8カ月間という長いシーズンを締めくくるBリーグのチャンピオンシップ(CS)ファイナルが27日、神奈川県の横浜アリーナで幕を開ける。対戦するのは東地区1位の千葉ジェッツと、西地区1位の琉球ゴールデンキングス。レギュラーシーズン(RS)の勝率は千葉Jが全24チーム中1位の53勝7敗、琉球が2位の48勝12敗だったため、順当な勝ち上がりとなった。
3月にあった一発勝負の天皇杯全日本選手権決勝も同じ顔合わせとなり、その時は87ー76で千葉Jに軍配が上がった。千葉Jが2020ー21シーズンに続いて2度目のチャンピオントロフィーを手にし、Bリーグと天皇杯で史上初の二冠を達成するのか、琉球が天皇杯の借りを返して初優勝を飾るのか。2016年のリーグ創設以来、東と西をけん引してきた両雄による頂上決戦は、27、28の両日に第1戦、第2戦を行い、1勝1敗となった場合は中1日を挟んで30日の第3戦で勝敗を決する。
目次
平均失点は琉球4位、千葉J5位
互いに強固なディフェンスを誇るチームであることに加え、特徴的で強力な”矛“を持つ。平均得点が87.9点とリーグで断トツトップの千葉Jは圧倒的な火力を備える「スリーポイント」、琉球は重量級のインサイド陣が生む「セカンドチャンスポイント」だ。持ち前の堅守を武器に、どちらがより相手の長所を潰せるかが勝負の鍵を握る。
就任2年目(bjリーグ時代除く)の琉球・桶谷大HC、就任1年目である千葉Jのジョン・パトリックHCはともにディフェンスを最も重要視するコーチだ。その思想がチームのスタイルにも投影されており、平均失点の少なさは琉球が73.5点でリーグ4位、千葉Jが74.8点で5位と並ぶ。いずれも個々が1対1でハードにプレッシャーを掛けることが徹底され、ボールへの執着心も高い。
琉球はリーグトップの平均42.0本という高いリバウンド力を生かすため、主にハーフコートで守ってより難しいシュートを打たせてミスを誘い、ゴール下のビッグマンがリバウンドをつかんで攻撃に転じる。一方の千葉Jはオールコートでのディフェンスやトラップも駆使して素早くローテーションし、攻撃に時間を掛けさせて相手のシュート成功率を下げ、自分たちの得意な速いペースのオフェンスへ繋げるなど、それぞれ守り方には特徴がある。
千葉JのCSでの3P成功率は40.2% 対策法は…
両チームにとって”アイデンティティ“とも言えるディフェンスだが、ファイナルで最も気を付けたいポイントはどこか。琉球にとっては、やはり千葉Jの3Pだろう。
千葉Jは富樫勇樹や原修太、ヴィック・ロー、クリストファー・スミスなど好シューターが揃う。ビッグマンを含めてほぼ全員が3Pを打てるため、1試合あたりの3P成功数は11.3本とリーグ1位。総得点のうち3Pが占める割合が38.4%と、この指標もリーグで最も高く、最大の得点源となっている。RSの3P成功率はリーグ5位の35.0%だが、CS5試合の成功率は脅威の40.2%に上り、好調を維持している。
各チームが分かっていても止めきれない最大の要因は、千葉の3Pを打つシチュエーションにある。3Pはキックアウトなどでフリーを演出してキャッチ&シュートで打つ方が成功率が高いとされるが、千葉は自らドリブルでクリエイトし、プルアップで「理不尽」とも言える3Pを決められる選手が多く、これが相手にとっては厄介この上ない。ビッグマンもスリーを得意とするため、琉球はインサイド陣が外に引っ張り出された時、いかに高いリバウンド力を維持するかも問われる。
琉球は今シーズン、千葉Jと対戦した3試合で天皇杯決勝は40分の15(37.5%)、RS1戦目は28分の13(46.4%)、唯一白星を飾った第2戦も31分の13(41.9%)と高確率で3Pで決められており、止めきれていない。
25日、那覇空港でメディアの取材に応じた桶谷HCは「千葉は爆発力があっていろんな点の取り方ができますけど、特に3Pを乗せてしまうと止めどなく点数を挙げられてしまう。そこはしっかり抑えたいです」と語っていたため、対策法に注目だ。
琉球はオフェンスリバウンド1位 制空権争いに注目
一方の千葉Jが警戒すべきは、琉球のオフェンスリバウンドである。
琉球は今シーズン2年ぶり3度目のリバウンド王に輝いたジャック・クーリーをはじめ、アレン・ダーラム、ジョシュ・ダンカンという強烈なインサイド陣を揃え、オフェンスリバウンドの平均は14.4本でリーグトップ。そのため、セカンドチャンスポイントも16.0点で最も高い。
RSの2試合を振り返ると、89ー85で勝利した第1戦でさえオフェンスリバウンドを15本奪取され、セカンドチャンスポイントは6対19と大きく水を開けられた。76ー78で敗れた第2戦もオフェンスリバウンドを19本取られ、この試合もセカンドチャンスポイントで12対23と差を付けられている。
琉球のビッグマンはRSの3P成功率が脅威の46.5%に達するダンカンを除けば、外のシュートが得意なインサイドの選手は少ない。ただ、琉球はペイントタッチと素早いボール回しから岸本隆一や今村佳太、松脇圭志らが高確率で3Pを射抜くため、千葉Jはインサイド陣も含めたチームディフェンスでシューター陣をケアする必要があり、ビッグマンが外にポジションを取っている時に各選手が積極的にディフェンスリバウンドに参加する意識が求められるだろう。
21日にあったセミファイナル第2戦後、パトリックHCも琉球に対して「最近は松脇とか日本人のシューターが結構熱い。高いパーセンテージで当たっていますので、1人だけじゃなくてチームディフェンスをする。ローテーションとかシュートに対してのディフェンスは強調すると思います」と警戒しており、3Pに対する守りとディフェンスリバウンドの確保をどう両立するかが注目される。
クラッチタイムの富樫、今村らの活躍は必須
双方ともオフェンスで破壊力抜群の武器を備えているため、大差が付く可能性は低く、いずれのゲームも接戦になることが予想される。そのため、最後の最後で勝利をもぎ取るために必須なのが、クラッチタイムで存在感を発揮できるプレーヤーの存在である。
RSの第1戦は、試合時間残り33秒で琉球がダンカンの3Pで3点差に迫ったが、富樫が残り11秒で3Pを決め返して千葉Jが勝利。続く第2戦では、1点を追う琉球が残り3秒で今村のジャンパーにより逆転し、劇的な形で琉球が白星を奪い返した。
富樫や今村の他にも、千葉Jは原や西村文男、琉球は岸本やコー・フリッピンなど、いずれも大舞台やクラッチタイムで輝きを増す選手が多く、誰がウイニングショットを決めてもおかしくはない。
ついに熱戦の火蓋が切られる頂上決戦。心をたぎらせ、勝利を重ね、最後に紙吹雪の舞うコート中央でチャンピオントロフィーを掲げているチームは”レッド&ゴールド“のどちらなのか。歓喜と落胆が交錯するその瞬間まで、一瞬たりとも目が離せない。
(長嶺 真輝)