1カ月弱の間に行われた6試合の日本代表国際強化試合で、大きく成長した選手は誰か、と問われたら、「川真田紘也」をその一人に挙げる人は多いのではないだろうか。
試合ごとにフィジカルレベルが上がる相手ビッグマンに体をぶつけ、時には204cm、110kgの巨体を投げ出してルーズボールに豪快に飛び込む。チームに“ハッスル”を注入する泥臭いプレーに磨きが掛かっている。4日のニュージーランド戦後、トム・ホーバスHCも「川真田は頑張っている。毎日うまくなっている感じです」と語り、信頼度が上がってきている。
第2戦でチームトップの3スティール
韓国とのアウェー2連戦に続き、ニュージーランドとの2試合も206cmの渡邊雄太と208cmのジョシュ・ホーキンソン不在の状態で臨んだ日本。そんな中、センターは川真田と渡邉飛勇が交互に出場した。
サイズ不足のチームにあって、センターに絶対的に求められるのはリバウンドで体を張ることと、「5アウト」を採用するオフェンスでのスクリーンである。川真田はこの2つを愚直にこなす。4日のニュージーランド戦では、ピック&ロールから相手ディフェンス2人をブロックしてボールマンに3Pを打たせたり、オフェンスリバウンドに絡んでフリースローを獲得したりする場面もあった。
リバウンドは2試合とも4本ずつで、さらに特筆すべきは第2戦で記録したチームトップの3スティールである。第1Q終盤にはビッグマン2人に囲まれ、倒れ込みながらルーズボールを奪取。第3Qにはゴール下にダイブしてきた選手へのパスをカットした。
オフェンス面では味方のドライブからの合わせをキャッチミスしたり、フリーのゴール下を外したりと課題も見えたが、オールコートプレスの際に最後方から声とジェスチャーでローテーションを指示したり、コート外に流れたボールに飛び込むなど、数字に表れない貢献も多かった。
リバウンドで大差もBリーグでの経験生きる
一方、第2戦ではリバウンド数で21対45と大きく水を開けられた日本。韓国もフィジカルの強い相手ではあったが、ニュージーランドはそれに加えて高さもあり、圧倒された形だ。川真田は第2戦をこう総括した。
「相手にもプライドある中で、2日前に比べてニュージーランドがフィジカルの激しさという強みを出してきました。その部分で点差が開いたかなと思います。リバウンドに関しては試合後に飛勇とも喋りました。お互い負けているつもりも、引いているつもりもなかったですけど、フィジカルの差でやられたという話をしてました」
ただBリーグでも外国籍選手とマッチアップすることが多いため、完敗したという認識はない。「Bリーグの外国人選手も一級品で、体が強い選手が多い。レベルとしてはそこまで変わらないと感じたので、普段の経験を生かして張り合えたという気持ちはあります」とも語った。
「次の試合で成長を見せるチャンス」
W杯本番で当たるドイツ(FIBAランキング11位)、フィンランド(同24位)、オーストラリア(同3位)はさらにサイズがあることが想定され、当然フィジカルの強さもワールドクラスだ。だからこそ、今回の経験を糧に貪欲に成長を求める。
「W杯ではこういうフィジカルなプレーに対してちゃんとアジャストしないといけないので、今回ニュージーランドと当たれたことは良かったです。もちろん勝ちたかったですけど、一つ学習ができた。次の試合で成長を見せるチャンスもあると思っています」
今後、渡邊雄太とホーキンソンがメンバーに入ったとしても、世界レベルではサイズが小さい日本。そのため、全員が当たり負けせずに激しくプレーすることはW杯を戦う上で必須条件となる。川真田も「自分たちセンター陣はもちろんですけど、コートの5人全員がフィジカルな相手にどれだけ対応できるかが勝負の一つの鍵になると思います」と語り、メンバー全員に“ハッスル”を求める。
若手ビッグマンとして注目を浴び、ホーバスジャパンに招集されてから急激な成長曲線を描いている川真田。泥臭いプレースタイルや明るい性格でムードメーカーの役割を担い、プレーやインタビューで観客を沸かせることも多い。大詰めを迎えた代表選考において、その存在感は確実に増している。
(長嶺 真輝)