【バスケ人―第1回―】木村英里「バスケットボールを生活の一部に」
フリーアナウンサーの木村英里さん
Bリーグを中心に、Wリーグや学生バスケ、日本代表など日本のバスケットボール界を取材し、情報発信をするメディアです。バスケットボールに関するさまざまなニュースをピックアップし、お届けします。

バスケットボールに関わる人たちの中で気になる人物をピックアップし、突撃インタビューを行う新コーナー「バスケ人」。第1回はフリーアナウンサーの木村英里さんにお話を伺う。WOWOWで長年NBAの番組を担当され、Bリーグ発足後は「balltrip MAGAZINE」を立ち上げ精力的にバスケットボールの発信を続けている木村さん。彼女のバスケットボールのルーツや思いに迫る。

知っていたのは「SLAM DUNK」とマイケル・ジョーダン

―まずは自己紹介をお願いします

フリーアナウンサーの木村英里です。よろしくお願いします。

―現在はどういった活動をしていらっしゃるのでしょうか

今は「balltrip」というバスケットボールのウェブメディアを作って、そこで取材をしたり、個人的にはBリーグの川崎ブレイブサンダースのファンなので、応援をしながら応援コラムを書いたりしています。

―木村さん自身はバスケはやられていたんですか

えーっと…体育の授業?(笑)
基本的に私、運動音痴なんですよ。だから、運動ができる人がすごいっていう思いがあって、純粋なリスペクト心でいつも取材をしています。なのでもっぱら見る専門です(笑)

―バスケと関わるようになったきっかけは

以前、衛星放送のWOWOWでアナウンサーをしていた時代があって、その頃にWOWOWでNBAの放送をしてたんです。それで、MCでアシスタントのお仕事をいただいて。はじめにそのお話をいただいた時って自分でバスケットをやっていたわけでもないし、詳しく見ていたわけでもないし。知ってたことって「SLAM DUNK」とマイケル・ジョーダンとアレン・アイバーソンの名前は知ってるかな、みたいな。でも写真を何枚か並べられてどれがジョーダンでしょうって聞かれたら自信ないな~みたいな。本当それくらいのレベルだったんですけど。でもスタジオの進行が欲しいってことでお話をいただいてじゃあ初心者がNBAを観て、なにを面白くなにを感じるかを体現してみようと思って。それが本当に私のバスケットとの出会いでした。

―WOWOWをご卒業されてからBリーグとの関わりがあったと思うんですけど。それはどういった流れだったのでしょうか?

多分なんですけど、私がNBA(の番組)をやっていたこともあってなんですけど、Bリーグが発足するときに川崎ブレイブサンダースも企業チームからプロになって、チーム発足式が開幕前にあったんです。そこで今アリーナMCをやられている高森てつさんと一緒に司会をしてほしいということでお話をいただいたのが出会いですね。

―そこから川崎さんとお仕事をするようになった?

そうですね、今はオーナーさん代わってしまいましたけど、当時はまだ東芝さんがオーナーだったので、FM横浜で応援のラジオ番組が出来上がって、そこで毎週、中継リポーターとしてやらせていただきました。

「女性のファンに刺さるメディア」を作ってみたかった

―Bリーグのお仕事をする中で現在の「balltrip」での活動に繋がっていくわけですが、「balltrip」での活動をするにあたってどんな思いがあったのでしょうか

NBAの番組をWOWOWでやらせていただいた時もそうだったんですけど、熱狂的なバスケットボールファンに向けたコンテンツはもう十分にあると。でも、よく聞いた意見で例えばカップルで彼氏さんはバスケが大好きで、でも彼女さんはそんなに興味がない。彼氏さんは「彼女と一緒に観れたら楽しいな」って思っていて、「すごいハマってほしいわけではないんだけど、なんか楽しく試合を観れたらいいなって思ってるんです」っていう意見とかが多くて。

でも、私が実際見てみてもバスケット選手ってほかのスポーツの選手に比べても、切り取ってもすごく絵になるし、プレーのどこを見てもかっこいいなって思う部分が多くて、「あ、女の子がハマるな」って思ったんです。実際、Bリーグを見てみても、女性のファンがすごく増えてるじゃないですか。じゃあ今、日本のBリーグを取り巻くメディア環境が女性向けにどれぐらい発信ができているかなって思って。どんどんメディアも増えているし、みなさん一生懸命取材されてて、みなさん熱い思いも持っているんだけど、「女性のファンに刺さるメディア」っていうものを作ってみたかったんです。

「balltrip MAGAZINE」で日々取材を続ける木村さん©balltrip MAGAZINE

バスケのエンタメ性を発信して観戦のハードルを下げる

一緒に「balltrip」を作ってくださっている編集長のカメラマンさんはオガワブンゴさんっていう方なんですけど、彼はもともとバスケットを撮ってきたカメラマンではなくて、アーティストさんとかファッションとかそういう被写体をずっと撮ってきた方なんですよ。彼が撮るバスケットの写真ってどこかアーティスティックな写真が多くて。やっぱり今カメラを持って試合にいらっしゃる女性のみなさんも多いじゃないですか。なんか(女性ファンのニーズと)リンクするかなって。

バスケットボールは一つのスポーツだけど、ハーフタイムにすごい演出で盛り上げたり音楽かけたりって、スポーツであるとともにエンタメともすごくリンクするスポーツエンターテインメントだと思うんです。ファッションとかともすごくリンクできるし。だから、エンタメの要素としてバスケットは芸術だって思っているところもちょっとあって。そういうものを発信して、バスケットボール観戦のハードルを下げられたらいいなって。私みたいな素人がこれだけどっぷりハマれるから、「よく知らないけどこの選手がかっこいい」とか、「このダンクがかっこいい」とか、それでいいと思うんです。そういうのを一緒に共感して、さらに「こんなこともしない?」っていう提供ができないかなと思って。

アウェーに応援がてら旅行に行くのがすごく楽しい

実際に私が(川崎の)応援を始めたら、アウェーに応援がてら旅行に行くのがすごく楽しかったんですよ。だからみなさんにもファッションみたいな感じでバスケットが生活の一部になって、「週末どこか応援行っちゃう?」みたいな感じでお出かけとかできたらすごくいいなって思ってます。

―木村さんは番記者くらいアウェーにも行かれてます(笑)

全部は行けてないんですけど、沖縄とか北海道とか、新潟、富山、三河とかちょこちょこ行かせてもらって。バスケットを観るのがもちろんメインなんだけど、取材とかもあるしほかのお仕事もあるので、そんなに長いことはいられないし、でもせめてその土地のものをいただいたり、その土地のお土産を買ったり、一か所は観光地に行くとか、そういうのを決めてるんです。北海道や沖縄ってそもそもが大きな観光地なんですけど、新潟の長岡に初めて行ってみて、花火大会は知ってたけど、花火大会じゃない時期に行くじゃないですか。わっぱめしっていうすごいおいしいものがあって、「ああ、こういう出会いも楽しいな」って思って。そういうのを今楽しんでます。

―いろんな土地土地の観光名所やグルメがありますよね

だからバスケ観ながらおいしいものばっかり食べてます(笑)

女性目線では「かっこよさ」がBリーグの魅力

―女性目線でBリーグの一番の魅力は

単純だけど「かっこよさ」。ただ選手がかっこいいとかそういうことじゃなくて、今Balltripのチームメンバーが撮っている写真とかをみても、画になるんですよねやっぱり。ダンクだけじゃないじゃないですか。ただレイアップにいっているショットだけでもすごく画になるし、ドリブルで抜き去ろうとしてるところもめちゃくちゃかっこいいし、アートなんですよ。そういう意味でもかっこいいなって思います。

画になる選手もいるし。リーグの中でもピカイチだと思うんですけど、川崎ブレイブサンダースの大塚裕土選手とか、なんか本当に画になるんですよ。もちろんご自身がかっこいいっていうのもあるんですけど、ちょっと放つオーラだったりとか、バスケをしているときの雰囲気とか。あとは篠山竜青選手なんかも「いくぞ」っていうときに目がグイって大きくなったりとか、そのギアが入った瞬間の殺気立つ感じがしたり。1枚の写真を見ただけでちょっとうわってなっちゃうんですよね。もちろんそれを撮れるカメラマンさんもすごいと思うんだけど、そういうプレーをしてるんだなっていうのが直に見えて、かっこいいし面白いです。

ニック・ファジーカス(右)と篠山竜青がアイコンタクトをする瞬間をとらえた木村さんお気に入りのショット

野球やサッカーのように日常の中にバスケが出てくるように

―木村さんはこれまでNBAにも関わってこられましたが、Bリーグの可能性についてはどう思いますか

Bリーグの可能性は正直、無限大だと思います。出来ることを願ってますけど、東京オリンピックがあるじゃないですか。バスケットもね。私は(日本がオリンピックに出られるのは)ニック・ファジーカス選手のおかげだと思ってますけど、もちろん八村選手だったり渡邊選手だったり、みんなが(日本代表に)入ってくれて、オリンピックに出場することができて。多分、オリンピックの後に一番跳ねる可能性のあるスポーツだと思うんですよ。私自身が全然(バスケットを)知らなくて、観て、こんなにはまってるから、そういう可能性を実際に自分が体現しているんで、一番思うんですよね。

ファンの数の分母がすごく増えるのも理想だし、いろんなバスケットとの関わり方、見方がある。私はバスケットが生活の一部になってほしいっていう目で見てるけど、そうじゃなくても、男性が熱狂するようになるのも理想だし、バスケットボールの楽しみ方は本当に人それぞれでいいと思うんです。ずっと同じチームを応援してもいいし、好きな選手がいて、その選手がほかのチームに移籍したらそのチームを応援してもいいし、リーグ全体を楽しむのでもいいし、代表だけが好きっていう人もいるだろうし。それは人ぞれぞれ。でも、なんかみんなで日常的に野球やサッカーみたいに「昨日の代表戦観た?」みたいな話がもっと出てきたら絶対面白くなると思うんですよ。それが一つの願い。もう一つは、音楽とかファッションとリンクするってさっき話しましたけど、ファッション雑誌を開いたときに、かっこいいバスケット選手がその誌面を飾ってるみたいな、そういうのって女の子ってワクワクするんですよね。そういう風にいつかなったらいいなって思ってます。

―かっこよさっていう部分は大事な要素ですよね

私自身がバスケット経験者じゃないから、戦術どうこうっていうのはまだまだ見習いなんですよ。入り口が私はすごく低かったんですね。でも、そうするとNBAの時もそうだったんですよ。好きな選手ができて、理由は「かっこいいからです」。入り口は別にそれでもいいのかなって。

―NBAではチャンドラー・パーソンズがお好きということで

そうですね、当時すごい好きだった選手で(笑)
イケメンのね。ハリウッドスターみたいな。試合を観てた時に、「なんか今すごいイケメンが映りました」って(笑)

それでも楽しいじゃないですか、好きな選手がいると。おかげでこんなに(バスケに)ハマっちゃったって感じだと思うので。実際に当時いらっしゃったチームに行くこともできて、本当にいい思い出です(笑)

推しチーム」の勝ち負けで一喜一憂できる幸せ

―今後、どういった活動をしていきたいですか

みなさんが、バスケットボールというものが生活の一部になって、「アウェーに応援行っちゃう?」みたいな感じでバスケットボールを応援するTrip(=旅)に出てもらえたりするような感じになったらいいなっていうのが一つの願いですね。生活の一部になるじゃないですか、NBAとかって。私とかもそうなんですけど、川崎が勝ったらその日の夜と次の日はすごい機嫌がいいし、負けたらめちゃくちゃ機嫌悪いし(笑)。でも、それに気がついたときに「私本当にハマったな」って思ったので。別に応援してるチームが一緒じゃなくてもいいから、なんかみんなでそういうのを一喜一憂できると幸せですね。

バスケットボールが生活の一部になっている例として紹介してくれた木村さんが使っているユタ・ジャズのリップクリーム

―最後に来季注目していることを教えてください

一個しかありません。川崎が優勝するかどうかです(笑)。

―ありがとうございました(笑)

―編集後記―

チケット購入者の約半数が女性ファンだといわれているBリーグ。特に近年は20代から30代の若い女性ファンが増えてきている印象だ。会場に足を運べば、多くの女性ファンがプロにも負けないような高性能カメラを手に、「推し」の選手やマスコット、チアダンサーを撮影している姿が目に入る。客席とコートが近く、臨場感が魅力のBリーグならではの光景だ。試合後のSNSではファンが試合の写真を投稿し、それをファン同士で楽しむという独自の「文化」が形成されつつある。

こういった新規の女性ファンの多くがBリーグの「かっこよさ」に魅了されてハマっていく。そして、この「かっこよさ」はBリーグが推していくべきアピールポイントだ。木村さんが所属する「balltrip」の写真からは、この「かっこよさ」がすごく感じられる。まさに女性目線の女性に刺さる「映え」がそこには表現されている。

「バスケットボールが生活の一部になるように」。木村さんが繰り返し発していたこの言葉が印象に残っている。推しチームの勝敗に一喜一憂するのは、多くのファンが共感できるだろう。エンタメ性が高く試合時間も2時間で終わるバスケは、旅行との相性もいい。アウェーに応援に行くがてら、空いている時間はその土地のグルメや観光地を楽しむ。そういったことができるのもバスケの魅力だし、さらにファンを増やしていくための可能性を秘めている部分ではないだろうか。自身が女性ファンだからこそ見える視点や、提供できるコンテンツがある。木村さんの「バスケの旅」はまだまだ続きそうだ。

YouTubeでは木村さんのインタビュー全編を公開中。WOWOW NBA時代の貴重なエピソードや裏話も楽しめる。あの有名なバスケアナリストとバトルした過去も⁉

↓動画はこちら↓


https://youtu.be/GCVhQG2GWZM

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