ディージェイ・ニュービルの3Pで大逆転勝利の大阪エヴェッサ、来季につながる終盤戦に
逆転弾を沈めた大阪エヴェッサのディージェイ・ニュービル(左)©Basketball News 2for1
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 Bリーグ1部(B1)は4月21日から23日にかけて各地で第34節を行い、西地区5位の大阪エヴェッサはホームのおおきにアリーナ舞洲(大阪市)で同8位の滋賀レイクスと対戦。第1戦を82—76と勝利し、翌第2戦では83—82で残り4.6秒にディージェイ・ニュービルが逆転3Pを沈め、2連勝を飾った。

 第2戦、試合は飯尾の得点からスタート。第1クォーターはインサイドで存在感を発揮したショーン・オマラが14得点を上げる活躍を見せた。しかし、前半のうちに好調のオマラが負傷退場する事態になり大阪にとって大きな痛手となった。

 後半は、リードチェンジを繰り返しながらも徐々に滋賀に流れが傾き、第4Q残り1分44秒にはこの日最大の9点のリードを許してしまう。しかし、最後まで戦い抜く姿勢を見せた大阪は、ここからニュービルのダンクと3P、木下誠のジャンパーで7得点を奪い、残り38秒には80—82と1ポゼッション差まで猛追。そして、最終盤の残り4.6秒、ニュービルがトップから3Pを沈め、83—82で見事に大逆転勝利を決めた。

 この試合では、ニュービルが27得点9リバウンド7アシスト、木下が14得点2リバウンド、オマラが14得点3リバウンド2アシストを記録。ケガ人が続出する状況下でも、ホームで貴重な連勝を収めた。

大逆転勝利に喜ぶ大阪のメンバー©Basketball News 2for1

滋賀戦勝利に導いたニュービル「本当に素晴らしい気持ち」

 第4Q、残り4.6秒の場面でビッグショットを沈めたニュービル。試合後には嬉しさと安堵が入り混じった表情で記者の質問に答えた。

 「(最後の3Pが入って)本当に素晴らしい気持ちでした。今日(第2戦)のようなタイトな試合展開の中で、自分が決めないといけないところでしっかりと決め切れたことでファンの皆さんも盛り上がってくれましたし、チームメイトも本当に喜んでくれて、このようなシュートを決めることができて素晴らしかったと思います」

 マティアス・フィッシャーヘッドコーチ(HC)も逆転へと繋がるビッグプレーを振り返り、「本当に彼はリーダーとしても、一番のスコアラーとしてもチームの中で本当に大きな役割を担っている選手で日頃から信頼している存在として証明してくれたと思います」とニュービルへの信頼と称賛を口にした。

 ラストプレーについてHCの指示があったものだったのかと問われると、

 「あのポゼッションに対する指示があったかというとそうではなく、いつも通りディージェイがハイピック&ロールを使うということはもうこのチームの暗黙のルールというか、特にコーチングがなくてもみんな共通意識を持っている。

 あのような場面でディージェイが打てると思ったら、どこからでも打つという意味では、常に青信号を出している選手です。また、彼が気持ちよく打てたときはどこからでも入るような選手なので、そこに対してチームメイトは疑問を持っていないですし、日頃からの信頼があの場面でも出て、やっぱりしっかりと決めてくれた。いい判断だったと思います」とチーム全体からの信頼の上でのニュービルのショットであったことを明かした。

記者会見で話すマティアス・フィッシャーHC©Basketball News 2for1

オマラが途中退場も“全員リバウンド”で奮闘

 この試合ではゴール下での献身的なプレーでオマラが第1Qに14得点(フィールドゴール成功率100%)と気を吐き、チームに勢いを与えた。フィッシャーHCも「忘れてはいけないのがオマラの活躍です。彼のもたらしてくれた勢いがなかったら、彼がいなくなった後もこのような試合運びができなかったので、そういう意味でも感謝を述べたいと思います」とオマラの活躍に言及。しかし、好調のオマラが2Qから不在という事態となり、すでにカイル・ハントをケガで欠いている大阪にとってはインサイドで不利な状況をどう打開していくかが勝利へのポイントとなった。

ショーン・オマラ(右)の不在を全員でカバーした©Basketball News 2for1

 この非常事態にフィッシャーHCは「全員でリバウンドを取る」ことを強調して選手にゲームプランの変更を伝えたという。

 「ハーフタイムでは『リバウンド』が大きなトピックでした。これから彼(オマラ)なしでリバウンドを取るために、ビッグマンだけの責任ではなくて、コートに出ている5人全員の責任になるので、『重い責任感』を持ってボックスアウトをするように選手たちに話しました。

 リバウンドが取れないとこれからの試合展開が難しくなるので、(ポゼッションの)最後の瞬間には5人全員がペイントに入っているぐらいリバウンドに飛びつく、そういう状況を作ってほしいという話をしました。この試合だけではなくリバウンド争いは勝たないといけない要素の一つなので、ミスマッチもあったのですが、うちの選手はしっかりとそれに答えてくれて、何とか解消してくれてリバウンドも取り切ってくれたと思います」

 結果として、滋賀の35リバウンドに対して大阪は33リバウンドと健闘。9リバウンドを獲得したニュービルを筆頭に、オマラを欠いた後半のリバウンド争いをチーム全体で戦い抜いたのだった。

お互いの信頼感が終盤の勝負強さに

 第4Qの残り1分44秒で9点をリードされる厳しい状況からも、逆転して勝利をつかみ取った大阪。

 試合の最終局面で勝ち抜く強さの要因について、フィッシャーHC、竹内譲次、ニュービルはそれぞれ三者三様に語る。

 「大事なのがロッカールームの雰囲気だと思うが、今日の勝利の後のロッカールームの雰囲気は本当に素晴らしくて、全員が笑顔で、お互いのことを『すごいすごい』と鼓舞したり、拍手していたり、本当にいい雰囲気でした。こういう雰囲気がないとこういう(接戦の)試合を勝ち切ることが難しくなると思うので、これからもいい雰囲気を持って、試合に臨んでいきたいと思います」(フィッシャーHC)

 「うち(大阪)はプレーオフ(チャンピオンシップ)もなく、滋賀さんは降格が関わっている中で、向こう(滋賀)のこの試合にかける思いをすごい感じた。ただやっぱりそれは相手のことであって、僕たちは自分たちの仕事に集中しなきゃいけないというのをみんな共通理解として持っていたので、最後の最後までそれを持ち続けた結果、こういう結果(勝利)になったんだと思います」(竹内)

 「チームの中でお互いを信頼しているというところが一番の強さだと思います。ああいった差し迫った場面でタイトゲームになったとしても、お互いを信頼しているし、勝つこと信じています」(ニュービル)

 ケガでメンバーが揃わない中でも同じ方向を向いて勝利を目指していく姿勢や、お互いをリスペクトし合うムードがいい結果につながっていることは間違いない。

©Basketball News 2for1

残り4試合 竹内譲次「大阪を代表するチームであるという誇りを持って戦う」

 今季、上位4チームが混戦状態となっている西地区ですでにチャンピオンシップ(CS)出場の可能性はなくなっている大阪。レギュラーシーズンは残り4試合が残されているが、CSにも降格にも絡まないポジションとなっている。キャプテンの竹内は終盤戦に臨むモチベーションについてこう語る。

 「うちのチームは残念ながら早いところでチャンピオンシップの目がなくなってしまったんですけど、みんなが一つの『勝ち』に今すごく貪欲になっていますし、こういう状況でも相手どうこうではなく、自分たちがどういう態度でゲームに臨むのかというのを気持ちとして持っていて、そういったところが厳しい状況でも勝ち切れている要因だと思います。

 正直、はたから見れば消化ゲームかもしれないですが、会場まで来てくれるファンの方たちのためであったり、自分たちがどういう集団であるかというのを見せる機会でもあると思うので、スコアももちろん勝ちも大事です。厳しい状況でも諦めない姿勢であったり、あとは大阪を代表するチームであるという誇りを持って、僕だけじゃなくてチーム全員がそういう気持ちを持って戦おうと思います」

記者の質問に答える竹内譲次©Basketball News 2for1

 レギュラーシーズンも残り2節。次節は4月29–30日にアウェー、沖縄アリーナでの琉球ゴールデンキングス戦を控える。今シーズンの対戦成績は2勝0敗と勝ち越しており、西地区優勝が掛かった相手の琉球にとっても負けられない戦いとなるが、大阪は4月に入ってからは琉球をはじめ、川崎や島根、名古屋DなどCS出場が確定しているクラブに対し白星を重ねている。今シーズンは指揮官も代わり、序盤戦こそ苦戦する試合も見られたが、ここにきてチームがかみ合ってきているのは来シーズンに向けて大きな収穫といえる。残り4試合でも勝利を重ね、来シーズンはCSの舞台に返り咲くことを期待したい。

(田名 さくら)

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