
第77回全日本大学バスケットボール選手権大会(インカレ)の男子決勝は、白鷗大(関東3位)が早稲田大(関東1位)を101対83で下し、2年ぶり3度目の日本一に輝いた。網野友雄監督は「インカレの優勝は格別」と満面の笑みを浮かべたが、9月に主将がBリーグ球団に移籍するなど苦難もあった。それらを全員で乗り越えての快挙だった。
一方、準優勝に終わった早稲田も、センター不在の“スモール集団”という中で快進撃を続け、大学バスケット界を盛り上げた。インカレ決勝戦の詳細、白鷗優勝の背景、選手コメントなどを一挙紹介する。
第4クォーターに突き放す
得意のラン&ガンで毎試合100点近くとる早稲田の攻撃を、堅守の白鷗がどう止めるか——。決勝前、ファンの間ではこの点に注目が集まったが、試合は意外にも点の取り合いとなった。
第1Q、主導権を握ったのは早稲田だった。司令塔・下山瑛司が持ち前のスピードで相手をかき回し、三浦健一、松本秦が3ポイントシュートを沈める。白鷗は「2ポイントシュートはOK。3ポイントを打たせない」作戦だったが、うまく機能しない。さらに留学生モンガ・バンザジョエル(202センチ)と、境アリーム(198センチ)がインサイドを固める中、早稲田の堀田尚秀が3本のオフェンスリバウンドをもぎ取る奮闘をみせる。第1Qは29対21で早稲田リード。
第2Q、白鷗が反撃開始。早稲田の弱点であるインサイドを中心に攻める。オフェンスリバウンドを量産し、得点につなげる。開始6分、早稲田の攻守の柱である三浦が痛恨の3つ目のファウルで一旦ベンチへ。この時点で36対36だったが、白鷗は一気に攻勢を強め、前半43対53とリードして折り返す。
第3Qは、「ハーフタイムに攻撃スタイルを確認し合った」という早稲田の流れに。堀田、松本が3ポイントシュートを決めると、この試合で競技引退を決めている4年生の高田和幸が驚異的な活躍を見せる。3連続で3ポイントシュートを決め、逆転に成功。その後、点を取り合い、72対74の白鷗リードで勝負は最終Qへ。
第4Q、早稲田は三浦や岩屋頼主将がいいタイミングでシュートを放つも、リングに嫌われてしまう。お互い我慢の時間帯が続く中、流れを引き寄せたのは白鷗の小川瑛次郎(2年)。1点リードの状況から、連続で3ポイントシュートを決める。味方の2点を挟み、さらに1本。試合時間残り約4分で77対89となり、大勢が決まった。最終スコアは83対101。
白鷗は境が20得点10リバウンドのダブルダブルを達成。モンガが13得点14リバウンド2ブロックショット、佐伯崚介が17得点、小川が14得点を記録。一方、57年ぶりのインカレ優勝を逃した早稲田は、松本が3ポイント4本を含む36得点、三浦健一が16得点を記録した。

早稲田大は弱点のインサイド突かれる
早稲田の倉石平HCが「あれだけゴール下を荒らされるとうちの良さは出ない」と語ったように、勝敗を分けたのはリバウンドだった。早稲田の28に対し、白鷗は65(うち、オフェンスリバウンド27)。白鷗はモンガ、境のほか、ともに198センチのネブフィ・ケルビンシェミリーとウィリアムス・ショーン莉音もおり、代わる代わる出場してゴール下を制圧した。
ディフェンスリバウンドを取った後、速い展開にして攻撃回数を増やす早稲田が、そのリバウンドが取れず、逆に相手の攻撃回数を増やしてしまったことは誤算だった。前半で3つファウルを犯し、一時ベンチに退いた三浦は「高さのバランスを保つために自分はずっと試合に出ていなければいけない立場。迷惑をかけてしまった」と肩を落とした。
伏兵の活躍も見逃せない。最終Q、白鷗小川は短時間に3ポイントシュートを3本決めた。
バスケではよく「Ⅹ(エックス)ファクター」という言葉が使われる。チームの格を担う選手ではなく、周囲の予想をいい意味で大きく裏切るプレイヤーのことで、前日6得点の小川はまさに決勝戦の「Ⅹファクター」だった。試合後、小川は「今日の試合は正直出られるかなとも思ったが、起用してもらった以上、積極的に打とうと思った。シュート練習にかけた時間は誰にも負けないので」と語った。
佐藤涼成の穴を「全員で努力して埋める」
インカレ優勝という最高の結果を出した白鷗だったが、今シーズンは苦難も多かった。スプリングトーナメント、新人戦、新人インカレのいずれも準優勝。8月末から始まる「関東リーグ戦」は、インカレに弾みをつけるためにも優勝したかったが、開幕直後、主将で司令塔の佐藤涼成が退部してBリーグ「広島ドラゴンフライズ」に入団することになった。当然ながら大黒柱の穴は大きく、リーグ戦は開幕から3連敗してしまう。
苦境に立たされたチーム。網野監督は「強いチームになるために全員でこの状況を乗り越えよう」と呼びかけ、新主将に佐古竜誠を指名する。
佐古は主力メンバーの中で唯一、スポーツ推薦ではなく、一般受験でバスケ部に入った異色の経歴。昨年まではBチーム所属だったが、地道な努力と守備スキルの向上で今季からAチーム入りした。その佐古の主将起用について、網野監督は「コミュニケーション能力が高くて、まとめ役になると思った」と明かした。
佐古は同じ4年生の佐伯らの力を借りながら、メンバーに積極的に声をかけていく。「どんなプレーが得意か、練習では何に取り組むべきか」。チームに活気が戻り、結束力も再び強まっていった。
チーム復活の背景に、“外野の声への反発心”があったことも見逃せない。内藤晴樹(3年)は「直接言われたわけではないですが、リーグ戦3連敗後、『涼成が抜けたから白鷗は弱い』と思われているだろうなと感じていました。同じポイントガードとして悔しかった。涼成が抜けたことをネガティブに見ている人もいるかもしれませんが、自分たちはそう捉えませんでした。穴は全員で努力して埋めよう、ステップアップできるチャンスと思っていました」と語る。
開幕直後つまずいたリーグ戦を15勝7敗の3位で終え、インカレのシード権を勝ち取った白鷗。司令塔を欠いた危機的状態からしっかりリカバーし、その後インカレで東海や早稲田を破って日本一を達成したことは賞賛に値する。インカレの表彰式で、背番号88の佐藤涼成のユニフォームを高々と掲げた佐古の勇姿は、多くのファンの脳裏に焼き付いた。
決勝戦後の白鷗大選手のコメント
●佐伯崚介(4年)
「最終学年での優勝はうれしい。2年時は脇(真大)さんのおかげで優勝できた。自分もそうなりたいと思っていた。網野さんからは『3&D』を極めろとアドバイス頂き、取り組んできた。その成果を決勝で出せたと思う」
●境アリーム(3年)
「今季は2位が多くて悔しかった。最後、みんなで頑張って1位取れたので良かった。自分たちがやってきたことを、決勝でもぶれずに出せたことが勝ちにつながったと思う」
決勝戦後の早稲田大選手のコメント
●岩屋頼主将
「決勝戦は観客の声援も大きくて、素晴らしい環境でプレーができた。白鷗はリーグ戦で2勝した相手というのは全く考えず、強い気持ちで臨んだ。ただ、しっかりスカウティングされて、僕らがやられたら嫌なペイントエリアでの得点、アタックを徹底して突かれた。最後は勝って終わりたかったので、悔しさが残った」
●高田和幸選手(4年)
「バスケは大学までと決めた中で、最後にああいうプレー(3連続3ポイントシュート)を見せられたことを誇りに思う。自分を信じてパスをくれた下山に感謝。3ポイントシュートの直前、フリースローを2本打って感覚をつかめたことが大きかった。3本目はどんな位置でも、どんなに遠くても、打てば入ると思った。リーグ戦からずっと調子が良いわけではなかったが、スタメンで起用し続けてくれた倉石さんには感謝しかない」
●三浦健一(3年)
「3Qで自分たちの流れをつかめたけど、4Qでまたインサイドゲームをされて突き放されたという印象。決勝では白鷗さんがすごい気合で来るというのはわかっていたけど、少し自分たちが引いてしまった。来年は最上級生になる。今の4年生に負けないくらい、プレーでも声でも引っ張っていきたい。よりハードに練習して、留学生に対抗できるようにしたい」






