東最下位の茨城ロボッツに浮上の兆し きっかけは平尾充庸主将のコーチ陣への”問題提起”
琉球戦でシュートを放つ茨城ロボッツ・平尾充庸©Basketball News 2for1
沖縄を拠点とするフリーランス記者で2for1沖縄支局長。沖縄の地元新聞で琉球ゴールデンキングスや東京五輪を3年間担当し、退職後もキングスを中心に沖縄スポーツの取材を続ける。趣味はNBA観戦。好物はヤギ汁。

 東地区最下位の茨城ロボッツに、浮上の兆しが見えてきた。

 12月10、11の両日に西地区首位の琉球ゴールデンキングスとアウェーの沖縄アリーナで対戦し、87-95、63-94で連敗したものの、初戦は延長戦までもつれ込む大接戦を演じた。この試合では現在、平均リバウンド数でリーグ1位の琉球に最後はインサイドを支配されたが、エリック・ジェイコブセンやチェハーレス・タプスコットらがリバウンドで体を張り、第4クォーターの中盤までは持ち味の速い展開のバスケで速攻を連発。ボールや人の流動性も高く、スリーポイントの成功率は脅威の54.5%に達した。

 前節にホームで行った”北関東ダービー”の群馬戦で連敗を「7」でストップした勢いを、そのまま海を超えて沖縄まで持ち込んだような戦いぶりだったが、復調のきっかけは何なのか。大きな要因として、主将3シーズン目となる平尾充庸が群馬戦を前にコーチ陣に対して発した”問題提起” があった。

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第1戦は6人が二桁得点 武器の速い展開で魅せる

 琉球との第1戦は前半だけで15得点を挙げた平尾がチームのオフェンスに火を付け、各選手が高確率でスリーを沈めて最大14点のリードを奪うなど第2Qから常に先行する展開だった。第4Qの残り7秒で同点に追い付かれ、延長で力尽きたが、アウェーでの金星まであと一歩のところまで迫った。

 リチャード・グレスマンHCが「チャンピオンシップで戦うようなチームに対し、アウェーでハードさを出してくれた選手たちを誇りに思う。チームとして良くなっていることは間違いないです」 と振り返ったように、チーム状態が上向きなことは間違いない。指揮官が「スコアができていたのはボールが動いていたから」と分析する通り、チームが掲げる速い展開を武器に6人が二桁得点 とバランスのいい攻撃を展開した。

 リーグの中でもチーム全体のサイズが小さい分、ハーフコートでの対決になった時の課題は露呈したが、平尾は「45分のうち、35分は僕たちのバスケができました。逆を言えば、35分できたことを45分できるようになれば(上位陣からも)勝機はある。しっかり僕たちの速いバスケにもっていけるようにしたいです」と前を向いた。

茨城・グレスマンHC©Basketball News 2for1

立ち返った「アンセルフィッシュ」な姿勢

  茨城の復調ぶりは数字にも表れている。変化が際立っているのは、アシスト数だ。

 これまで白星を飾った5試合のうち、チームのアシスト数が20本を超えたのは4試合あるが、連敗中を中心に黒星の試合は大半が10本台にとどまる。つまり、ボールの流動性が低い試合は負ける確率がより高くなる。どのチームにも言えることではあるが、小柄でアップテンポなバスケを掲げる茨城は個で戦うことが難しいため、その傾向がより強まることは否めない。いかに人とボールが動き、どれだけフリーな状態でシュートを打てるかがオフェンスの鍵となる。

 平尾は「連敗が続いている間はどうしても誰かのせいにしたりして、それぞれが自分にベクトルを向けてない時間が長かったと思います」と語り、チームにとって生命線であるチームワークが長い間欠如していたことを指摘する。長いトンネルを抜け出すきっかけは、冒頭で記した平尾の”問題提起”だ。どのような内容だったのか。自ら振り返ってくれた。

 「群馬戦の前に僕自身がコーチ陣に伝えたことがあります。アップテンポなバスケをすることは掲げているけど、アップテンポ=タフショットを打っていいっていう訳ではない。それと、コーチが当初から言っているアンセルフィッシュという原点が今抜けているよね、ということを話しました。自分達のバスケにアンセルフィッシュさが必要だということは、自分達で口酸っぱく言いながらやり続けないと、ロボッツらしいバスケはできないので」

チームへの“問題提起”が復調のきっかけになったと平尾(右)は話す©Basketball News 2for1

 この指摘をコーチ、選手全員で共有したことで、再び在るべき姿を取り戻した茨城。88-90、 88-85といずれも大接戦を演じて1勝1敗と星を分けた群馬との連戦に加え、琉球との初戦を含めた3試合はいずれもアシスト数が20本を超えた。

 平尾が続ける。

 「アンセルフィッシュさを体現した群馬戦からはロボッツらしいバスケがまたできだしたので、そこは今後もぶらさずにやっていきたいです。僕たちがやるべきことは誰かのために動くバスケ、そして速い展開のバスケ。それが体現できたからこそ、接戦が三つ続いたんだと思います」

新加入の”パサー系ビッグマン”が起爆剤となるか

 調子が上向きのチームにとって、さらなる起爆剤としての活躍が期待される存在もいる。11月に契約を解除したLJ・ピークに変わり、新たな外国籍選手として加入する207cmのセンター、キャメロン・クラットウィグだ。23歳と若いが、全米大学トーナメント(NCAAトーナメント)で所属チームをファイナル4に導くなど実績は豊富。直近はフィリピンリーグでプレーし、パサー系ビッグマンとしてトリプルダブルを記録するなど攻守で活躍していたという。

 まだ明確な合流時期は発表されていないが、グレスマンHCが「キャメロン選手が入ればチームにとって大きな助けになる。選手たちはこれからどんどん素晴らしいパフォーマンスを発揮してくれると思います」と語っていたことから、Bリーグデビューは近いと見ていいだろう。

 クラットウィグ合流後のチームづくりについて平尾に問うと、淡々とした話し口ながら、期待感の高さが伺える答えが返ってきた。「サイズがあるので、リバウンドで自分達の助けになってくれる。あとはやっぱりパスが上手だと思うので、バックドアなど僕たちの速いオフェンスにすぐ にフィットできるじゃないかなと思っています。

 14日の次戦からは東2位のアルバルク東京、同1位の千葉ジェッツ、同4位の宇都宮ブレックスと、これでもかというほど強豪とのカードが続く。琉球と同様に、勝利へのハードルは極めて高い相手ばかりだが、今の茨城には「大物食い」の可能性を感じるファンも多いだろう。ちょうど1 カ月後の来年1月23、24の両日には、ホームであるアダストリアみとアリーナでBリーグオールスターゲームが開かれる。強敵を薙ぎ倒して地元のバスケ熱を盛り上げ、年に一度の祭典にさらなる活気をもたらしたい。

(長嶺 真輝)

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