長いBリーグのレギュラーシーズンも残り1か月。各地区の上位にいるチームはチャンピオンシップ(CS)のシード順位を争うなか、先週末は中地区優勝を狙う川崎ブレイブサンダースと横浜ビー・コルセアーズが直接対決を繰り広げ、川崎が2連勝で首位の座を守った。
横浜BCが2つ取っていれば順位が替わり、かつ2チームが同じ勝率で終わってもタイブレーカーで横浜BCが上位にくるかもしれないという重要なシリーズだったが、川崎がそれを許さなかった。結果、川崎(33勝17敗)は横浜BC(30勝20敗)に対して3ゲームの差をつけ、地区優勝へ近づくこととなった。
地区優勝をすれば少なくともCSの1回戦をホームで戦うことができることもあって、このシリーズは大きなものだった。とはいえ、川崎がこのシリーズに入るにあたってそこへことさら気持ちを強く向けたわけではなかった。向けたのは、勝つこと、シーズン最終盤へ向けてより良い形を作り上げていくことだった。
神奈川ダービー連勝 2位横浜ビー・コルセアーズに3ゲーム差
「いやもう、一つ一つです」
この2連戦へ向けての準備段階でチームにははっぱをかけたのかと問うと、川崎の佐藤賢次ヘッドコーチはそう答えている。
「チームに対しては、とにかく目の前のことを一つひとつやっていくだけ。順位とか他のチームとかいろいろありますけど、もうやれることをやるしかない。今、集中することを集中するしかないと言っていますし、そういうふうに持っていこうと思っています」
Bリーグ初年度には準優勝を果たし、天皇杯でも2度戴冠しているチームにとって、見据えるのは悲願といっていい初のリーグ優勝だ。昨シーズンは初年度以来のホームでのCS開催権を得てセミファイナルまで進出するも、最終的にリーグ優勝する宇都宮ブレックスの前に屈し、ファイナル進出を逃した。
「去年も一昨年もチャンピオンシップで悔しい思いをしているなかで、あそこ(CS)で3週間、どうやって勝ち上がっていくんだというところが最終目標なので、チームに対してはそこへ対する1個1個としかいわないです、あえて。(選手)個人としてはそれぞれ思いがあると思いますけども、大事なのはチームとしてどういう思いで、どういうものを共通理解として持って臨むかということです」(佐藤HC)
河村勇輝欠く相手に反撃許すも前半のDF「最も大きな収穫」
2連勝を収めても川崎の面々が特段、喜びを顕にしたわけでなかったのにはいくつか理由があっただろう。
一つは、初戦で最大18点、2戦目で同21点と一時大差をつけながら横浜BCに反撃を許し、最後は辛勝となってしまったことだ。また、横浜BCが河村勇輝(2日の滋賀レイクスとの試合で右大腿二頭筋損傷、全治4週間程度と診断された)を欠いたことも、川崎には有利に働いた。PGながら今シーズン、周囲の予想以上に得点力を向上させ、ここまで平均19.7得点(B1全体6位)、アシスト8.4(同1位)を挙げるなど、ボールハンドラーとしてもシューターとしても中核の役割を担う彼の不在で、川崎はディフェンスでのゲームプランが立てやすくなったはずだ。
横浜BCはファストブレークからの得点が多く、3月15日のホームでの川崎戦ではこの形から18得点しているが、8日の試合ではわずか6得点。9日の試合でも最終的には10点を献上するも、前半では5得点に抑えており、総じて得意な形を封じられている。川崎は今回の2試合を通じてオフェンスリバウンドを取りにいくことよりもディフェンスの戻りを優先するプランで臨んでいたようで、これが奏功した。2試合の前半のスコアを見てもそれが顕著で、川崎は横浜BCをそれぞれ27点、29点と封じた。
横浜BCの青木勇人HCは9日の試合後「この2試合、(川崎が)オフェンスリバウンドをぜんぜん取りに来てないなというのはあって、ファストブレークがすごく出しづらいなとは思っていました」と述べている。その口ぶりから判断すると、川崎の対応はやや想定外だったのかもしれない。
また、今シーズンの川崎は週末の連戦を2つとも取ることがなかなかできないでいた。佐藤HCは初戦の勝利の翌日は相手がやりかえしてくるために苦しんでしまうと要因の一端を話したが、今回の横浜BCとのシリーズではそこを意識しつつ、2戦目も出だしから強度の高いディフェンスを敷くことでペースを奪うことに成功したことを「もっとも大きな収穫だった」と振り返った。
「(1勝1敗に終わった4月1、2日の)大阪(エヴェッサ)の試合でもそこで負けていたので、乗り越えられたのは大きかったです」(佐藤HC)
ただ、上述した通り大差から追い上げを許した中身を鑑みると、横浜BCとは2連勝という結果ほどの差があるようには思えなかったし、川崎もマット・ジャニングという主力を欠いたとはいえ、河村抜きの横浜BCにここまでの試合をされたことで一抹の不安を残したとも言える。
CSの1回戦で、川崎と横浜BCが対戦する可能性はかなりある。その際には河村も、また同様に故障で長く戦線離脱しているキング開も復帰しているはずだ。
篠山竜青は手応え「確実に成長している」
「ほっとしました」
川崎のベテランPG、篠山竜青はそう正直な気持ちを吐露した。
「(CSで当たることを考えると)簡単に負けちゃいけないと思ったし、ちょっとでも苦手意識をとどろきでやると(勝てない)というような印象を与えなきゃいけないなという気持ちではやっていましたけど、やっぱり向こうも力も勢いもあるチームなので、簡単なゲームにはならなかったかなとは思っています」
PG藤井祐眞もこの連勝を価値あるものだとしつつ、もしCSで再び横浜BCと対戦するならば「怖い」存在だと素直に認めている。
「怖いです。本当にすごくいいチームですし、ディフェンスもハードですし。ここに河村選手が戻ってくる可能性が高いですし、チャンピオンシップはまた別のゲームになると思っているので、僕らもしっかり気を引き締めて戦いたいと思っています」
一方で、けが人が複数出るなどもあってシーズン序盤から試行錯誤を繰り返し、なかなかリズムをつかむことができずにここまで来た川崎だが、篠山は横浜BCの終盤の猛攻をしのいで勝ち切ることができたところに一定の評価をしている。
「自分たちのリズムが悪くなって相手にそれが行ったときに、最低限、どれくらい踏ん張れるかというところかなと思っています。シーズン序盤だったらこの(9日の)試合も落としていると思うんですけど、なんとか踏ん張りきれるようになってきているというのは、確実に成長しているところだと思うし、もうちょっと傷口を広げずにこちらにリズムを持ってこられる踏ん張り、辛抱強さみたいなものが続くとさらに良くなるんじゃないかとは思います」(篠山)
ポストシーズンを見据えた川崎が、ここからどのように戦い、調子を上げていくだろうか。藤井がここのところ良いプレーを見せており、さらにジャニング不在が来る危機感からか、PG/SG納見悠仁が得点面で存在感を見せつつある。
外国籍選手が目立つ印象のあるチームだが、CSを勝ち抜いていくには日本人選手たちの活躍は必須だ。そこも踏まえて、残りのシーズンを注視したい。
(永塚 和志)