
第100回天皇杯全日本選手権は3月15日、国立代々木競技場第一体育館で決勝を行い、アルバルク東京は琉球ゴールデンキングスに49ー60で敗れ、準優勝となった。
「トヨタ自動車」の時代、2度に渡って天皇杯のタイトルを獲得しているA東京。しかし、2016年にBリーグが開幕して以降は一度も優勝はなく、決勝に進んだこと自体が今回初めてだった。それだけに頂点に懸ける思いは強かったが、あと一歩届かなかった。
琉球は昨シーズンのBリーグチャンピオンシップ(CS)準々決勝でも当たり、ホームで1勝2敗で敗れた“天敵”でもある。それだけに、悔しさはより大きかっただろう。
リバウンドで「37本対58本」 グダイティス退団の影響も…
最大の敗因はリバウンドだ。
セバスチャン・サイズ、ライアン・ロシター、レオナルド・メインデルの3BIGで試合に入ったが、ジャック・クーリーとアレックス・カークという重量級の2人を主軸とした3BIGを敷いた琉球に対し、序盤から空中戦で劣勢に立つ。
第2Q終盤には安藤周人の連続3Pシュートなどで一時逆転したが、リバウンドからのセカンドチャンスポイントで得点を繋がれ、リードも長くは続かなかった。
最終盤の第4Q残り1分50秒で4点差まで詰め寄った時も高強度のディフェンスで相手のシュートを落とさせはしたものの、エンドラインを割り掛けたボールをカークに繋がれ、小野寺祥太に痛恨の3Pシュートを決められて勝負が決した。
結果、リバウンドの本数は37対58本。オフェンスリバウンドだけで22本を奪われ、リズムに乗ることができなかった。デイニアス・アドマイティスHCも会見の冒頭で真っ先にインサイドの攻防に触れた。
「非常に悔しい負けでした。総合的に見て、3BIGのフィジカルに対抗できなかったことが一つの大きな要因だと思います。ディフェンス面、戦術面ではかなりいいプレッシャーを与えていて、琉球をアシスト9本、12ターンオーバーとよく抑えていました。中でも一番厳しかったところはオフェンスリバウンドから21点くらい取られてしまったところです。ディフェンスリバウンドからの速攻も封じ込まれました。フリースローのアテンプト数も4本対14本だったので、ここでも大きな差が出たと感じています」
2月のバイウイーク中にアルトゥーラス・グダイティスが契約解除となり、スティーブ・ザックが新たに加入したA東京。いずれも211cmと高さは同じセンターだが、グダイティスの方がより重量感があったため、琉球のツインタワーに対抗する上では難しいラインナップになった側面は拭えない。
ザックからのパスが合わずにターンオーバーとなる場面もあり、大一番に向けて連係を深める時間が足りなかったことも悔やまれる結果となった。
チームハイの12得点に加え、6リバウンド2アシストと奮闘した安藤は「琉球のフィジカルに自分たちが負けていたのは明確です。優勝するためには、もう一つ自分たちのレベルを上げないといけない。反省点はたくさんあるので、自分を含めてしっかりと修正していきたいと思います」と厳しい表情で語った。

安藤が警鐘…「自分たちのテンポ」を貫く力を
オフェンスでは6ターンオーバーと簡単なミスこそ少なかったが、3Pシュート成功率が25.0%と思うように上がらず、チームの生命線である2Pシュートも成功率が31.6%に低迷した。テーブスを起点としたピック&ロールからエルボージャンパーやビッグマンのダイブにつなげるA東京らしい場面はあったが、リズムの悪いシュートも散見された。
安藤が振り返る。
「出だしでせっかく琉球を抑えたのに、自分たちのバスケットをせずに各々が好き勝手なプレーをしてしまいました。相手のペースに合わせてしまい、自分たちのバスケットを40分間通してできてなかったことが敗因です」
後半では修正が見られたが、最後まで逆転には至らなかった。大一番を勝ち切るために必要なことは何か。以下も安藤のコメントだ。
「自分たちは『シェア・ザ・ボール』を大事にしているチームで、アーリーで攻めるチームでもないので、ハーフコートバスケットをしっかりと遂行しないといけない。それなのに、出だしの5分間で自分の好きなタイミングで打ってしまい、第1Qで10点しか取れなかった。自分たちのテンポをもう一度考え直さないといけない。大舞台でああいうことをしちゃうと優勝はほど遠い。自分もコントロールしないといけない部分があると思います」

小酒部や大倉ら「若手」の成長が鍵に
タイトルの懸かった大一番で高い遂行力を保つのは容易ではない。それは、まだ経験の浅い若手であれば尚更である。
26歳でエースガードを担うテーブス海は、最近の試合では代表戦を含めてコンスタントに決めていた3Pシュートが6分のゼロに終わり、8得点5アシスト。本来の実力からすると物足りない数字だろう。自身も「肝心の第4Qでいい流れを持ってこられなかったのは自分の責任だと思います」と悔やんだ。
テーブスと同級生の小酒部泰暉も5得点1アシストと存在感を示せず、試合後は「これがファイナルなんだな、というのが率直な感想です。何もできなかったです」と言葉少な。テーブスに続く司令塔である25歳の大倉颯太も6分2秒の出場時間にとどまり、ゲームチェンジャーにはなれなかった。
ただ、日本一が懸かるほどの大舞台で悔しさを味わうことは、なかなかできる経験ではない。特に若手にとっては極めて貴重だ。テーブスはベンチから見た琉球の優勝セレモニーを忘れることなく、前を向く。
「なかなか見られない部分もありましたけど、悔しい景色を目に焼き付けました。琉球の選手、スタッフはみんな本当にタフに戦っていると思いますし、僕もすごくリスペクトしています。『おめでとう』と伝えたいところですけど、また戦う日が来れば、次は勝ちたいなと思います」
CSで琉球と再戦する可能性も念頭に、小酒部も強い決意を口にした。
「もうやり返すしかないというか…。去年もCSで負けていますし、今回も天皇杯で負けてます。この経験を糧に、もうやり返さなきゃいけないという感じですね」
ザック・バランスキーや菊池祥平、ロシター、サイズといったタイトル経験者を擁しながら、伸び盛りの有望な若手も台頭してきているA東京。今回の悔しさを力に変え、大一番でも勝ち切れるだけのチーム力を身に付けていきたい。

(長嶺真輝)