2年連続ファイナル進出!琉球ゴールデンキングスの強さを支える「セカンドユニット」と「健康管理」
笑顔を浮かべる琉球ゴールデンキングスの今村佳太(左)と岸本隆一©Basketball News 2for1
沖縄を拠点とするフリーランス記者で2for1沖縄支局長。沖縄の地元新聞で琉球ゴールデンキングスや東京五輪を3年間担当し、退職後もキングスを中心に沖縄スポーツの取材を続ける。趣味はNBA観戦。好物はヤギ汁。

 Bリーグ西地区1位の琉球ゴールデンキングスは20、21の両日、沖縄アリーナで中地区2位の横浜ビー・コルセアーズとチャンピオンシップ(CS)セミファイナルを行い、86ー70、88ー84で2連勝して2年連続のファイナル進出を決めた。

 第1戦は8,541人、第2戦は8,619人の観客が詰め掛け、2021年3月に完成した沖縄アリーナ史上、過去最多の来場者数を2日続けて更新。会場は終始「ゴーゴーキングス」の大歓声に包まれた。

 横浜BCはエースの河村勇輝がクォーターファイナルと同様に右太ももの怪我の影響で出場時間を制限されながらのプレーとなった。一方、層の厚さが武器の琉球はベンチスタートのメンバーが出ている時もディフェンスの強度が下がらず、オフェンスでも持ち味のボールシェアでそれぞれが個性を発揮。第2戦は接戦だったが、今のチーム状態における地力の差が見て取れるシリーズだった。

 今シーズン、琉球は田代直希、牧隼利、渡邉飛勇と、怪我から復帰した選手はいれど、新たな負傷で長期離脱を強いられた選手はいない。今回のCSは各チームで主力の負傷離脱が相次いでおり、チームの健康状態が結果に直結するケースが目立つ中、琉球対横浜BCのセミファイナルもフルメンバーで戦える事の優位性が如実に表れる形となった。「セカンドユニット」と「健康管理」をテーマに、琉球の強さの一端に迫る。

松脇圭志は3P、コー・フリッピンはドライブで存在感

 第1戦、琉球は第1Qでスターティング5の岸本隆一、今村佳太が早くもファウル2つとなり、プレータイムを制限せざるを得なくなる。CSの経験が豊富でQFから落ち着いたプレーでチームをけん引していた2人なだけに、不安を感じたファンもいただろう。しかし、桶谷大HCが動じることはなかった。試合後の言葉である。

 「コーであればペイントタッチやディフェンス、松脇であれば3Pなど、それぞれの特徴を理解し合い、生かしながらプレーできているところがセカンドユニットの安定につながっています。(セカンドユニットが出ている)時間帯にリズムをつかむことができました」

 特に目立ったのは、チーム最長の30分27秒出場した松脇圭志だ。この試合、得点が欲しい場面で3P5本を沈め、体の強さを生かしたディフェンスも健在で+/−(その選手が出場していた時間帯のチーム全体の得失点差)はチームトップのプラス16。コー・フリッピンも鋭いドライブや河村への激しいプレッシャーを貫き、牧はゲームコントロールやビッグマンへの合わせ、田代は第2Qの6分3秒のみの出場で4得点1アシストを記録するなど、それぞれがきっちりと存在感を示した。

 結果、この試合で挙げた86点のうち、ベンチポイントが過半の49点に上った琉球。松脇の言葉にも層の厚いチームへの自信がうかがえる。

 「今日は僕が活躍できましたが、僕じゃなくてもベンチから出てくるメンバーがスタートと同じようなプレーができて、得点も取れる。信頼関係があるので、ファウルトラブルが起きても今日のような試合ができたのだと思います」

第1戦で活躍を見せた松脇圭志©Basketball News 2for1

CS4試合で出場30分超えは2例のみ

 第2戦は同点で第4Qを迎えるなど最後まで勝負の行方が分からない接戦となったが、河村や森井健太を起点とする横浜BCのオフェンスに対し、ピック・アンド・ロールの際のボールマンへのプレッシャー、河村に簡単にボールを持たせないディナイなどを徹底し、終盤で抜け出して勝ち切った。3Pを3本成功させた小野寺祥太、19得点、6リバウンドを記録したダーラムの活躍も印象的だった。

 また、河村に対して激しいディフェンスを貫いたセカンドユニットのフリッピンは第4Qで9分31秒出場し、オフェンスではポイントガードの役割を果たした。同じくベンチスタートのダーラムも第4Qはフル出場。それを念頭に桶谷HCはこう語った。

 「スタートの5人ではなく、クロージングの時間帯に、その時に一番いい5人の組み合わせを作れるのは本当にキングスの強みだと思います。それだけベンチが厚く、特徴のある選手たちがいる。それを一番実感できた試合でした」

記者の質問に答える琉球・桶谷大HC©Basketball News 2for1

昨季の反省生かす 外部から怪我予防トレーナーも

 今シーズンの琉球を取り巻く環境は、他チームに比べて怪我のリスクがより大きかったことは間違いない。アウェーの度に飛行機を利用する必要があり、移動時間が長いという地理的要因は毎シーズンのことだが、天皇杯で決勝まで進み、さらに各国の強豪クラブが集結した初開催の東アジアスーパーリーグ(EASL)にも出場したため、リーグで最も試合数が多かった。

 特に疲労の蓄積が懸念されるレギュラーシーズン終盤の3月は、5日間の短期開催となったEASL、千葉ジェッツとぶつかった天皇杯決勝という2つのタイトル戦に加え、その合間にリーグ戦で西地区の上位争いを続けていた広島ドラゴンフライズと対戦。過密な日程で強豪との試合が続いた。

 それでも大きな負傷者を出さずに、チームが目指す最終目的地であるBリーグファイナルの舞台に良好な健康状態を保ったまま辿り着いた要因は何だったのだろうか。桶谷HCが説明する。

 「本当にメディカルチームの努力だと思います。トレーナー、ストレングス&コンディショニングコーチ、スキルコーチなど、コーチ陣とスタッフがコミュニケーションを取りながら今選手たちがどのくらい疲れているのかを見極め、プレータイムを制限したりすることもシーズンを通してやってきました。それが怪我につながらなかった部分はあると思います。また、月に2回、外部から怪我を予防するためのトレーナーにも来てもらい、そのためのトレーニングもしています」

層の厚さが武器になっている©Basketball News 2for1

 昨シーズンもCSを勝ち上がったものの、球団初のファイナルでは田代や牧、並里成らを負傷などで欠き、今村や岸本といった主力への負担が大きかった琉球。帰化選手の小寺ハミルトンゲイリーを含めた「3BIG」に頼らざるを得ない時間帯も多く、”手札”の少なさが優勝を逃す一要因にもなった。指揮官の脳裏にはその苦い経験もあったのだろう。

 「今シーズンは怪我に対して非常に敏感になってやってきたので、そのおかげでシーズンを乗り越えられたかなと思っています」

 CSに入ってからも、これまでの4試合で出場時間が30分を超えた例はセミファイナル第1戦の松脇と、同第2戦の今村のみであり、プレータイムのシェアが徹底されている。岸本も「今シーズンはプレータイムに関していろんな側面から考えてもらい、分散してきた部分はすごく大きく、自分も例年になくコンディションがいい。チーム全員の努力の賜物だと思います」と語る。

 健康管理の面で見事に昨シーズンの反省を生かし、前回とは真反対の状況下でファイナルを迎えることとなった。

「泡盛と焼肉」で初優勝を祝えるか

 第1戦でMVPに輝いた松脇には、沖縄の地酒・泡盛の有名な銘柄「残波」が贈られた。コート中央での贈呈時に満面の笑みを浮かべていたため、会見で「泡盛が好きなんですか?」と問うと、笑いながらこんな答えが返ってきた。

 「ちょっと言いづらいんですけど、泡盛はあまり飲めないんです。だからちょっと笑っちゃいました。佳太さんと祥太さんと『今日(の賞品)なんだろう』って話をしていて、『残』で字が見えた瞬間に『泡盛だ』と思って(笑)。頂いたのに申し訳ないんですが、みんなに飲んでもらおうかと思います」

 第2戦では、MVPで賞金50万円を獲得したダーラムがチームメートに「Go YAKINIKU Guys!」(焼肉に行こう!)とマイクで呼び掛けると、コート上で横一列に並んだメンバー全員が満面の笑みを浮かべながらガッツポーズや拍手をして喜びを爆発させた。試合後、今村に「いつ行くんですか?」と聞いてみた。

 「今シーズン、このメンバーで試合ができるのも多くてあと3試合、早ければ2試合で終わってしまいます。できれば優勝して、選手、スタッフを全員巻き込んで、AD(ダーラム)持ちで行きたいと思います(笑)」

記者会見に臨む今村©Basketball News 2for1

 泡盛の注がれたグラスを片手に、全員で焼肉を囲みながら初優勝を祝えるか。27日に開幕する千葉ジェッツとのファイナルへ。誰一人欠ける事なく、開幕から7カ月超に及ぶ長い時間をかけて構築してきた高い総合力で、大一番に挑む。

(長嶺 真輝)

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