西地区7連覇に“黄信号”が灯った琉球ゴールデンキングス 「やり続けられない」今村佳太が語るチームに対する危機感とは
琉球ゴールデンキングスの今村佳太(右)と名古屋ダイヤモンドドルフィンズの齋藤拓実©Basketball News 2for1
沖縄を拠点とするフリーランス記者で2for1沖縄支局長。沖縄の地元新聞で琉球ゴールデンキングスや東京五輪を3年間担当し、退職後もキングスを中心に沖縄スポーツの取材を続ける。趣味はNBA観戦。好物はヤギ汁。

 Bリーグ西地区首位の琉球ゴールデンキングスにとって、達成が目前に迫っていた地区7連覇への道に“黄信号”が灯った。

 琉球は27、28の両日、同地区2位の名古屋ダイヤモンドドルフィンズ(名古屋D)とアウェーで対戦し、77ー83、79ー86で連敗。通算成績は40勝18敗となり、地区優勝マジックは2のまま。一つでも勝っていれば地区優勝が決まるという優位な状況で臨んだ連戦で白星を掴めず、名古屋Dにゲーム差「1」に迫られた。

 レギュラーシーズン(RS)は残り2試合。名古屋Dとは今季4戦全敗となったため、勝敗数で並べば順位が反転する。名古屋Dの結果に関係なく、西地区3位の広島ドラゴンフライズとの最終節で2連勝すれば地区優勝が決まるため、依然として優位な状況下ではあるが、今シーズン初めて同一カードでの連敗を喫したチームの現状は決して良いとは言えない。

 28日の試合後、記者会見に姿を見せた今村佳太は、チームに対する危機感と復調するために必要なことを語った。

3P成功率が20%台に低迷 要所で決めきれず

 第1戦は序盤から、持ち味であるボールムーブメントでオープンなシュートシチュエーションを多くつくっていたが、3Pの成功率が上がらない。すると、徐々にディフェンスの強度を上げてきた名古屋Dにターンオーバーを誘発され、流れをつかまれる。警戒していた須田侑太郎に連続で3Pを決められるなど点差を離され、終盤の追い上げも届かずに敗れた。

 ほとんどのスタッツでそこまでの差はなかったが、3P成功率は名古屋Dが41.7%(24本中10本)だったのに対し、琉球は22.6%(31本中7本)に低迷した。

 迎えた第2戦もなかなか3Pが決まらない状況が続いたが、素早いトランジションや積極的なリングアタックで着実に得点を重ねた。ディフェンスではオールコートでのプレッシャーを増やしたり、スイッチして名古屋Dの3P成功率を抑えたりして接戦に持ち込んだ。

 勝負の第4Qに入ると、ヴィック・ローが存在感を増す。ペイント内でシュートを決めた後、ドライブでディフェンスを引き付けて松脇圭志の3P成功を演出。さらに豪快なディフェンスリバウンドからリングにアタックし、ファウルをもらって2本フリースローを成功させ、残り約8分で2点をリードした。

 しかし、直後のディフェンスでローが張本天傑のレイアップに対してブロックに飛び、三つ目のファウルを吹かれる。さらに審判に対して不満を叫んだことでテクニカルファウルがコールされ、痛恨の四つ目。ベンチに下がらざるを得なくなり、膨らみかけた勢いを醸成することはできなかった。

 その後は再び一進一退の攻防が続いたが、残り4分57秒でのオフィシャルタイムアウト後、逆に名古屋Dに連続3Pから流れをつかまれた。フリースローを着実に決められて点差を詰められず、そのまま逃げ切られた。

 3P成功率は名古屋Dを30.3%(33本中10本)に抑えたが、琉球はこの日も21.2%(33本中7本)と低水準。名古屋Dは決して高くない成功率の中でも要所ではしっかり決め切っていた印象だったが、琉球は単発で終わることが多く、終盤の勝負どころでエアボールになる場面もあった。

外角のシュートが低調だった琉球©Basketball News 2for1

依然地区1位も、チームが抱える「弱さ」とは

 今村佳太が会見の冒頭で語った試合の総括には、悔しさと危機感が滲んだ。

 「今シーズンの名古屋Dとの対戦は本当に完敗かなと思っています。今の自分たちの実力はこんなものなんだということを突き付けられた試合でした。レギュラーシーズンの中でうまくいっていたことなど、自分たちがやらなきゃいけないことをやり続けられないという弱さが、このチームにはあると思っています」

 これで名古屋Dとはゲーム差1。地区優勝の行方は最終節までもつれることとなった。2連戦の結果を受けて焦りがあるのか、それとも気が引き締まったのか。率直な思いを聞くと、険しい表情を崩さずにコメントした。

 「いや、引き締まっているという感覚はないです。もちろん焦っていますし、雰囲気は良くない。同一カードで2連敗して、自分たちが勝ち取れるはずだったものを勝ち取れなかった。正直、めちゃめちゃ苦しい週末でした」

 2戦とも最終盤で逃げ切られる展開となり「我慢強さがまだまだ足りていない」とも語った。

記者の質問に答える今村佳太©Basketball News 2for1

自信と責任を持って「打ち続ける」

 今村が課題感を口にした一方で、この連戦では攻守とも「戦術」という面ではやりたいバスケを遂行できている時間帯も多かった。

 名古屋Dが誇る齋藤拓実スコット・エサトンの強力なツーメンゲーム、各選手による積極的な3Pに対して手こずりながらも、ディフェンスを修正しながら我慢を継続。オフェンスでもタフショットは少なく、ボールをシェアしながらオープンショットを打つという認識が共有されていた印象だった。

 しかし、前述のように2戦とも3Pがことごとくリングに嫌われた。もちろんシュートの調子には波が付き物であり、常に高確率を維持するのは容易なことではない。ただ今回のような上位陣同士の緊迫した試合では、決めるべき場面で決めないと一勝をもぎ取ることが難しいのも事実だ。それはCSでより顕著になってくる。

 琉球はこれで3連敗となったが、この3試合は全て3P成功率が20%台と低空飛行を続けている。今村に決定力が上がらない要因を聞いた。

 「選手一人一人の積極性が失われているということはすごく感じています。自信を持って打つことができていないというか。プレーしながら選手の顔を見てても、それは感じる部分があります。要因はいろいろあるとは思うんですけど、そこはチームとしての課題かなと思います」

 どのチームにも言えることだが、そのシュートが入ろうが入るまいが、打つべき場面で躊躇するとチームのオフェンスリズムを崩してしまいかねない。それとは反対の例ではあるが、この連戦では小野寺祥太が成功率の低い「ノンシューター」扱いをされ、1戦目では3Pを8本打って1本のみの成功にとどまったが、それでも2戦目でもフリーの場面で打ち続け、この試合では5本中2本の成功と確率を上げた。

 今村に対し、小野寺のような姿勢が必要ということか、と続けて質問してみた。

 「祥太さんのシュートはチームとして信じている、狙っている部分でもあるので、打ち続けてほしいと思っています。それは祥太さんに限らず、松脇や隆一さん、僕もです。シュートを得意としている選手たちが打つのを躊躇し、チームの戦術、戦略にフォーカスし過ぎてしまうのは、個人が伸びない要因になると思っています。責任を持って打ち続けるメンタリティーはなくさないでほしいですし、自分もそのメンタリティーでプレーしていこうと思っています」

ドライブする小野寺祥太©Basketball News 2for1

「カムバックできるかは自分たち次第」

 琉球は最終節、5月4、5の両日に広島とアウェーで対戦する。広島は現在ワイルドカード(WC)1位ではあるが、WC2位の千葉ジェッツが1ゲーム差、WC3位のサンロッカーズ渋谷が2ゲーム差で迫り、WCのCS進出チームの確定も最終節にまでもつれ込んでいるため、両チームともに一戦たりとも落としたくない連戦となる。

 琉球が1敗、もしくは2敗した場合は名古屋Dの結果次第で西地区の1位と2位が反転する。ただ、琉球は2連勝すれば自力での西地区7連覇が決まることや、名古屋Dの最終節となる佐賀バルーナーズ戦が一日遅れの5、6の両日に行われることもあり、他カードの結果うんぬんより自分たちの調子を取り戻すことが最優先事項となる。

 今村も以下のように決意を述べた。

 「カムバックできるかどうかは自分たち次第だと思っているので、ポジティブではない内容をどれだけ乗り越えていけるか。これからCSを戦っていく上では、それがすごく大きな壁だと思います。それを個人個人が理解しない限り、絶対に優勝はできないし、優勝はそんなに甘いものじゃない。この時期に言うことではないかもしれませんが、自分たちが何をしなきゃいけないかということにフォーカスしてやっていけたらなと思います」

 琉球にとっての最大の強みは「我慢強さ」と「勝負強さ」だったはず。どんな相手に対してもハードなディフェンスを仕掛けて我慢を続け、最終盤の勝負どころで確率の高い3Pを決めたり、強力なインサイド陣がゴール下を制圧して勝ち切る。名古屋D戦と同様に激戦となることが予想される広島との最終節で、本来あるべき姿を取り戻せるか。CSの結果を占う意味でも、注目の連戦となる。

(長嶺 真輝)

地区7連覇へ正念場を迎えている琉球ゴールデンキングス©Basketball News 2for1

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