
Bリーグ2部(B2)は1日から2日にかけて各地でレギュラーシーズン(RS)の第24節が行われ、東地区4位・福井ブローウィンズはアウェイのホワイトリングで同2位の信州ブレイブウォリアーズと対戦。第1戦はアキ・チェンバースに逆転ブザービーターを許し、68-69で敗戦。翌第2戦は89-79と雪辱を果たし、信州との対戦を1勝1敗で終えた。
第24節終了時点で、福井は通算26勝19敗としており、B2プレーオフ(PO)出場圏内のワイルドカード上位に位置している。残り15試合となったB2のRSだが、ポストシーズンに向けての順位争いは激しさを増すばかりだ。
まさかの黒星も冷静 伊佐勉HC「プラン通りしっかり戦えた」
第1戦(1日)は劇的な幕切れだった。福井は細谷将司、渡辺竜之佑、満田丈太郎と主力が欠場する中、66-66で迎えた第4クォーター(Q)残り16秒。福井はタイムアウトを使用し、勝利に向けた作戦を共有した。
福井が選択したのは、その時点で15得点と勢いに乗っていた木村圭吾のアイソレーションプレー。残り時間を削りながら放ったシュートは見事にリングを射抜き、残り1.0秒で68-66とリード。勝利を大きく手繰り寄せるプレーだった。
しかし、信州も残していたタイムアウトを使用。アリーナにいる全員が息を飲む中、フロントコートのサイドラインからプレーを再開。最後のワンプレーで福井は必死のディフェンスを見せたが、一瞬だけ隙が生まれた。マンツーマンでディフェンスに付いていた木村を振り切り、フリーになったチェンバースがボールを受け取ると、アーチの高いショットを放つ。試合終了のブザーとともに3Pシュートがリングへと吸い込まれ、信州が大逆転勝利。勝利目前だった福井にとっては、手痛い一敗となった。
第1戦後、伊佐勉ヘッドコーチ(HC)は試合を振り返り「プラン通りしっかり戦えました。信州さん相手に69失点というのは、すごく、ほぼ完璧に近いんじゃないかなと思います。相手選手がいつも点取るパターンも簡単に取らせていないイメージがあったので、そこに関しては満足しています」と冷静に評価した。
確かに、福井はチェンジングディフェンスなどを多様な戦略を用いて、信州を平均得点85.8得点を大きく下回る69得点に抑えることに成功している。個人のスタッツを見ても石川海斗やペリン・ビュフォード、テレンス・ウッドベリー、ウェイン・マーシャルらを平均得点以下に抑えることができており、ゲームプラン通りに試合を運んでいた。
同点の場面で木村が勝ち越しショットを決めた終盤のシーンに関しても「特に2ポイント、3ポイントっていう話はしていませんでした。結果的にアイソレーションをさせたんですけど、時間を上手く使って決めてくれて良かったと思います。僕は2ポイントで正解だと思います」と称賛を送った。
伊佐HCは続ける。
「ただ、(勝利には)1点少なかった。これで直接対決で2勝2敗で並んだので、明日(2日)は1つ抜けられるように、連敗しないようにしたい。強いチームはあまり連敗していないので、そこはチャレンジかなと思います」

指揮官の思いくみ取り 木村がキャリアハイ32得点
敗戦から一夜明けた第2戦。この日、勝利の立役者の一人となったのは木村だった。試合前から木村の雰囲気は明らかに第1戦のそれとは違っていた。悔しい敗戦に落ち込んでいる様子はなく、「やり返す」といったように、深く集中しているような表情だった。
試合に入ると、木村は序盤からプレーでチームをけん引する。積極的にシュートを狙うと、第1クォーターだけで3Pシュート2本を含む9得点を記録。第2Qは3得点だったものの、第3Qには14得点を荒稼ぎ。チームメイトも木村のマークマンにスクリーンをかけたり、スペーシングを広げたりして、木村への信頼感が感じられるプレーが多くみられた。
最終的には37分47秒の出場でキャリアハイの32得点を記録。フィールドゴールの試投数は今季最多となる「25」。チームを勝利に導き、しっかりと第1戦のリベンジを果たした。
試合後、木村は「本当に昨日(第1戦・1日)の夜は眠れないぐらい考えちゃいました」と第1戦を回顧。それでも、気持ちを切り替えて、勝利を目指して第2戦に臨んだ。
「自分の上から決められて逆転負けというのはプロの舞台で初めてのこと。本当に悔しかったし、『なぜあの1秒の場面でこうしなかったんだろう』というのは何回も考えてしまったんですけど、過去のことは考えてもしょうがないので。今日(第2戦・2日)勝ってリベンジするっていう気持ちが結果に繋がったと思います」
多くの時間、ボールを保持していたことについては「とくに僕にボールを集めるという作戦があったわけではありません」と明かし、「でも、ムーさん(伊佐HC)がそういうふうにしてほしいっていうのは感じ取っていました」という。
「今節(第24節)は、スタメンの3人がいなかったので、自分の役割がいつもより多くなることも分かっていたので、自分でいかなきゃというのもありました」
木村のコメントについては、指揮官も同じ思いを持っていたようだ。伊佐HCは語る。
「昨日(第1戦)のプレーに関しては、特に良かったとも悪かったとも言っていませんでした。今日に関しては、しっかりと勝たないといけないし、(木村が)前半から乗っていたので、疲れた表情を見せても『頑張れ』と声をかけました。彼も『交代してくれ』という顔ではなかったので、こっちも『変えないぞ』っていうメッセージも含めて伝えていました。藤澤(尚之)も含めて、まだ若い2人が一勝を取ってくれたなという印象です」

レギュラーシーズンも残り15試合「大事にしていきたい」
B2リーグのレギュラーシーズンも残り15試合。PO進出争いは日を追うごとに激しさを増しており、特に東地区の順位争いはし烈だ。すでにPO進出を決めた首位のアルティーリ千葉は42勝3敗と頭一つ抜けているが、2位信州ブレイブウォリアーズは30勝15敗、3位富山グラウジーズは28勝17敗、そして4位の福井は26勝19敗となっている。
現在はワイルドカード上位に位置している福井だが、負けが重なっていけば順位の下降もあり得る。1試合1試合が順位を左右する重要な対戦となっており、終盤戦は特に気が抜けない戦いが続く。そういった状況を鑑みて、木村はこう話す。
「本当に一戦一戦が大事になってくるので、同じ負け方だけは絶対にしないようにしなければいけないです。自分たちの上には富山(グラウジーズ)さんと信州さんがいて、下にも青森(ワッツ)さんがいて、そこと勝ちを争っていくと思うので、本当に大事にしていきたいです」
連敗となればさらにゲーム差は開いていただけに、信州との直接対決を1勝1敗で終えた価値は大きい。
「本当にバスケットって最後まで分からないと痛感した試合でした。その悔しい気持ちがあったからこそ、今日(第2戦)はもっと頑張ろうと思えたし、今度同じシチュエーションがきたら絶対にミスしない。本当に痛い一敗だったんですけど、自分にとっても良い経験になりました」
チーム創設2年目にして、B1昇格へのチャンスを掴みかけている福井ブローウィンズ。昨季はB3リーグを46勝4敗、ホーム全勝で勝ち上がり、今季はホームでの連勝は途絶えたものの、混戦のB2を成長しながら駆け上がっている。残り15試合でどこまで勝ち星を積み重ねていけるか。終盤戦、さらにチーム力を高めていくことができれば、福井がB2の台風の目になることは間違いない。

(芋川史貴)