【バスケ日本代表】28年ロサンゼルス五輪で「プレーしたい、でも…」ジョシュ・ホーキンソンが示す“チームファースト”の精神【インタビュー後編】
サンロッカーズ渋谷のジョシュ・ホーキンソン©Basketball News 2for1
バスケットボールニュース2for1代表。スポーツニッポン新聞社の編集者・記者を経て、2020年に現メディアを立ち上げる。日本代表やBリーグからNBA、WNBAまで国内外さまざまなバスケイベントを取材。スポーツライターとしても活動している。

 2023年には日本国籍を取得し、昨夏には日本代表としてパリ五輪にも出場したジョシュ・ホーキンソン。日本のインサイドを支えるビッグマンに、バスケットボールニュース2for1では単独インタビューを敢行。後編では、日本バスケットボール界への思いやBリーグサンロッカーズ渋谷で挑む今シーズンへの意気込みなどを語ってくれた。

インタビュー前編はこちら

”盟友”河村勇輝とは頻繁に連絡 「自分を出せ」と助言も

 23年のワールドカップ、昨夏のパリ五輪と、ホーキンソンとともに「アカツキジャパン」を導いた河村勇輝。今季は戦いの舞台をBリーグからNBAへと移し、メンフィス・グリズリーズと下部Gリーグのメンフィス・ハッスルを行き来する充実のシーズンを過ごしている。

 最高峰の舞台で活躍する盟友の姿には、ホーキンソンも刺激を受けているという。

 「(河村のNBAでのプレーは)素晴らしいことだと思います。海外に挑戦して、(グリズリーズと)2ウェイ契約を結べたことは本当に大きなこと。(2ウェイ契約は)2つの違う役割。Gリーグに行って、横浜(ビー・コルセアーズ)や日本代表の時のように、自分が先発ポイントガードとして長時間プレーして、活躍するような役割。そして、NBAでは試合終盤のガーベッジタイムに出場して、プレーする機会を得るような役割。この2つの世界を経験できるのは彼にとっていいことだと思います。NBAレベルでプレーして経験を積んで、Gリーグでは長時間プレーして、若くて運動能力が選手たちと対戦する。これはBリーグでプレーすることとはまた違う。だから、2ウェイ契約でNBAとGリーグのいいところを経験できているんじゃないかなと思います」

 河村とは現在でも頻繁に連絡を取り合う仲だといい、同じくGリーグでプレーする富永啓生と3人で定期的に近況報告をするのだという。

 「ちょうど(インタビューの)2日前にも、オーランドでの(Gリーグの)ショーケースがあったので、2人が同じホテルにいて、3人でビデオ通話をしました。(普段は)日常の生活であったことなんかをよく話しています」

 大学時代からアメリカで生活していた富永とは違い、河村がアメリカで生活するのは今季が初めて。アメリカでの生活も日本での生活も経験しているホーキンソンや富永が、河村の渡米前にはアドバイスを送っていたそうだ。

 「(河村の)メンフィスとの契約が発表されたとき、僕と啓生で彼に言ったんです。『アメリカではそんなに真面目にしていてだめだよ』って。日本では、友達として彼は面白くて活発なやつだって知っているけど、人前とかスピーチとかではかなり真面目に話していたり、あまり感情を見せない部分があるから。『アメリカでは自分を出して楽しまないとだめだよ』って伝えていました。『自分を出しさえすればアメリカのファンにも好きになってもらえるから』って。実際にそういうアドバイスをした後は、チームでダンスをしていたり、ジャ(モラント)と一緒に盛り上がったりしていた。彼も楽しそうだし、よかったです」

NBAでプレーする河村勇輝(右)や富永啓生とは頻繁に連絡を取り合うという©Basketball News 2for1

若手有望株に注目 川島悠翔のシアトル大進学を“アシスト”

 河村や富永に加え、ジェイコブス晶(ハワイ大)、山ノ内勇登(ネバダ大)、川島悠翔(シアトル大)など海外でプレーする若きタレントも増えてきている。日本代表合宿などでそういった若手選手とともにプレーしたホーキンソンも「彼らは今後、日本にとって非常に面白い存在になっていくと思います」と注目する。中でも、ホーキンソンの地元であるシアトル大に進学した川島については、家族総出で生活をサポートしているという。

 「(川島のシアトル大学への進学を)手助けできたことがうれしいです。そんなにいいオファーをもらえていなかったみたいで、その中でアメリカの大学でプレーしたいという思いがあったようなので。彼とシアトル大学をつないで、奨学金も獲得できるように僕が手助けをしました。僕の両親がほとんど彼のホストファミリーのような状態になっていて、ディナーに連れて行ったり、アメリカの名所を紹介したりしているようです(笑)

 新しい場所で生活するときは少し怖かったり、友達がいないときも多いので、(ホストファミリーが生活の面倒を見るような)そういうことは大切です。僕も最初日本に来たときは同じような状況だったので。シアトルで彼がいい経験を詰めていればいいなと思います」

日本代表の川島悠翔(右)©Basketball News 2for1

 東京五輪、パリ五輪と2大会連続で五輪に出場した日本代表だが、2028年のロサンゼルス五輪を目指すためには、ジェイコブスや川島といった「若き侍」の活躍も必要になるだろう。ホーキンソンも母国で開催されるロサンゼルス五輪については、「個人的なことを言えば、プレーしたい」と話すが、望むのはあくまで日本代表の発展だという。

 「僕の一番の関心は日本代表が最高のチームになるために、チームを助けること。もし、それが僕がチームにいないことで成し遂げられるのであれば、それはそれで構わない。それは他のだれかが僕以上に日本代表を助けられるということだから。

 まずは日本がロサンゼルス五輪に出られるように助けていきたいですね。まず、そこにたどり着くためにやらなきゃいけないことがたくさんあって、それがどれだけ大変なことは(23年の)ワールドカップで分かりました。次の五輪の時には自分は33歳とかになっていて、若くもないし年寄りでもない。もしかしたら新しい帰化選手がチームに入るかもしれない。でも、ロスター入りできるように全力を尽くすつもりです。

 とにかく、僕は日本代表が最高のチームになるために力を尽くすのみで、もし(ロサンゼルス五輪で)ロスター入りできなければ、その時はその時です」

日本代表への思いを語るホーキンソン©Basketball News 2for1

サンロッカーズ渋谷でリーグ制覇へ「一歩ずつ進んでいければ」

 日本のバスケットボール界を盛り上げるために全力を尽くすホーキンソンだが、目下の目標はBリーグ制覇だ。所属するサンロッカーズ渋谷は前半戦の30試合を終え、18勝12敗で中地区4位。チャンピオンシップ(CS)進出圏内の千葉ジェッツに1ゲーム差に迫るなど好調を維持しているだけに、後半戦にかける思いは大きい。

 「昨シーズンの序盤よりはいいスタートが切れたと思う。でも、自分たちがなりたいと思っているチームになるためには、しっかりと土日の試合を連勝できるようにならないといけない。いまは週末に連敗することはないけど、連勝もあまりできていない。水曜日の試合に勝つことでそこを補えているけど、しっかりとリズムをつかんで勢いに乗って、連勝を伸ばしていけるようにしないといけない。もし、プレーオフ(CS)に進んで優勝をしたいと思っているのならね」

 昨シーズンは1勝差でCS進出を逃し、涙を飲んだSR渋谷。ホーキンソン自身もキャリアを通してCSに出場した経験がないだけに、今シーズンこそはという思いも強いだろう。

 「チームの目標は昨シーズンのチームよりも成長すること。昨季はプレーオフを1ゲーム差で逃したし、まずはプレーオフ進出を目指すために強い後半戦を過ごしたいです。もし、プレーオフに進出できれば、あとはマッチアップの問題になる。1チームずつにフォーカスしていって、一歩ずつ進んでいければと思います。誰もが優勝したいと思うし、僕ももちろん優勝したい。でも、まずそこにたどり着くためにやらなければいけないことがたくさんある。なので、一歩ずつ進んでいきたいと思います」

 常にチームファーストの精神でバスケットボール界を盛り上げるジョシュ・ホーキンソン。年々レベルが上がっているBリーグでも、チームを成功へと導くことができるか。SR渋谷の後半戦の戦いにも注目だ。

(滝澤俊之)

サンロッカーズ渋谷での後半戦に意気込む©Basketball News 2for1

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