琉球ゴールデンキングス、島根との西地区頂上決戦を前に“アイデンティティ”の堅守復活
ショーディフェンスをする琉球ゴールデンキングスのジョシュ・ダンカン©Basketball News 2for1
沖縄を拠点とするフリーランス記者で2for1沖縄支局長。沖縄の地元新聞で琉球ゴールデンキングスや東京五輪を3年間担当し、退職後もキングスを中心に沖縄スポーツの取材を続ける。趣味はNBA観戦。好物はヤギ汁。

 西地区2位の琉球ゴールデンキングスは9日、ホームの沖縄アリーナで同地区7位の京都ハンナリーズと対戦し、93ー80で勝利。ベンチに入った13人が全員コートに立ち、そのうち11人が得点するバランスのいい攻撃を見せた。前日も83ー77で白星を飾っており、2連勝でこのカードを終えた。

 5日に同じくホームであった大阪エヴェッサ戦では89失点を喫して負け、最近はチームの“アイデンティティ”である守備にほころびが見えていた琉球。京都との連戦も2試合とも平均失点(73.34点)を上回ってはいたものの、個々の強度や守りの連携が改善し、堅守復活を印象付けた。

 12日にアウェーである西地区1位の島根スサノオマジックとの“西の頂上決戦”に向け、明るい材料となった。

京都に連勝 ハードショーやトラップ… 守りの選択肢が増加

 9日の京都戦、琉球はスタートから小野寺祥太や岸本隆一を中心にディナイやボールマンへの強いプレッシャーを徹底し、主導権を握る。さらに開始1分、相手のピックプレーに対し、これまであまりやってこなかった守り方を見せた。

 中央の高い位置でボールを持った京都のエースガード、マシュー・ライトに岸本がマッチアップする。スクリーンをかけた京都のシェック・ディアロについていたジャック・クーリーがハードショーでライトにプレッシャーをかけ、ダイブしたディアロにパスを誘導。そこに今村佳太がカバーに入り、すかさずクーリーがディアロのマークに戻ってシュートチェックし、ミスを誘った。

 これまでは基本的にファイトオーバーで1対1でのディフェンスが主だったが、この日はビッグマンが積極的にハードショーを仕掛け、スイッチやローテーションで守る場面が多く見られた。そのため高さのミスマッチが頻繁に発生したが、ダブルチームで潰しにかかるなど、チームディフェンスに対する高い意識が垣間見えた。

 一方で、ハードショーを仕掛けた際、この日12アシストを記録したライトにディフェンスの隙間を突いて上手くビッグマンにボールを落とされたり、ローテーションミスが見られたりもした。それでも桶谷大HCはチームディフェンスに及第点を付けた。

 「ハードショーに出たところでパスを落とされて点数は取られたけど、その中でも自分達がボールプレッシャーをかけたり、ディナイを張ったりして、ヘルプの際も結構速くローテーションができたので、そこはすごく良かったと思います。誰が出ても強度の高いディフェンスができたことで、オフェンスにもいい流れができました」

 その言葉通り、スムーズなボールムーブメントから各選手がバランス良く得点を決め、前半のターンオーバーもわずか2と好循環を生んだ。

©Basketball News 2for1

桶谷大HCが示した批判への“Answer”

 ディフェンスのオプションを増やしたのには、理由がある。桶谷HCの念頭にあったのは、前節の大阪戦と次節の島根戦だ。以下は、ハードショーを仕掛ける頻度を増やした背景について聞いた際の答えである。

 「島根には安藤誓哉選手とビュフォード選手がいて、この前の大阪戦ではニュービル選手にやられたりしてしまいました。そういう中で、(ハードショーでの守り方は)自分たちが武器として持っておくことが必要だと感じていました。クラッチな選手に対してはもう少し対応しないといけないとも思っていたので」

選手に指示を出す琉球ゴールデンキングス・桶谷大HC©Basketball News 2for1

 大阪戦では、最終盤にピックプレーからニュービルとクーリーの1対1の場面をつくられ、平面のミスマッチを突かれて連続得点を許した。圧倒的な得点力を有する個の選手に対し、ハードショーやトラップを仕掛けてボールを離させる選択肢は、今後も必要になるとの考えなのだろう。

 指揮官は「自分たちが一つチャレンジをして、それに対して課題も出た。トライアンドエラーをしながら島根戦に向かいたいです。このオプションを使うか使わないかは分かりませんが、こういう選択肢も持っているということは出していきたいです」と続けた。少し冗談ぽく「大阪戦でニュービルを止められなかったって、僕は叩かれてるんで」と言った後、不敵に笑い、言った。「(これからを)見ていてください」。

 批判に対する一つの“Answer”を示した桶谷HC。今後の舵取りに注目だ。

島根と3ゲーム差 田代直希主将は地区6連覇に意欲

 ディフェンス面については、田代直希主将「チームの目指したいディフェンスが明確になってきました」と好感触を示すが、「80」という失点数には不満も残したようだ。チームとしては各クオーターでの失点が18点以内、試合を通しては60点台に抑えるという目標があるとした上で、自戒を込めた。

 「80失点は僕達が望んだ結果ではないので、そこはもっと詰めていきたい部分です。(ディフェンスの新たなシステムについては)どうしようもなく調子が良くなった選手が相手にいた時は、ハードショーでボールを離させることが必要になってくると思うので、HCとしてはいろいろチャレンジしたいんだと思います」

田代直希は地区6連覇に意気込む©Basketball News 2for1

 レギュラーシーズンはあと10試合を残して、島根とのゲーム差は「3」。西地区6連覇に向けては、12日の試合は絶対に落とせない一戦となる。地区優勝に向け、田代も強い意欲を見せる。

 「まだまだ全然チャンスはあると思います。何より、優勝すればCSをホームで開催できるのが大きい。過去にはアウェーでCSを戦ったこともあるので、ホーム開催がどれだけ僕たちの力になるのかは理解しています。なんとしてもホーム開催を取りに行きます」

 現在、平均得点がリーグで4位(84.0点)の島根に対しても「各クオーター18点以内というとこはしっかり目指していきたい」と強調する。平均失点はリーグで3番目に少ないが、まだ進化を続けている琉球のディフェンス。トップクラスの攻撃力を誇る島根に対し、どこまで機能するか。CSの結果を占う上で、注目したいポイントだ。

(長嶺 真輝)

9日の京都戦でBリーグデビューを果たした琉球ゴールデンキングスの須藤春輝(左)©Basketball News 2for1

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