
全日本大学バスケットボール選手権(インカレ)の男子は、早稲田、東海、白鷗、日本経済の4大学が勝ち上がり、13日に準決勝が行われる。関東大学リーグ戦との2冠を目指す早稲田は、3試合連続逆転勝ちと勢いに乗る日本経済大と対戦する。最強の攻撃力か、鉄壁の守備陣か——。まさに「ほこ×たて」の見ごたえある一戦になりそうだ。
神奈川大戦は19点差を逆転勝利
昨秋の入れ替え戦に勝利し、今シーズンから関東1部に復帰した早稲田。新任の倉石平ヘッドコーチの下、全員が走って内外角から得点を重ねる“超攻撃的スタイル”に取り組んできた。留学生はおらず、主力選手の最高身長は191㎝。このサイズのハンデを、走力、シュート力、体力で補う作戦だった。
春先のスプリングトーナメント時には未完成だったが、ライバルチームが驚嘆する練習量で、秋にはすべての力がアップ。関東大学リーグ戦(1部)を22勝2敗で終え、57年ぶりの優勝を果たした。早稲田の1試合の平均得点は、2位を10点以上離す91.8。個人得点ランキングも2位3位4位6位を占めた。
近年、留学生を中心に守備を固める大学が増える中、とにかく速い展開で数的優位をつくり、シュートを打ちまくる早稲田のスタイルは異色で、多くのファンの注目を集めた。
堀陽稀副将は「毎試合100点以上を目指した。プレーしていて楽しかった」と語り、岩屋頼主将は「勝つたびに自分たちのスタイルに自信を深めていった」と明かした。
だが、優勝すれば徹底マークされるのがスポーツ界の常。続くインカレの神奈川大学(関東10位)との初戦は、思わぬ苦戦を強いられた。
神奈川の幸嶋謙二監督が「綿密に対策を練った」と話したように、神奈川は早稲田のストロングポイントを徹底的につぶしにきた。ディフェンスリバウンドを取った司令塔・下山瑛司をすぐにチェックして速攻を出させない。外角シュートが得意なシューティングガード陣には、密着したディフェンスでタフショットにさせる。一方、攻撃では早稲田のお株を奪う速攻やパス回しで、得点を重ねていった。
第2クォーター(Q)の開始約5分で25対44。早稲田は19点差をつけられた。ただ、そこから徐々に巻き返す。守備でリズムを作り、攻撃は外角シュートにこだわらず、ペイントアタックや1on1を仕掛けた。第2Q終了時には6点差まで縮め、最終的には83対72で勝利した。
「激しいディフェンスでくるとは思っていたけど、想像以上だった」と松本秦。堀副将も「(試合に)ぬるっと入ってしまった」と頭をかいた。
ただ、試合全体をみると、開始15分間は神奈川のディフェンスに手を焼いたが、タイムアウトなどでしっかり修正点を確認し、残り25分間を早稲田のペースで運べたことは収穫だった。

23年ぶり大一番「とにかくチャレンジャーの気持ちで」
翌日の相手は、前年のインカレ王者・日本大学。開始直後から強度の高いディフェンスで早稲田の攻撃を抑えにかかった。第1Qは22対21と日大リード。ただ、この試合も早稲田は選手同士で積極的に声を掛け合うなどコミュニケーションを深め、第2Qから自慢の攻撃力を発揮。96-87で勝利し、23年ぶりの準決勝進出を決めた。
早稲田はこの試合、3ポイントシュートを34本放ち17本成功。松本24点、岩屋22点をはじめ5人が2桁得点を挙げた。「昨日の反省を生かし、今日は早い展開にもっていけた。全員がいいシュートを打てた」と下山。岩屋主将も「96点取れたことは大きな収穫。残り2試合、とにかくチャレンジャーの気持ちで早稲田のバスケをみせたい」と決意を述べた。

その早稲田と準決勝で戦うのは日本経済大学(九州2位)だ。シューティングガードの今泉太陽主将、198センチの留学生ベノイットを中心とした堅守のチーム。インカレはグループステージを2勝0敗で突破すると、本選でも中央大学(71対69)、明治大学(63対61)、天理大学(72対66)をつぎつぎ撃破した。
中央と明治は、関東リーグ戦で早稲田と大接戦を演じたチーム。また天理は直前の関西リーグ戦で14勝0敗と圧倒的な成績を収めていた。
日本経済の片桐章光監督は「うちの強みは選手層とディフェンス。誰が出ても強度は変わらないし、勝負所でギアも上げられます。相手が関東でも関西でも、臆することなく立ち向かえるメンタルも備わっています」とチームの強さを語る。
インカレ本選の3試合は、後半に差をつけられることもあった。ただし、選手は慌てず、持ち前の守備から流れをつくり、苦境を打開した。
ここまで勝ち続けられる背景に、「7月の新人インカレ優勝」があるという。全国24大学が出場した大会で、日本経済大は東海大や白鷗大などを接戦の末に破り、初優勝したのだ。1、2年生だけが出場する新人戦とはいえ、インカレで関東以外の大学が優勝するのは快挙だった。
試合を見ていた4年の今泉主将は「下級生の活躍は素晴らしかった。自分たち上級生も負けてられないと、大きな刺激になった」と語る。新人インカレ優勝以降、上級生と下級生が切磋琢磨し、チームの総合力が大幅に上がっていった。
毎年冬に開催されるインカレは、1949年の第1回大会以降、すべて関東勢が優勝している。日本経済大は準決勝、決勝に勝利すれば、ここでも歴史に名を刻むことになる。
準決勝を前に片桐監督は、「とにかく試合の入りが重要です。春先に関東の強豪大学と練習試合をさせてもらうのですが、第1Qに10点ぐらい差を付けられて、第2~4Qは同点というケースが多い。そこは特に気を付けたい」と語った。
爆発的な攻撃力を誇る早稲田大と、インカレの全試合で69点以下に抑えている日本経済大。「ほこ×たて」の一戦は、13日15時ティップオフだ。

(市原和之)






