文・写真=Basketball News 2for1
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6月決算28クラブ中25クラブが赤字
3月27日、Bリーグ2019-20シーズンが幕を閉じた。
新型コロナウイルス感染拡大の影響で、2月28日から3月11日までの試合を延期。3月14、15日に無観客で興行を再開するも、14日の川崎―北海道戦、15日の千葉―宇都宮戦でそれぞれ選手や関係者の発熱が確認され、急遽試合前に中止が決定。その後、3月17日に4月1日までの試合が再度中止になり、27日にレギュラーシーズン、ポストシーズン含め、残りすべての試合の中止が発表された。
シーズンの約1/3を残し、中止となったBリーグ。クラブに与えた財政的ダメージも大きい。4月24日の会見で大河チェアマンは、6月決算のB1、B2の計28クラブのうち、25クラブが赤字の見込みとなっていることを明らかにした。
各クラブの財政基盤が安定してきたことにより、「ただちに経営破綻するクラブは出ない」とチェアマンから説明があったものの、自分が愛するチームの状況を不安に思うファンも多かったはずだ。
Basketball News 2for1では、およそ一か月にわたって各クラブの現状や財政状況を取材。コロナ禍で大変な状況下で、答えにくい話題やセンシティブな問題もあった中、しっかり対応してくださった各クラブの関係者の皆様には感謝の意を示したい。
人気クラブの千葉や宇都宮も赤字
2016年に開幕し、毎年右肩上がりで成長を続けてきたBリーグ。5年目を迎える来シーズンを取り巻く環境は厳しいものになりそうだ。リーグ発足後から黒字計上を続けており、2018-19シーズンの営業収入がリーグトップの17.6億円だった千葉ジェッツも例外ではない。
「千葉は完全に赤字計上になると見ています」。
千葉の米盛社長は話す。シーズン中止がなく、通常の興行が続けられていた場合、今シーズンも「増収を見込んでいた」という。
2018年度の入場料収入がリーグトップの宇都宮ブレックス・鎌田社長も「今の状況で行けば赤字予想です」と頭を悩ます。
「一番大きなところはやはりチケット。(中止となったレギュラーシーズン+チャンピオンシップを戦うと想定すると)チケットだけでいうと約1億4000万円くらいがマイナスになっている状況」。
資金がショートする可能性もあったが、さまざまな制度を利用したり、銀行から融資を受けるなど、素早い対応で「次のシーズン(来季)が始まるくらいまでは、なんとかキャッシュフローは回せるような状況」をつくることができたという。
横浜はスクール収入で大ダメージ
昨シーズンは約1億円の赤字を計上していた横浜ビー・コルセアーズも、今季が通常通りに終了していた場合、「黒字がギリギリのところで見えていた」という。
「スタッフの頑張りもありました。新しいスポンサーも年々、増えてきていますし、大きなスポンサーもついてきていたっていうのがありますので、 (黒字が)見えていた部分はあったんですけど。まあ、たらればです」と植田社長は残念そうに語る。
チケット収入のほかにも大きな打撃となったのがアカデミー収入だ。
バスケットボールやチアのスクールでリーグ最大規模を誇る横浜は、3月の途中からスクールを稼働できていない状況だという。「年間12ヶ月のうちの約1/4はなくなってしまっているので、ここも大きな収益に直撃したっていうのは正直ありますね。(想定より)売り上げは1億円以上減ってますから。そこからすると非常に悔しいなという思いはあります」。
苦渋の選手減俸 2割カットのクラブも
売り上げへのダメージがチームの編成に影響を与えるケースもある。新しく契約する選手には「最低限のオファーしかできていない」と語るのは、三遠ネオフェニックスの北郷社長だ。
「ウィズコロナ」の状況で迎える来シーズンは、観客を100%入れてホーム30試合を開催できる保証はどこにもない。無観客での開催や、シーズンの短縮、中断などあらゆるケースを想定しなければならない中で、チケット収入の見通しが立たず、予算を組むのは非常に難しい状況にある。
別のクラブの社長は悲痛な思いを語る。「どう考えても人件費は増えない。選手の年俸はチーム予算をベースに20%下げている。本音でいえば50%カットくらいじゃないとリスクヘッジはできない。でもそうはいかない訳です」。
契約に「不可抗力条項」でリスク回避
契約内容を変更するチームもある。
今シーズンのような事態を踏まえて、リーグ全体で話し合った結果、任意で「不可抗力条項」を契約に盛り込むことが可能になった。これは今回のような疫病や天災などで興行が中止となり、クラブに大きな損害があった場合は選手の給与を一部調整することができるシステムだ。
新潟アルビレックスBBの小菅社長は「リーグ戦が行われなくなった場合などは、契約自体を破棄できる特別条項をつけて契約を結んでいる」と語る。こうすることで、クラブ側はリスク回避しながらも積極的にいい選手の獲得を狙うことができる。
来シーズンからレギュレーションが変更となる外国籍選手登録枠でもクラブ間で差が出る可能性もある。試合登録が3人となる利点を生かせるチームもあれば、人件費の関係でそうもいかないチームもある。
三遠・北郷社長は「シーズン初めは外国籍選手は1人少なくいく」と話す。「本来は(外国籍選手)ベンチ登録3人OKというのが最大のメリット。外国籍選手が(3人)いることがチームをいろいろなパターンで考えられる。でも、そうも言っていられない」。
横浜・植田社長は「我々も(外国籍選手)3名(ベンチに)入れておきたいなと思いながらも、ただ、その時期をずらしたりとか、そういったことも当然検討しています」と可能性を模索する。
シーホース三河・鈴木社長は「このような厳しい状況だからこそ、優勝をして地域を元気にしていきたいことを選手にも伝えて、しっかりと理解してもらっています。」と厳しい状況ながらも前を向く。
リーグ再開へガイドライン作りを
全国で緊急事態宣言が解除されたとはいえ、リーグの来シーズンの見通しは不透明だ。
野球やサッカーと違い屋内で行われるバスケットボールは、会場内で「3密」の条件が揃いやすい。観客を入れて試合を開催するとしても、観客同士が距離を取り「密」を避ける必要があるなど、満員での興行はハードルが高い。
三河・鈴木社長は「安心安全な興行運営を心掛けていく。会場に来られないお客様にも楽しんでいただけるように」と無観客、来場者の入場制限の事態も想定し、計画を練る。
千葉・米盛社長のシミュレーションによると、ある程度スポンサーからの協賛が得られたとしても「無観客であったり、入場制限が続いてチケット収入の半分がなくなってしまうと、赤字になるかなという風に見ている」という。
また、フィジカルスポーツということもあり、選手同士の接触は避けられない。無観客試合であったとしても、選手や関係者の感染リスクを0にすることは不可能だ。あるクラブの社長は、リーグ、クラブ、選手が一丸となって試合に臨まなければならないと指摘する。
「次にリーグを再開するときはしっかりとしたガイドラインを立ててやらないといけない。そうしないと本当にリーグが機能しなくなって、クラブも収入がなくなり、結果的に選手たちにも波及する。安全策を講じながら、できるタイミングでやっていく。その体制づくりはリーグが担う」。
新たなオンラインビジネスには手応え
チケット収入を当てにできない以上、新たなビジネスモデルを確立することも必要になってくる。その一つがオンラインでの施策だ。
外出自粛が続いた期間は各クラブがSNS等で積極的に活用し、ファンとの交流を図った。新潟や横浜は子供たち向けにオンライン上でトレーニング動画を配信するなど、ファンの「おうち時間」に寄り添う企画を実施した。
川崎ブレイブサンダースや京都ハンナリーズはチャリティーオークションを開催し、売り上げを社会福祉団体や医療従事者などに寄付。秋田ノーザンハピネッツはオンラインでのファン感謝祭を開催。生のイベント以上に“参加者”が多かったという。YouTubeでの「投げ銭」システムにも挑戦し、手ごたえをつかんだ。秋田の水野社長は「新たな観戦スタイルや、応援してもらう仕組みにチャレンジしていかなければいけない。新しい形を受け入れてもらいたい」とファンに呼びかける。
宇都宮は地域に根差した活動にも取り組む。
ファンに栃木県の温泉を運ぶイベントを開催。「徐々に(規制が)緩和される状況が出てきてはいるので。しっかりと予防もしながら、少し今までやっていなかったようなことをやって、元気づけるようなことをやれれば」と鎌田社長は明るく語る。
「日本一丸」で危機に立ち向かう
新型コロナウイルスの影響で、この世界は未曾有の事態に直面している。Bリーグも存続の危機に立たされようとしている。
「(B1、B2の)36チームが必ず生き抜くことが大事」と大河チェアマンが話す通り、我々は愛するバスケットボールを、リーグを守っていかなければならない。そのためにもリーグ、クラブ、選手が一枚岩となって団結し、覚悟を持って来シーズンを戦い抜くことが必要だ。ファンやメディアはそれを全力でサポートする。
今こそバスケットボールファミリーの力を見せる時だ。「日本一丸」で戦えば、勝てない試合はない。