
チームにとって今シーズン最大の山場となる“勝負の3月”に突入するのを前に、Bリーグ西地区首位の琉球ゴールデンキングスが2月27日、沖縄サントリーアリーナでメディア向けの公開練習と記者会見を行った。
琉球は3月1、2の両日に長崎ヴェルカとの連戦でリーグ戦を再開し、7〜9日にはマカオで東アジアスーパーリーグ(EASL)のプレーオフ「ファイナル4」に参戦。15日には東京・国立代々木競技場第一体育館で行われる第100回天皇杯全日本選手権決勝でアルバルク東京と対戦する。
タイトルの懸かった大一番の合間の12日には、西地区でトップ争いを繰り広げる島根スサノオマジックとのホーム戦もあり、気の抜けない戦いが続く。
3月を通して見ると、ホームの沖縄や海外のマカオを含めて8都市で計13試合を戦う琉球。“超”が付くほどの過密日程の中、2冠を奪取するために必要なコト、そしてBリーグでも白星を積み重ねていくために求められる戦い方とは…。記者会見に登壇した桶谷大HC、小野寺祥太キャプテン、岸本隆一の言葉から探る。

EASLは「Individual」をスカウト、試合中のアジャストが鍵
EASLのファイナル4にはBリーグの琉球と広島ドラゴンフライズ、チャイニーズタイペイのニュータイペイキングス、桃園パウイアンパイロッツの4チームが勝ち進んだ。予選のグループBを1位通過した琉球は、7日の準決勝でグループA2位の桃園と対戦する。
3月5日にはBリーグのアウェー広島戦もあり、長崎戦からは一度もホームの沖縄に戻らずに各地を移動する。厳しい日程を念頭に、桶谷HCはファイナル4を以下のように展望した。
「スケジュール的にタフな部分はありますが、ファイナルラウンドでの試合で得られるものはたくさんあると思います。まずは金曜日(7日)の試合をしっかり勝って、決勝に進出し、優勝したいです。いい流れに乗り、またレギュラーシーズン、そして天皇杯に向けて走っていきたいなと思っています」
直前に広島と対戦することについても「フィジカルなチームである広島とハードなゲームをしてEASLに入れるのは、いいテストになると思います」と前向きに捉えている。天皇杯を合わせれば、この1週間で二つのタイトルを取れるチャンスを有しているのは琉球のみ。「その価値をちゃんと理解して、プライドを持って戦いたいです」と気を引き締める。
アジア各国のクラブチームが参加するEASLでは、初顔合わせの相手と対戦する機会は多い。準決勝でぶつかる桃園も同様だ。指揮官は「individual(個人)」という英単語を使いながら、初対戦の相手に勝ち切るポイントに触れた。
「EASLは相手のプレーセットを手厚くスカウティングするというよりも、Individualのところをスカウティングしながら、ゲームの中でアジャストして試合をつくっていくことが一番大切だと思っています。Individualのところはみんなで共通認識を持って戦っていきたいです」
試合中にいかに相手に対してアジャストしていくかは、岸本も海外チームと対戦する際のキーポイントに挙げる。
「Bリーグでは、ある程度戦い方を分かり合った上で戦っていますが、海外のチームはどうしても試合の中で予期せぬことが起こりやすいので、そこに対して自分たちがいかにアジャストしながら戦えるかは大きなキーになると思っています」
EASLは3月8日の中日を挟み、9日に決勝と3位決定戦を行う。賞金は優勝が100万USドル(約1億5000万円)、準優勝が50万USドル(約7500万円)、3位には25万USドル(約3700万円)。

天皇杯、昨年の“大敗”を払拭できるか
天皇杯については、琉球は3年連続での決勝進出となる。ただ、2年連続で千葉ジェッツに敗れ、まだ優勝経験はない。特にさいたまスーパーアリーナで行われた昨年は69ー117という歴史に残る大敗を喫した。
今回の準決勝の三遠ネオフェニックス戦は体調不良で不在だった桶谷HCは、天皇杯に向けた意気込みを問われ、こうコメントした。
「前回の決勝は大敗したので、まずはそれに対してリベンジをしたいです。今シーズンの相手は千葉Jではありませんが、決勝でキングスらしい、いいバスケットをしたいです。僕自身は準決勝は出られませんでしたが、決勝に導いてくれた仲間のためにも一緒になって決勝を戦い、優勝したいです。今シーズンの決勝に対しては、すごく期するものがあります」
昨年の悔しさを晴らしたいという思いは、キャプテンの小野寺も同じだ。「昨シーズンのファイナルは良い思いができなかったので、またファイナルに出場できることは本当にうれしいです。天皇杯というタイトルを沖縄に持って帰ってきたいです」と気合を入れる。
Bリーグを合わせると、この4年間でファイナルの舞台は実に6回目となる。ただ、これまでは2022-23シーズンのBリーグファイナル以外は苦杯をなめており、その分、頂上決戦の難しさは肌身に染みている。だからこそ、決勝を戦う上での覚悟も強い。
「1ポゼッションごとの大切さは感じています。ファウルの使いどころだったり、ターンオーバーの質だったり、そういった部分ができないと一気に10点、20点離れることもあります。引かずにアグレッシブにやっていければ、いい状況判断ができると思います。チームとしても、個人としても、その部分を意識してやっていきたいです」
相手のA東京とは2月にアウェーで連戦を行ったばかり。1戦目は67ー87で完敗した一方、2戦目は83ー58で快勝してバウンスバックを果たした。
両チームとも強度の高いディフェンスとリバウンドを強みとしており、岸本は特に「キーになるポイントはリバウンドだと思います」と見る。現在、Bリーグのリバウンドランキングは琉球が平均43.8本でトップ、A東京が39.4本で4位につける。
昨シーズンのチャンピオンシップ(CS)準々決勝もそうだったが、琉球とA東京の対戦はロースコアの重たい展開になることが多い。リバウンドを制して相手にセカンドチャンスを与えず、さらに自分たちのポゼッションを増やした方が優位に立つはずだ。
決勝会場となる国立代々木競技場第一体育館は「中立地」として設定された場所だが、A東京がBリーグでホーム戦を行うアリーナでもある。琉球にとってはアウェーのような雰囲気になる可能性もあるが、岸本は意に介さない。
「もしかしたらアウェーっぽい空気感はあるかもしれませんが、逆境に立ち向かってきたのがキングスです。どこが会場であろうと、自分たちが心を込めてプレーをすることによって、会場の空気は自分たちのものにできると思っています。僕たちはそうやって戦ってきて、何度も勝ちをもぎ取ってきたので。いかに自分たちの空気感でやれるかというところに集中してやっていきたいです」
第100回の節目となる大会で、三度目の正直を果たすことができるか。注目だ。

小野寺「誰が出てもインテンシティ高くプレーできる」
3月は水曜日がある4週全てて「水曜ゲーム」があり、中1〜3日を挟んで13試合ものゲームをこなす琉球。飛行機で8都市を移動する身体的負担が大きい中、EASLと天皇杯という二つの大一番を終えた後も西地区3位の京都ハンナリーズ、中地区3位のシーホース三河、東地区2位の群馬クレインサンダーズなど強豪との対戦が続く。
岸本は休む間もなく巡ってくる試合を戦う上で、大事なメンタルのあり方をこう語った。
「タイトルを取りに行くことはもちろんですが、その前の段階でBリーグも再開しています。そこ(タイトル)に意識を向け過ぎないことも大切です。Bリーグの始まりである長崎戦での戦い方が、EASLやその後のシーズンにもつながっていくと思うので、いい意味で目先のことだけを考えて戦っていきたいです」
タフなスケジュールを乗り越えるため、キャプテンである小野寺は総力戦で挑むことを掲げる。
「コンディションをどう保つかというよりも、1試合1試合を大切にして、長崎戦から戦っていきたいです。キングスは誰が出てもインテンシティを高くプレーできるので、チームとして戦っていけたらなと思います」
二つのタイトルを含め、Bリーグにおいても大きな山場となる3月。琉球ファンにとっては、一時も目の離せない1カ月間がもうすぐ始まる。

(長嶺真輝)