日本代表センター、川真田紘也の進化が止まらない。
15日に東京の有明アリーナであったアンゴラ(FIBAランキング41位)との国際強化試合では、ビッグマンの渡邊雄太が第2Q途中に右足首を捻挫して退場し、右股関節の負傷明けのジョシュ・ホーキンソンも14分30秒のプレータイムにとどまった。
その影響もあり、川真田はチームで2番目に長い25分30秒出場。渡邊と並んでチームトップの7リバウンドを奪取したほか、体を張ったディフェンスでNBA選手も抱えるフィジカルの強いアンゴラを度々苦しめた。
17日には格上のフランス(FIBランキング5位)と強化試合を行う。川真田が216cmのNBAを代表するセンター、ルディ・ゴベアにどう挑むのか、注目だ。
ビッグマン勢が苦境も「やることは一緒」
アンゴラ戦ではインサイドで体を当て続けた。
第2QにはNBAでプレーするアンゴラのブルーノ・フェルナンドのドライブに対してすかさずカバーに入り、ブロックに飛んで跳ね返した。第3Qには相手ビッグマンが押し込んできたのに対して一歩も引かず、トラベリングを誘った。直後には日本ベンチに向かって両手で“マッスルポーズ”を決め、会場を沸かせた。
16日にあった公開練習後、アンゴラ戦をこう振り返った。
「前半はあまり自分たちのペースでできてなかったけど、後半はやりたいバスケもできたと思います。ゾーンディフェンスも機能できたし。個人的にも守るべきところで守れてた。昨日の出来は良かったと思います」
渡邊やホーキンソンのプレータイムは伸びなかったが、動揺はなかったようだ。
「ジョシュに(プレータイムの)制限があるのは知っていましたし、雄太さんもアクシデントがあった。ただ覚悟や準備はできていたので、最後までしっかりプレーできました。もちろん雄太さんがいた方がチームとしてプレーのバリエーションも増えるし、ディフェンスも厚くなる。センターの人数的にも助けになりますが、僕たちのやることは一緒。残ったセンター陣で追求していきたいです」
共にコートに立ったホーキンソンも「特に川真田は素晴らしかった。チーム内で激しく競争をして、勝ち取った出場時間の中で貢献するのは素晴らしいことです」と賛辞を送る。さらに“イジリ”も含め、川真田をこう評価した。
「インサイドで戦い抜いて、リバウンドを取って、ガッツポーズも決めていた。僕はベンチでガッツポーズを見ていて、その時点で4点差とかだったので『今それやっちゃうのはどうなの』とは思いましたけどね(笑)。僕だったらやらないかな(笑)。でも、戦い抜いた彼を本当に誇りに思うし、チームが彼に求めているのはそういう部分だと思います」
「いろいろ怒られた」ホーバスHCの下で急成長
川真田の深い自信は、アカツキジャパンでの経験を重ねるごとに少しずつ積み上げてきたものだ。Bリーグではインサイドを席巻する外国籍選手の2番手のような立ち位置だが、代表では帰化選手も一人までに限られるため、当然自身のプレータイムが増え、責任感も増す。「試合に出てなんぼと言いますか、やっぱり出ることで得られる経験があります」と語る。
代表に招集され始めた頃は「(最終メンバーに)入るという強い気持ちは持っていましたが、100%信じきれていたかというと難しいです」と率直に振り返るが、その後は他の若手と同様にトム・ホーバスHCの下で急激な成長を遂げてきた。
「(ホーバスHCには)リバウンドのボックスアウト、ディフェンスのシステムにしても、いろいろ怒られました。でもそれが今に繋がっている。『これ』というものはないですけど、いろいろ吸収してこられたと思います」
オフェンスでは3Pやドライブを重要視し、ディフェンスではオールコートプレスも頻繁に仕掛ける。Bリーグで似たようなスタイルのチームは少ないが、その中でリバウンドやスクリーンなどビッグマンに求められる役割を徐々に理解し、ホーバスバスケに対するフィット感も目に見えて向上してきた。
能力差は「気持ちでカバー」 フランス戦へ
17日に対戦するフランスはサイズが大きく、NBAで活躍する選手も多い。中でもセンターのゴベアはNBAで3度にわたりベストディフェンダー賞に輝き、ブロック王やリバウンド王の受賞歴もある。
ゴベアについて「すごいのは分かっているんですけど、やることは一緒。プレー映像も見ていますけど、やっぱり見るのと実際にやるのとでは全然違うので、試合中にアジャストしたいと思います」と対峙する心の準備はできている。「急に身長やパワーは伸びないので、あとは気持ちでカバーする。ハッスルしたいと思います」と続け、闘志を燃やした。
ドイツ(FIBAランキング11位)、フィンランド(同24位)、オーストラリア(同3位)という格上と一次ラウンドで戦うW杯に向けては「僕は先のことを見ちゃうと目の前のことが疎かになっちゃうので、FIBAのランキングとか関係なしに目の前の相手とどう戦うかだけを考えてプレーしています」と淡々と語る川真田。足元をしっかりと見詰め、本番に向けて着実に歩みを進めていく。
(長嶺 真輝)