「天皇杯でも、CSでも…」無念の4位でEASLを終えた琉球ゴールデンキングス 停滞した“ラスト3ポゼッション”から得た教訓とは
琉球ゴールデンキングスの岸本隆一©Basketball News 2for1
沖縄を拠点とするフリーランス記者。沖縄の地元新聞で琉球ゴールデンキングスや東京五輪を3年間担当し、退職後もキングスを中心に沖縄スポーツの取材を続ける。趣味はNBA観戦。好物はヤギ汁。

 東アジアスーパーリーグ(EASL)のプレーオフ「ファイナル4」は9日、マカオのスタジオシティ・イベントセンターで3位決定戦を行い、琉球ゴールデンキングスはニュータイペイキングス(チャイニーズタイペイ)に80ー84で敗れた。7日の準決勝から痛恨の2連敗となり、4位で大会を終えた。

 3シーズン連続でのEASL参戦で、今回初めてファイナル4に進出した琉球。悲願の東アジア王者を狙っていただけに、無念の結果となった。

 ただ、12日にはBリーグ西地区で首位琉球を2ゲーム差で追う2位島根スサノオマジックをホームに迎える。さらに15日には、アルバルク東京とぶつかる第100回天皇杯全日本選手権決勝も控えており、重要な試合が続く。

 3位決定戦では最終盤の勝負どころでオフェンスが停滞し、劇的な逆転負け。昨シーズンは天皇杯とBリーグチャンピオンシップ(CS)のファイナルでいずれも敗れており、大一番で勝ち切る難しさを改めて突き付けられた。

 桶谷大HC岸本隆一荒川颯の3人が、今後の試合に向けて得られた“教訓”を口にした。

6点リードの“勝ちパターン”からターンオーバー連発

 第4Qの残り1分31秒、80ー74と6点をリードする展開。コートには岸本、荒川に加え、ジャック・クーリーアレックス・カークケヴェ・アルマの3BIGがコートに立っていた。インサイドに強みを持つ琉球にとっては、リバウンドを制して逃げ切る必勝パターンだ。

 しかし、ここから琉球のスコアが凍り付く。

 「ノースリーシチュエーション」で3Pシュートを決められた後、ディナイを張られて岸本にボールを入れられず、荒川がフロントコートにボールを運ぶ。アルマを経由してなんとか岸本に繋ごうとしたが、ボールを渡す瞬間にスティールされ、速攻から失点して1点差まで詰められた。

 続くポゼッション。またもオフボールの段階から徹底マークを受けた岸本は蚊帳の外に置かれ、ボールの動きが停滞。圧力に押される形で24秒バイオレーションとなり、インサイドにボールを入れたり、リバウンド勝負に持ち込むことすらできなかった。

 直後にニュータイペイのエースであるジェレミー・リンのキックアウトから痛恨の3Pシュートを沈められ、遂に80ー82と逆転を許す。残り12.7秒。右コーナー付近でボールを受けた岸本がドリブルからプルアップで3Pシュートを狙ったが、リングに弾かれ、そのまま逃げ切られた。

逆転負けで4位で終戦となった©Basketball News 2for1

岸本、クロージングで「ちょっと迷いがありました」

 試合を通して最大の強みであるインサイドを強調し続け、第2Qにはこの試合最大となる11点リードをする場面もあるなど、ほとんどの時間帯で高い遂行力を見せていた琉球。それだけに、桶谷HCも残り1分31秒のオフェンスの出来を強く悔やんだ。

 「最後の3ポゼッションに詰まっていたと思います。相手の17番の選手があの場面で(逆転された)3Pシュートを決めてきたことは褒めたいですし、ジェレミーにはヘルプに行くべきだったから、それは仕方がない。ただ、その前後のオフェンスです。38分30秒まで『ここを狙おう』というコンセプトをずっとやり続けてきたのに、そこからの3ポゼッションで何もできずに終わったのがめちゃくちゃ悔しいです」

 今回のファイナル4では、直前に行われたBリーグの広島ドラゴンフライズ戦を足のコンディション不良で欠場したヴィック・ローが2試合ともロスター外に。その結果、Bリーグでは使うことが少ないクーリーとカークの“ツインタワー”を多用することとなった。

 相手ディフェンスの圧力が増すため、ハンドリング能力や機動力のある選手の存在が強く求められるクロージングの時間帯に限って言えば、ツインタワーのラインナップはさらに見る機会が少ない。

 最後の場面でゲームコントロールの難しさがあったかを岸本に問うと、こう答えた。

 「試合通して、うちのビッグマンがインサイドを制圧していて、向こうのビッグマンは外のアウトサイドが中心になっていました。どちらの強みも出ていた分、ハーフコートをどうやって組み立てようか、最後の最後だけちょっと迷いがありました。(オフェンスでは)自分がやった方がいいのか、うまくいっていた事をそのまま継続してた方が良かったのか。これは個人的な反省かなと思うので、そこはもっとクリアにやれたら良かったのかなと思っています」

 試合終盤での勝負強い3Pシュートで何度もチームを救ってきた岸本。それが入るか入らないかは結果論でしかなく、岸本が打つことに対してはチームの誰もが納得する部分だろう。ただ今回の選択については、本人としては改善の余地があると見ているようだ。

ニュータイペイの激しいディフェンスに苦しんだ©Basketball News 2for1

桶谷HC「颯を使いたいと思わせる活躍ぶり」

 チームにとっては苦しい経験となったファイナル4だが、収穫もあった。

 脇真大松脇圭志といった主力がピリッとしない中、荒川、植松義也平良彰吾という経験が浅い選手たちが普段に比べてプレータイムを多く獲得し、要所で活躍したことだ。3位決定戦の「+/−」(その選手が出ている時間帯の得失点差)は、チーム全体で平良が「+9」と最も高く、荒川が「+6」、植松が「+3」と続いた。

 特に荒川は大一番の試合でクロージングの時間帯にコートに立ち、得難い経験となった。ただ、本人からは最後の3ポゼッションについての反省が口を突いた。

 「隆一さんがディナイをされて僕がボールを運ぶシチュエーションで、チームの一体感が全くない状態での3ポゼッションになってしまいました。そこで僕がもっとリーダーシップを発揮し、一体感を持ったプレーができるかできないかで、本当に大きな差があると思います。責任感を強く持って、1ポゼッション、1ポゼッションでしっかりとコミュニケーションを取りながら積み上げていければと思います」

 このコメントの後半部分からも分かるように、荒川の目線は既に前を向いている。

 2試合を通し、オフェンスではペイントタッチからフローターシュートを決めたり、欲しい場面で3Pシュートをねじ込んだりして、ディフェンスでもハードワークを貫いた。準決勝の「+/−」もチームで2番目に高い「+4」であり、決勝後の会見で桶谷HCに「颯を使いたいと思わせるような活躍ぶりでした」と言わしめる程の充実した内容だった。

 だからこそ、好感触もある。

 「下を向いていても何も変わりません。この2試合では、自分の理想とするプレースタイルを貫いていかないといけない、ということを感じたので、この経験をしっかりと生かしていきたいです。チームとしても、最後の3ポゼッションまでは自分たちがやりたいバスケットができていたので、WINNERになれるようにチームとしてやっていきたいです」

活躍を見せた荒川颯(奥)©Basketball News 2for1

“良薬は口に苦し”強さに昇華できるか

 荒川のコメントにあったように、琉球には「下を向いている」時間はない。12日には島根とBリーグのホーム戦を戦い、15日には初優勝の懸かる天皇杯決勝がある。

 昨シーズンも天皇杯決勝とBリーグCSファイナルでいずれも敗れ、タイトルの懸かった試合で勝ち切れない状況が続くが、次こそは大一番での勝負弱さを払拭したいところだ。その材料の一つとして、岸本は今回のファイナル4で荒川、植松、平良が活躍したことをポジティブに捉えている。

 「若手の活躍が今後にどう生きてくると感じますか?」と聞いた際のコメントだ。

 「プレーオフに近付いていく時期や短期決戦での落とせない試合では、『Xファクター』の活躍が必須になります。彼らのいいところは、あまりそうなろうとし過ぎていない部分です。チームのために動いて、結果的にそういう存在になれるポテンシャルがある。そのための準備もしてると思います。思う存分やってほしいですね」

 桶谷HCも、今回の悔しい結果を次のステップに進んでいくための糧にしたいと考えている。

 「最後の3ポゼッションの話をしましたが、自分たちのオフェンスができなくなることは一発勝負のA東京との天皇杯決勝でも起こる可能性があるし、CSでも起こる可能性ある。でも(今回の試合を)教訓として、もう絶対にできない。今はネガティブな面がすごい出ていて、負けてしまってはいるけど、このチームに関してはまだ成長していく段階にいると思っています。苦いですけどね…。相当に苦い。僕も試合が終わった後に立ち直れないくらいでした。でも、それを受け入れていかないといけないと思っています」

 良薬は口に苦し。課題から逃げず、全てを飲み込み、強さに昇華していきたい。

敗戦を糧に進んでいく©Basketball News 2for1

(長嶺真輝)

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