り4分、16点リードから猛追受ける
京都戦は序盤から常に先行する展開。京都のオフェンスの軸である岡田侑大に対して荒川や小野寺祥太、脇真大らが入れ替わりでマッチアップし、プレッシャーの強度を緩めない。特にアレックス・カーク、ケヴェ・アルマ、ヴィック・ローの3BIGの時間帯にはローが岡田をマークし、アルマもスイッチDFで対応するなど自由にさせなかった。
ゴール下も制圧し、前半だけでオフェンスリバウンドは16本。第3Qでチャールズ・ジャクソンとアンジェロ・カロイアロをいずれもファウル4つに追い込み、優位のまま試合を進め、第4Qの残り4分を切った時点で16点のリードを保っていた。
しかし、ここから流れが一変する。
オフボールスクリーンでアルマが裏を取られたり、岡田のペイントアタックに対してカバーに入る選手が曖昧になったりして立て続けに簡単な得点を許し、残り2分で5点差。さらに残り50秒で、ローポストでカークと1対1になったジャクソンに左のフックシュートをねじ込まれ、土壇場で3点差まで詰め寄られた。
最後は岸本隆一が勝負強いフローターシュートを決め、直後のディフェンスでローが岡田のレイアップに対してプレッシャーをかけてミスを誘い、なんとか京都の猛追を振り切った。
荒川「チームとして悪い時間にどういうバスケをするか」
桶谷HCは会見冒頭の試合総括で、反省を口にした。
「勝ちはしたんですけど、内容的には僕たちが求めているレベルのゲーム内容ではなかったです。自分たちがフラストレーションをどんどん溜めていって、悪い流れをつくって、最終的にリードを自分たちで失っていった。正直、内容的には負けゲームだったと思います」
25得点、9リバウンド、8アシストという圧巻のスタッツを残したローに触れて「ヴィックが得点を決めてくれて、そこで勝てました」と評価したが、さらに苦言は続いた。
「3BIGはディフェンスでハマってはいたんですけど、ケヴェが集中力を欠いていたりする場面もありました。彼は点数を取っていたけど、ディフェンスは全然機能していなかった。そういったところも含めて反省の多い試合でした」
この日、ディフェンスのハッスルやコーナー3P、ファストブレイクなどで存在感を見せた荒川も「試合を通して良い部分も多くありましたが、悪い時間帯にチームとしてどういうバスケットをするかという点で、学ぶべき部分がたくさんあった試合になったと思います」と語り、厳しい表情を浮かべた。
第3Q最後のプレーが象徴する相手の「イージースコア」
スコアチャートだけを見れば最終盤で一気に追い付かれた印象だが、二桁点差を奪っていた第3Qあたりから流れを失う兆候は現れていた。
指揮官が「無意識のうちに『順位的に勝てるだろう』と思ってるように見えました。自分たちが(やるべきことを)やれてないことにフォーカスできず、審判にフォーカスしに行こうとするところも随所にありました」と振り返る通り、プレーが継続しているにも関わらず、レフェリーの判定に不満を訴えてディフェンスの戻りが遅くなる選手もいた。
メンタル面のコントロール以外にも、荒川は状況判断の課題にも触れた。
「リバウンドを取られた後の相手のファストブレイクに対して、チームファールが溜まっていない状況でファウルができず、イージーなスコアを取られた場面が数多くありました。そこを止めるだけでも印象は変わるので、もっと強いチームになるためにはどれだけイージースコアを減らせるかは課題になると思います」
状況判断が良くなかった象徴的な場面として、桶谷HCと荒川が口を揃えたのが第3Q最後の場面だ。
残り5.8秒、京都側コートのエンドラインからリスタートし、右サイドでボールをもらった岡田がドリブルで駆け上がってきた。この時点で琉球のチームファウルは三つ。ローが進行方向の正面に入るが、岡田に左ドリブルで中央を突破されて簡単なレイアップシュートを決められた。ファウルで止める選択肢もあったが、ローポストのアルマはラシード・ファラーズのクリアアウトで抑えられ、逆サイドにいた荒川やカークがカバーに入ることもなかった。
「あのやられ方が僕は一番納得できなかった」と言う指揮官は、語気を強めて続けた。
「岡田選手のようなプレーヤーは、ずっとちゃんと守れていても、ああいうワンプレーで息を吹き返し、第4Qで一気に畳み掛けることができる。自分たちが彼に対して隙を見せてしまった。彼は左のドライブが強い。チームファウルを三つしかしていない中で、颯がファウルすることもできた。相手の速攻で彰吾がファウルせずにそのままレイアップまで持って行かれたシーンもあったし、『もっとバスケットうまくなろうぜ』というところです」
このシーンについて、荒川も「第3Qの終わり方であったりとか、部分部分で簡単に取られなくて済んだ場面がたくさんあるので、そういうところでファウルを使ったり、もっとコミュニケーションを取ったりすることは必要だと思います」と語り、改善を誓った。
桶谷HC「いかにランを食らわないかが課題」
スピード感が速く、流れが目まぐるしく入れ替わるバスケットボールにおいて、40分間を通して高い遂行力を維持することは容易ではない。相手に勢いを持って行かれる時間帯はどうしてもある。だからこそ、前述した荒川のコメントにあった「悪い時間帯にどういうバスケットをするか」は、勝利するための重要な要素となる。
会見の終盤、指揮官は改めて今後に向けた課題を口にした。
「今日は良い時と、すごく悪い時がありました。(61ー98で敗れた10月23日の)島根戦もそうでしたが、内容がとても悪い時にどれだけ立て直せるか、その時間をどれだけ短くできるか、いかにランを食らわないかは僕たちの課題です」
東アジアスーパーリーグ(EASL)の試合もこなす厳しいスケジュールの中、順調に白星を積み重ねている琉球。ただ、新チームとしてまだ連係を深める途中段階にあることは間違いない。課題を抱えていることは、言い換えれば、それだけ「伸びしろがある」ということだろう。シーズン序盤で見えた課題を一つ一つ改善し、より強さを増していきたい。
(長嶺 真輝)