
Bリーグ西地区の琉球ゴールデンキングスは10月11日、ホームの沖縄サントリーアリーナに東地区のアルバルク東京を迎え、83-68で勝って今季初白星をつかんだ。翌12日も82-76で2連勝し、通算成績を2勝2敗の勝率5割に戻した。
1週間前のBリーグ開幕2連戦、10月8日の東アジアスーパーリーグ(EASL)開幕戦を合わせ、新シーズンに入ってから3連敗を喫していた琉球。4シーズン連続でチャンピオンシップ(CS)ファイナルに進出していた常勝チームが厳しいスタートを切っていただけに、この2勝はチーム、ファンにとって大きな価値を持つはずだ。
内容を見ても、これまでの3試合に比べて明らかにディフェンスのマインドやチームの一体感が増した印象だった。持ち味であるディフェンスで我慢をしきれていなかったこれまでの戦いぶりを好転させる上で、A東京との連戦前に一つのきっかけがあったようだ。
小野寺、穂坂AC、松脇…思い共有して一体感増す
A東京との初戦を翌日に控えた10月10日、試合中は熱気で包まれる観客席ががらんと空いた沖縄サントリーアリーナのメインコート。琉球の選手、コーチ陣が集まり、普段とは一風変わった練習前ミーティングを開いた。
小野寺祥太、ジャック・クーリー、松脇圭志、穂坂健祐アシスタントコーチ(AC)、アンソニー・マクヘンリーAC…。各々が感じている現状の課題感やチームとしての在るべき姿を口にしていく。
11日の試合後、桶谷大HCがその時の様子を振り返った。
「僕が何かをチームに伝えたというよりも、日頃はあまり喋らない人も含めて話をしてもらいました。そしたら『一つ一つのプレーのクオリティーが下がっているからスタンダードを上げていきましょう』『自分の仕事をやり切って一体感を持ってやりましょう』という感じで、みんな同じような話をしてくれました」
具体名も挙げながら、さらに続けた。
「マック(マクヘンリーAC)は『60〜70回あるディフェンスのポゼッションで30回エラーが出てたら勝てるわけがない』という話をしていて、健祐はファンの人たちがどういう心境で自分たちを見てくれているかという視点から話をしてくれました。もう一回、自分たちが一体感を持って戦うということを確認できたと思います」
日頃はあまり喋らない人、という部分は意図してのことだったという。「僕や佐々(宜央アソシエイトヘッドコーチ)がいろいろ言うよりも、みんな思ってることがあるだろうし、選手たちに話をしてもらった方がいいんじゃないかと考えました」と狙いを語る。
この熱いミーティングの効果は、キャプテンの一人を務める小野寺も感じたようだ。自身がチームに伝えた内容の主旨にも触れながら、振り返った。
「負け試合の時はターンオーバーした後にディフェンスに戻らないとか、ファウルを使わないとか、細かい部分ができていなかったと思います。僕はキングスを含めて桶さんと長くやってきましたが、今まで自分たちがどうやって勝ってきたのかというと、綺麗なバスケットじゃなくて、泥臭くディフェンスからやってきました。ルーズボールもそうです。(ミーティングを通して)チームとして共通理解ができたのかなと感じています」
得点が伸びなくても、ディフェンスとリバウンドで我慢を続け、接戦を勝ち切る。小野寺の「泥臭く」という言葉には、そんなチームの原点を示す意図があったのだろう。

小野寺&平良が体現した「ディフェンスから」のマインド
一夜明け、迎えたA東京との初戦。小野寺は自身の思いをプレーで体現した。
出だしから相手PGの大倉颯太に高い位置から激しいプレッシャーを仕掛け、規律の取れたハーフコートオフェンスを身上とするA東京のリズムを狂わせにいく。シューターの安藤周人にマッチアップしている時には、オフボールからぴったりと張り付いていた。
この試合、小野寺は20分40秒コートに立ったが、個人スタッツは3得点3リバウンド。アシスト、スティール、ブロックはゼロだった。ここまで挙げた数字は目立ったものではないが、その選手が出ている時間帯の得失点差を示す「+/−」はチームトップの「+21」。ちなみに、80-94で敗れた3日前のEASL開幕戦でも、小野寺は敗戦にも関わらず「+14」でチーム最高だった。
それを念頭に、桶谷HCは以下のように評した。
「祥太はやることをやっているんですよね。一つ例を挙げるなら、オフェンスでターンオーバーした後にビッグマンが誰も帰ってきてなくても、祥太は毎回帰っているんです。それで、相手がレイアップを落としたボールに対して反応して、得点されないこともある。(EASLは)トランジションディフェンスがひどかったじゃないですか。でも、祥太はそういう部分をやってくれるから、winnerでいられるんじゃないかと思います」
EASL開幕戦からロスターに名を連ねる平良彰吾も、持ち前のハッスルでチームにエナジーを注入した一人だ。絶えず相手ボールマンとの距離を詰め、ルーズボールに果敢にダイブする姿も目立った。
A東京との初戦後のコートインタビューでは、名前を呼ばれた小野寺が「オレ?」という表情を浮かべて少し首を傾げ、平良の肩を掴んで一緒にコート中央に立った。その理由について、小野寺は「ベンチから見ていても、平良選手がチームを勢いに乗せたと思います。EASLの試合も、彼がキングスのしたいバスケットを表現していたので、一緒にインタビューを受けました」と説明した。
「どうでしたか?彰吾選手」。小野寺にそう聞かれ、マイクを向けられた平良はチームの在るべき姿を口にした。
「祥太さんも含めてチーム全員でいいディフェンスができたので、また明日もディフェンスからいいゲームができるように頑張っていきます」
実際、A東京との2戦目も前半からオフェンスが停滞した時間こそあったが、ディフェンスで我慢して勝ち切った琉球。今後、白星を大きく先行させていくためには、「ディフェンスから」という“らしさ”を貫き続けることが必須となる。

(長嶺真輝)






