東アジアの最強クラブを決める東アジアスーパーリーグ(EASL)の「EASL Champions Week」が1日、日環アリーナ栃木で開幕した。今回が初開催となる。Bリーグから参戦したグループBの宇都宮ブレックス(Bリーグ1位)は初日にTNTトロパンギガ(フィリピンPBA2位)と対戦し、99-66で快勝。2日目に登場したグループAの琉球ゴールデンキングス(Bリーグ2位)もサンミゲルビアメン(フィリピンPBA1位)に96-68で圧勝し、2チームとも幸先の良いスタートを切った。
同大会はBリーグ、PBA、韓国「KBL」における昨シーズンの優勝、準優勝チーム、チャイニーズ・タイペイ「P.LEAGUE +」の優勝チーム、新たに結成された中華圏を代表するベイエリアドラゴンズの計8チームが出場して初代王者を争う。3月1〜4日にAグループ、Bグループに分かれてグループリーグを行い、5日に3位決定戦と決勝を実施する。会場は3月1〜3日が日環アリーナ栃木、4〜5日が沖縄アリーナ。
目次
第2Qに堅守で32-8と圧倒、流れつかむ 宇都宮
宇都宮とTNTの一戦は序盤から両チームともスリーが高確率で決まり、競る展開。特にこの試合で28得点を挙げたTNTのジェイレン・ハドソンが高いスキルを見せて得点を量産した。しかし、第2Qに入ると宇都宮が持ち前の堅守を発揮。個人技に優れた選手が多い相手に対し、組織的に守ってこのクオーターを32-8と圧倒。完全に流れをつかんだ。
いい守りがオフェンスにリズムを生み、宇都宮はチームでスリーを44.1%の高確率で15本成功。特に遠藤祐亮は5本、グラント・ジェレットは4本とオフェンスを牽引した。最後まで守りが乱れる事なく、ホームで危なげなく勝利した。
日本代表帰りの比江島慎はスリー4分の0で9得点と得点面では少し寂しい数字に終わったが、チームトップの6アシストを記録。外国籍選手の登録が2人までというレギュレーションの中、竹内公輔も21分52秒出場して6リバウンドと気を吐いた。
スリー5本、17得点の遠藤「チーム変わってきている」
佐々宜央HCは序盤でシュートを決められたハドソンについて「選手たちはこれくらいであれば外すだろうと思って守っていましたが、やっぱり簡単にはいかないのが個人技の高い選手です」と高く評価。それでも第2Q以降に守りを修正し「もっとディフェンスの間合いを詰めて対策したことで、少しずつシュートが落ちていったと思います。全体的にリバウンドを取ることができ、良い試合になりました」と勝利を喜んだ。
昨シーズンBリーグ優勝の宇都宮だが、今季はこれまで20勝18敗で東地区5位となっており、チャンピオンシップ(CS)進出も危うい状況だ。2月にあった天皇杯全日本選手権の準決勝で千葉ジェッツに敗れたため、EASLのタイトルに対する思いも強いだろう。
指揮官は3日午後7時半からあるベイエリアドラゴンズとの次戦に向け「沖縄でのファイナルラウンドに進めるように、次もしっかり戦っていきます」と意気込みを語った。
17得点3アシストの活躍を見せた遠藤は、Bリーグとは異なる試合球に慣れるため、試合に向けてシューティング練習に多くの時間を割いてきたという。それを念頭に「そのおかげで気持ち的にもシュートタッチも良くできていました。相手は自分たちのプレーをあまり知らないと思っていたので、最初のインパクトがすごく大事だと思い、最初から積極的にシュートを打つことを意識し、それが入ってくれて良かったです」と振り返った。
現在のチーム状況に対しても好感触を示した。
「レギュラーシーズンの課題をこのブレーク期間に一人一人が見直して、自分が試合に出た時にどうすれば良い形になるかを考えながら練習してきました。それが今日の試合で形になり、チームが変わってきていることを実感することができました。もっと伸ばしていくことで今大会も、その後のレギュラーシーズンにもつながっていくと思います」
ゴール下制圧しファウルトラブル追い込む 琉球
2日目の琉球の初戦では、試合前に選手たちにとって嬉しいサプライズがあった。相手チームの選手が紹介された後、沖縄アリーナで行われるホーム演出が日環アリーナ栃木でも実施されたのだ。試合後、今村佳太は「特に今日の試合で嬉しかったのは、宇都宮さんのスタッフが自分たちのホームコートのような演出をしてくれたことです。同じBリーグのチームとして、ホーム感を出していただいたことで、すごく試合をしやすかったです」と感謝を述べた。
相手はフィリピン屈指の強豪で、サイズの大きい選手や個人スキルの高い選手も多いサンミゲルビアメン。特にこの試合で両チームトップの25得点を挙げた198cmのキャメロン・クラークには序盤から高確率でミドルシュートを沈められ、手を焼いた。しかし、琉球最大の武器であるインサイド陣が徐々に存在感を高め始める。
ジャック・クーリーとアレン・ダーラムが持ち前のフィジカルの強さを生かしてゴール下を攻め続け、前半だけで相手ビッグマン3人のファウル数がいずれも3〜4つに。優位に立ったインサイドで着実に加点し、21点リードで前半を折り返した。後半は個人技で得点されたり、相手のゾーンディフェンスの攻略に手こずったりして流れが停滞する時間もあったが、今村や岸本隆一、小野寺祥太のスリーも要所で決まり、28点差の大勝につなげた。
また、この試合ではフィリピン出身でアジア特別枠のカール・タマヨがプロデビューを果たした。第1Q途中で初めてコートに立つと、202cmの大柄ながらプレーの幅が広い万能性を生かし、単独速攻からのレイアップで初得点。守備でもゴール下で相手ビッグマンに押し負けない体の強さを見せた。外国籍選手の登録が2人までの中、日本代表の試合から再合流した渡邉飛勇も速攻からのダンクや高いブロックで存在感を発揮した。
琉球は次戦、3月4日午後7時から富邦ブレーブス(チャイニーズ・タイペイ)とグループリーグ第2戦を行う。
プロデビューのタマヨは4得点2R「夢が叶った」
試合後の記者会見で、桶谷大HCは「選手たちがワンポゼッションごとに丁寧にバスケをしてくれていた。相手がゾーンディフェンスになった時に流れを崩してしまった部分はありますが、全体として主導権を握りながらバスケができた。相手のビッグマンに対してハードワークして、攻守でアドバンテージを取れました」とゲームプランを遂行した選手たちに賛辞を送った。
1グループに4チームずつが割り振られているが、グループリーグでは2試合ずつしか行わないため、直接対戦しないチームと2勝同士で並んだ場合は得失点差で決勝進出チームが決まる今大会。それを念頭に「一番ダメなのはまだ勝ってもいないのに点差のことばかりを考えて自分たちのやるべきことにフォーカスできないことでした。じゃないと負けてもおかしくない相手でした。集中して試合に臨んだからこそのこの点差は素晴らしいと思います」と続けた。
タマヨはフィリピン代表でも活躍し、母国では期待の若手として注目されていることもあり、試合後の取材ではフィリピンメディアも含めて多くの取材陣に囲まれた。プロデビューの感想を問われると「若い時からの夢が叶いました。プロとしてプレーするのはプレッシャーもありますが、それ以上に国際的な舞台でプレーすることがとてもうれしいです」と満足げな表情を浮かべた。
プレータイムは8分50秒で、スタッツは4得点、2リバウンド。得意のスリーは3分のゼロだったが、きれいなシュートフォームは高い得点力を備えていることを印象付けるには十分だった。短時間の出場ながら渡邉と共にリバウンド争いやディフェンスで体を張り、攻守の主軸であるクーリーとダーラムが休む時間をつくることにも貢献した。
囲み取材中、常に穏やかな笑顔を浮かべて質問に応じていたタマヨ。まだチームに合流してから半月ほどのため、まだチームのシステムにフィットしていない部分も多いが、本人は現状に対して前向きな気持ちで臨んでいるようだ。
「キングスのシステムは優れていますし、このチームでプレーすることが楽しいです。今大会で優勝することが重要だと考えていますし、そのためにもシステムに馴染むことを優先し、今は努力しています。初めて試合に出て自信を得ることもできました。もっとシュートを決められるようにどんどんフィットしていきたいです。日本の文化にも順応していかないといけませんが、コーチやチームメートがいろいろ教えてくれるので助かっています」
Bリーグではジョシュ・ダンカンもいるため、大幅なサイズアップに成功した琉球。EASL、天皇杯、Bリーグの”3冠”を狙うチームにとって、大きなピースが加わったと言えるだろう。
(長嶺 真輝)
EASLの1日目、2日目の結果
初日と2日目のその他の試合結果は以下。
【グループA】安養KGC(KBL2位) 94-69 富邦ブレーブス(P.LEAGUE +1位)
【グループB】ソウルSKナイツ(KBL1位) 92-84 ベイエリアドラゴンズ
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