Bリーグのレギュラーシーズンを西地区首位で終えた琉球ゴールデンキングスは12、13の両日、ホームの沖縄アリーナに名古屋ダイヤモンドドルフィンズ(西地区3位、ワイルドカード1位)を迎え、チャンピオンシップ(CS)のクォーターファイナルを行なった。1戦目を91ー85、2戦目を92ー81で勝利し、5大会連続でのセミファイナル進出を決めた。
フルメンバーの琉球に対し、名古屋Dは開幕直前にリバウンド力の高いアラン・ウィリアムズが脳震盪のため契約解除となり、今年1月以来、腰椎椎間板ヘルニアで戦列を離れていたモリス・ンドゥールが復帰を果たした。ただ、初戦の第1Qで張本天傑が足を痛めて離脱。さらにスコット・エサトンも初戦の終盤で下半身を痛め、2戦目を欠場した。
手負いの名古屋Dに対し、琉球は強みである重量級のインサイド陣がゴール下を支配。初戦では名古屋Dの速いペースに手を焼いて最後まで勝負の行方が分からない接戦となったが、リバウンドの本数で1戦目は42対27、2戦目も39対24と圧倒し、連勝で西の上位対決を制した。
初戦残り35秒で値千金のレッグスルースリー
特に際立った存在感を示したのが今村佳太だ。1戦目はスリー12分の7でチームトップの24得点、2戦目はスリー8分の5で17得点。CSにおいて「僕は活躍しないといけない選手」と自負するエースが、完全に“プレーオフモード”にギアを切り替えた。
左右、中央と様々な場所から2試合でスリー12本をヒットさせた今村。そのほとんどが琉球の身上であるボールムーブからのキャッチ&シュートだったが、観衆に最も強いインパクトを残したのは初戦の試合時間残り35秒でプルアップから決めた1本だ。
スリーポイントライン外側の中央でボールを持った。アレン・ダーラムのスクリーンで相手ディフェンスがスイッチし、自身より10cm高い201cmのコティ・クラークと向き合った。2度のレッグスルーで揺さぶり、若干ステップバックしてクイックでショット。リードを5点差に広げる値千金のスリーを撃ち抜くと、8千人超が詰め掛けたアリーナが大歓声に包まれた。
第1戦後、CSでプレーする際の心持ちを問われ、頼もしい言葉を口にした。
「まず、自分に任せてくれるチームメートに感謝しています。あと、今シーズンは特にですけど、CSでこそ僕は活躍しなきゃいけないと常に自分に言い聞かせています。どの試合でも集中はしていますが、ギアがさらに上がる。CSに向けていっぱい積み重ねをしてきたので、自信を持っています」
山下スキルコーチの下で成長 得点、アシストで過去最高
今シーズンの開幕前、今村にとって大きな環境の変化があった。新潟経営大学の先輩にあたる山下恵次スキルコーチが加入したことだ。「積み重ね」という言葉の通り、日々のワークアウトで反復しているハンドリングのスキルや体の使い方がシーズンが進むごとに馴染んでいっている印象だった。前述のレッグスルーからのスリーも「自然に体が動いた」という感覚だろう。
技術の向上は数字にも表れ、レギュラーシーズンの11.3点、3.6アシストはいずれも自身過去最高のスタッツ。力強くゴールにアタックする頻度も増えているため、より外のシュートが止めづらく、それがアシストの増加にもつながっている。機動力の高いガードからビッグマンまで、タイプを問わずマッチアップできるディフェンス面での成長も著しい。
開幕前、山下スキルコーチが「(今村は)絶対にキングスの顔にならないといけない選手。ボールを持った時に相手が『怖いな』とか、ディフェンスでつかれたら『嫌だな』と感じる、オーラが出るような選手に育てたいです」と語っていたが、「正にその通りの選手になってきた」と感じる人も多いはずだ。
周囲からの信頼も厚い。名古屋Dとの第2戦後、桶谷大HCが述べた言葉である。
「この2戦は今村に引っ張ってもらったと感じています。レギュラーシーズンで酸いも甘いもいろんなことに挑戦してくれて、その中で自信をつけて成長したことが本当に見受けられます。チームにとってすごく頼もしい存在ですね」
涙した前回ファイナル「後悔がある」
ただ、自身のパフォーマンスも含め「まだまだ満足していない」と言い切る今村。常に脳裏にあるのは、琉球にとって初の舞台となった昨シーズンのファイナルだ。宇都宮ブレックスに2連敗して準優勝に終わり、コート上で涙を流した。その悔しさを忘れることはない。
「去年のチャンピオンシップで非常に悔しい思いをしました。僕自身まだ未熟でしたし、やり切れなかったという後悔がある。今年はファーストオプションとしてチームを勝たせる選手にならなきゃいけないと思っています。そこに対して、僕はぶれることはない。満足することなく、一貫してやっていきたいです」
20日からは沖縄アリーナに中地区2位の横浜ビー・コルセアーズを迎え、2年連続のファイナル進出を懸けてセミファイナルを戦う。今年2月の天皇杯準決勝では96ー91で接戦を制したものの、河村勇輝に45得点を許し、今回も激戦のシリーズになることが予想される。優勝のみを渇望するエースが、確固たる自信を胸にチームを力強くけん引していく。
(長嶺 真輝)