“地区首位対決”の大一番へ向かう琉球ゴールデンキングス 好調継続の鍵は「まわりを信じること」
公開練習で指示する琉球ゴールデンキングスの桶谷大HC(中央)©Basketball News 2for1
沖縄を拠点とするフリーランス記者で2for1沖縄支局長。沖縄の地元新聞で琉球ゴールデンキングスや東京五輪を3年間担当し、退職後もキングスを中心に沖縄スポーツの取材を続ける。趣味はNBA観戦。好物はヤギ汁。

 Bリーグ西地区首位の琉球ゴールデンキングスは2月28日、沖縄アリーナサブアリーナでメディア向けに練習を公開した。3月2、3の両日にアウェーで中地区首位の三遠ネオフェニックスと行う“地区首位対決”の大一番に向け、攻守の連係を確認。練習後には桶谷大HCや選手が取材対応した。

 琉球は現在、西地区2位の名古屋ダイヤモンドドルフィンズと1ゲーム差の27勝12敗。三遠は34勝5敗でリーグ全体1位なのに対し、琉球は全体4位となっており、地区首位同士とはいえ勝敗数だけで見ると差がある。ただ、直近の試合である14日の天皇杯準決勝の川崎ブレイブサンダース戦は身上のボールムーブメントが徹底され、6人が二桁得点で98ー70と圧勝。ディフェンスの共通認識やマークマンの受け渡しも改善し、上向き調子だ。

 バイウイーク明けで好調を維持できるか。16日には千葉ジェッツとの天皇杯決勝も控える中、三遠戦ではチームにとって最大の課題となっている「継続性」が試されそうだ。

三遠のトランジション、3Pを警戒

 28日の練習は三遠戦を想定した練習に注力した。一回一回プレーが完結する度に動きを止め、桶谷HCや穂坂健祐ACアンソニー・マクヘンリーACらが細かく指示し、連係を確認していた。チーム練習の終了後、メディア対応した桶谷HCは三遠の印象を問われ、こう答えた。

 「簡単に勝てる相手じゃないと思いますが、隙がないわけじゃない。三遠のやりたいトランジションと3Pを気持ち良くできないようにしたいです。守りだけじゃなく、相手の嫌なところをどれだけ攻められるかも問われてくるので、アタックし続けられるかが重要だと思います」

 岸本隆一「オフェンスが凄まじい。躊躇がないチームで、どこからでも点数を取ってきます。それが結果にも表れている印象です」とオフェンス面を特に警戒する。西地区の上位争いが混戦となり、チャンピオンシップ(CS)に進出した場合のホームコートアドバンテージの獲得も簡単ではない状況なため、「中断期間明けの仕切り直しでいいスタートダッシュを切れるチャンスです。受け身にならず、どんどんチャレンジしたいと思います」と意気込んだ。

 一方、安定感に欠いた前半戦を念頭に、現状では相手よりも自分たちにより目が向いているようだ。「今のチームはまだいい試合ができても、翌日には全然違う試合になってしまうことがずっと続いています。だから相手よりも自分たちのことに目を向けています」と話し、危機感もうかがわせた。

練習では連係を細かく確認する©Basketball News 2for1

桶谷HCは大野HC、岸本は山内に対する思いも

 囲み取材では、指揮官、選手同士の関係性も聞いてみた。桶谷HCには「三遠の大野HCは、桶谷さんと同じく数少ないB1優勝HCですが、意識しますか?」と問うと、「意識する部分はありますよ」と即答。2人は現在46歳で同級生だが、選手として日本代表も経験した大野HCに対し、桶谷HCは選手としては大成せず、コーチとしてのキャリアを地道に積み上げてきた。

 笑いながら「彼はエリートで、身長も高くて、顔もいい。負けたくない理由がいっぱいある。僕は雑草なんで」と冗談を言った後、こう続けた。

 「やっぱり同級生でこうやって切磋琢磨し、バスケットを一緒に盛り上げられるのがすごく良いことだと思います。彼はどのチームに行っても結果を残せるいいコーチなので、僕も彼のバスケットを勉強しています。今回レギュラーシーズンで戦い、CSでもまた当たるかもしれないので、CSに向けてもいい戦いができたらいいですね」

 岸本には、キングス在籍時から仲の良い沖縄出身の山内盛久について聞いた。「山内さんとの対戦はオールスター以来ですけど、意識しますか?」。答えはこうだ。

 「もう毎年、やっぱり(意識を)しないわけにはいかないので。ただ慣れみたいなものもあるので、しっかりお互いがチームにとってプラスになるように試合の中で切磋琢磨できたらいいかなと思います」

三遠の大野HCを「意識する部分はある」と語る桶谷HC©Basketball News 2for1

「味方を信じること」と「コミュニケーション」

 話しが戻るが、岸本が言ったように、試合後ごとで遂行力に大きな差があるのはシーズンを通しての課題だ。いい状態を保つためには、何が必要なのか。桶谷HCと岸本がそれぞれの言葉で語ってくれた。

 桶谷HC「まわりのプレーヤーを信じることだと思います。このチームは1on1をできる選手が多い分、シュートが入らなくなった時に『自分が何かをやらないと』『何か起こさないと』というメンタルになってしまい、ボールが回らないということが多かったです。それでオフェンスマインドになり過ぎて、ディフェンスがルーズになったりもしました。やっぱり味方を信じて、やるべきことをやり続けることが一番重要だと感じます」

 岸本「オフェンスでもディフェンスでも、もう少しコミュニケーションのところを意識してやっていこうというところで、時間をかけて取り組んできました。一つのコミュニケーションミスが自分たちにとっては致命的なミスに繋がってしまう。準備期間での積み重ねを発揮できたらいいなと思います」

 二人の言葉に出てきた「味方を信じること」と「コミュニケーション」は、いずれもチームで戦うことを意味する。それは「団結の力」を掲げる琉球にとって、チーム戦術の根底にあるものだ。シーズン終盤で体現し、史上初の天皇杯、Bリーグの2冠達成に繋げることができるか。まずは第24節最大の注目カードとなる琉球対三遠に注目したい。

(長嶺 真輝)

記者の質問に答える岸本隆一©Basketball News 2for1

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