
Bリーグ西地区の琉球ゴールデンキングスは10月25、26の両日、ホームの沖縄サントリーアリーナに東地区の群馬クレインサンダーズを迎え、2連戦を行った。
初戦は持ち味のリバウンドで接戦に持ち込まれ、セカンドチャンスポイントを22点奪われて83-89で敗北。一方、2戦目は全体としてリバウンドへの意識が向上し、各選手がバランス良く得点を決めて85-81で勝利した。通算成績は5勝4敗となり、西地区6位につける。
脇真大、ケヴェ・アルマ、小針幸也と多くの主力を欠く中、強豪の一角である群馬を相手に星を分けたことは及第点と言えるだろう。手薄になったセカンドユニットの時間帯に流れを持っていかれる場面こそあれど、若手の崎濱秀斗らを含めてチャレンジをしながら経験を積んでいる。
この2試合では32得点、29得点を挙げたヴィック・ローがオフェンスをけん引。一方、ディフェンスではチーム全体のサイズ感が小さくなっている中で松脇圭志と佐土原遼のフィジカルの強い日本人選手の貢献が目立った。外国籍選手に対して強いプレッシャーを仕掛け、チームを下支えした。
27日には外国籍の一人であるアルマが退団するという衝撃のニュースが発表されたため、松脇と佐土原の2人がいかにディフェンスで体を張り続けられるかは、今後より重要な要素になってくるはずだ。

外国籍のエース級を守る松脇、その秘訣は…
まずは松脇だ。
群馬最大のスコアラーであるトレイ・ジョーンズに主にマッチアップした。2試合とも二桁得点を挙げられはしたが、ローと共にかわるがわるマーク。積極的に体を当て、足と高さを生かしたローとは異なる守り方でプレッシャーをかけた。
22日にあった東アジアスーパーリーグ(EASL)でもメラルコ・ボルツ(PBA/フィリピン)のエースであるロンデイ・ホリス・ジェファーソンをマークしていた。昨シーズンのBリーグファイナルでも宇都宮ブレックスのD.J・ニュービルとマッチアップし、効果を発揮していたことも記憶に新しい。
自身の身長は185cm。ジョーンズは196cmで、ジェファーソンは198cmだった。自身より高さがあり、得点力のある外国籍選手を守る際にどんなことを意識しているのか。
「僕らがついた方がヴィックの負担を減らせるし、相手はどちらかというと小さい選手の方が嫌なんじゃないかとも思います。そこで体を当てたり、プレッシャーをかけたりして、少しでも波に乗らせないようにしています。乗らせたら怖い選手についているので、少しでもシュートを落とさせる意識でやっています」
オフボールディフェンスの意識も高い。「簡単にボールをもらわせないところからプレッシャーをかけるのが必要だと思っています。簡単にもらわせると相手のリズムになる。体を当てて少しでもボールを持つのを遅らせたり、少しでも高い位置でもらわせたりすることは僕らができることだと思うので、意識しています」。
この2試合ではチーム全体としてディフェンスでスイッチを使う場面も多かった。松脇は読みにも長けており、カバーやローテーションでも効果的な動きを見せていた。
オフェンス面では武器の3ポイントシュートの成功率がまだそこまで上がってきてはいないが、「プレッシャーに対して受け身になったら自分たちに流れが来ないので、どんどんチャレンジしていきたいと思っています。空いたらシュートを狙うというのは意識しています」と話す。得点面でもさらに存在感を増していきたいところだ。

スイッチディフェンスの連動を支えた佐土原
佐土原のディフェンス面での貢献も見逃せない。
この2連戦ではチーム全体でスイッチを多用したため、インサイド付近で高さのミスマッチが頻繁に起きていた。そんな中、佐土原は相手の日本人シューターをマークする時間帯が多かったが、ガード陣が相手ビッグマンに背負われた時、佐土原が素早くフォローしてボールを離させる場面が目立った。
2戦目の後、本人にディフェンス面での意識を聞くと、以下のように答えた。
「今日の試合前にも『スイッチは使っていこう』という話はありました。マークした細川選手や谷口選手はコーナーで待っていることが多く、自分が一番ヘルプに行きやすいポジションにいたので、特に意識をしたというわけではなく、チームのルールの中でヘルプに行ったというだけです」
「チームルールの中で」という話ではあるが、ファイティングイーグルス名古屋の頃から4番ポジションを担っていたため、インサイドでのディフェンスは「やり慣れている部分もあります」と語る。昨シーズンに群馬と対戦した時はヨハネス・ティーマンとマッチアップしたことを念頭に「そういうところでも自信はあったので、『嫌だな』という感じはしなかったですね」と振り返った。
桶谷大HCも高く評価する。
「上でスイッチが起きた時、佐土原が下にいてくれるだけでミスマッチがミスマッチではなくなります。だから上の選手はスイッチをしやすかったんじゃないかなと思います。今日はジャックとアレックスが出てる時に、ブラックシアー選手のところでうまくスイッチを使ったり、ティーマン選手がポップした時とかにもスイッチが出たりしました。佐土原が早い段階から、小さい選手から(相手ビッグマンの)いい吸い込み方をしてくれました」
26歳の佐土原。指揮官は「個人成績はFE名古屋で上がりましたが、彼はまだ若いので、もっと成長しないといけない選手です。キングスという『勝たないといけない』『結果を残さないといけない』というチームに来て、プラスをどう増やしていくか。点を取ることだけが彼の評価ではありません。プレータイムを伸ばしながら、よりチームを勝たせられる選手、5対5がうまい選手になっていってほしいです」と期待した。

「苦しい状況が続く」中で活躍が必須に
佐土原に関しては、群馬との2試合目で今シーズン自己最多の11得点を記録。3ポイントシュートを3本立て続けに決めたり、ディフェンスリバウンドを掴んでそのまま自身で速攻につなげたりするなど、本来の強みであるプレーの幅の広さを示した。
琉球に加入した今シーズンは開幕からなかなかチームにフィットできずに苦しんでいたが、9試合を消化した今、好感触をつかみ始めている。
「チームとコミュニケーションを取って、やっとうまく循環できるようになってきました。前までは悩みながらプレーしていた部分もありますが、キングスの中での自分の役割が少しずつ明確化してきました。それがスタッツに表れてきているなというのは、ここ3試合ですごく感じています。このまま続いていければ、これくらいのスタッツはコンスタントに記録できるかなと思っています」
インサイドでも得点ができる体の強さが最大の武器ではあるが、昨シーズンの3ポイントシュート成功率は35.7%と高い。直近4試合は3ポイントシュートを2〜4本放ち、アテンプト自体が増える傾向にあり、開幕直後に見られた迷いが消えている。
「開幕戦の横浜戦や滋賀戦もそうですけど、負けた試合は自分が打てるところで打たないでターンオーバーをする場面が目立っていました。それだとリズムに乗り切れません。日本代表でも打てるところで打った方がアピールになるので、積極的に打っていきたいと思います。ここ数試合は成功率がなかなか上がらず、間を空けられてしまう部分もあるので、そこは桶谷HCとも話して『打ち続けてほしい』と言われています。空いたら打つことは意識しながらやっていきたいです」
主力が揃わず、非常事態が続く琉球。2試合目の後、コート中央でマイクを握った桶谷HCも「これからも苦しい状況が続く」と口にしていた。特に206cmの高さと優れた身体能力を生かしたリバウンド、ディフェンスでのハッスル、高確率の3ポイントシュートなど多方面での活躍が目立っていたアルマが退団した影響の大きさは計り知れない。
佐土原、松脇という攻守で存在感を発揮できる2人の活躍は、琉球が今後白星を増やしていく上で欠かせない要素になるだろう。

(長嶺真輝)






