Bリーグ西地区首位の琉球ゴールデンキングスは17日、沖縄アリーナで同地区5位の佐賀バルーナーズと対戦し、2度にわたる延長戦を制して101ー97で勝利した。この結果を受け、琉球の7大会連続となるチャンピオンシップ(CS)進出が決まった。
通算成績は39勝15敗。西地区2位の名古屋ダイヤモンドドルフィンズが大阪エヴェッサに敗れたため、ゲーム差は4に開き、地区優勝マジックは二つ減って「3」となった。
西地区7連覇に近づく大きな勝利を引き寄せたヒーローの一人は、PGの牧隼利だ。ヴィック・ローが体調不良で欠場し、右手首にテーピングを巻いた岸本隆一も本調子とは程遠い状態の中、3P6本を含むキャリアハイの22得点を記録。ホームで躍動した背景には、アウェーで逆転負けを喫した14日の島根スサノオマジック戦での悔しい経験があった。
延長で光った松脇&小野寺の「ビッグDF」
試合はスタートから両軍ともシュート成功率が上がらず重たい展開となったが、牧が第2Qだけで3Pを3本成功させ、琉球が一時、この試合最大となる13点のリードを奪取した。しかし、佐賀のレイナルド・ガルシアに内外で得点を重ねられ、41ー40とほぼ互角で折り返した。
第4Qでも琉球が9点までリードを広げたが、またも追い上げられ、残り4.5秒でチェイス・フィーラーに3Pを沈められて76ー78と逆転を許す。それでも直後、今村佳太がバックドアカットからレイアップを決めて78ー78となり、延長戦に突入した。
オーバータイムでは佐賀が残り1分30秒で6点先行したが、今村の3Pなどで差を縮め、さらに松脇圭志と小野寺祥太の連続スティールから逆転。しかし、3点リードの残り1.1秒で松脇が狩野祐介の3Pシュートに対してファウルし、90ー90で2度目の延長戦に入った。ダブルオーバータイムも一進一退の攻防が続いたが、最後は松脇が残り1分34秒で値千金の3Pを決めてリードし、そのまま逃げ切った。
試合後、コート中央でマイクを握った松脇は「オーバータイムの最後に僕がファウルしてしまって、もう一回オーバータイムになったんですけど、みんなが繋げてくれて勝ち切ることができました。CSまでレギュラーシーズンはあと6試合あるんですけど、まだ西地区優勝が決まっていないので、そこを決められるように一つ一つチームで戦っていきたいと思います」とコメントした。
ローの不在と岸本の不調に加え、オーバータイム開始25秒でジャック・クーリーがファウルアウト。好調だった牧も試合途中に膝を痛めてオーバータイムは出場できなかったため、桶谷大HCは苦しい中での勝利にチームの手応えを語った。
「今シーズンはこういう勝利をなかなか出せなかったキングスが、ここに来てやっとこういうゲームをものにし出しています。こういうゲームを勝てると一段階チーム力が上がるし、頑張り切れる人の集団だからこそみんながリスペクトできると思います。今日は本当にチームにとってとてもいい勝ちになりました」
松脇と小野寺がオーバータイムの土壇場で見せたディフェンスを「ビックプレー」と評し、延長で二人を起用し続けた理由を説明した。
「(岸本)隆一が本調子じゃなく、それでもハンドラーがいない中で何とか試合に出てもらっていた中、やっぱり本人も気にしながらやっていました。そこで気にしながらやるよりも、小野寺のディフェンスの方が今日に関してはチームにプラスになると思いました。松脇はガルシアとの相性が一番良かったので、残す判断になりました」
牧、覚醒の糧となった島根戦の「ゲームを壊した責任」
試合のMVPに輝いたのは、ハンドラーが不足する中で際立った存在感を放った牧。勝負を決めるオーバータイムに出場できず「悔しい気持ちが強いです」と振り返った一方、この一戦に向けては「自分で試合を決めてやろうというくらいの気持ちで臨みました」と強い決意で臨んだという。
前述したように、背景にあったのは14日の島根戦だ。この試合では岸本が手首を気にして後半に出場できなくなり、自身のプレータイムが増えたが、第3Qに放った3Pを4本全て外すなどして流れを失い、前半を12点リードで折り返しながら逆転負けを喫した。
「島根戦の第3Qから隆一さんが出られなくなり、僕が出てゲームを壊してしまった。そこで3Pを決めきれず、ゲームコントロールもうまくいかなくて、その責任はすごく感じました。隆一さんもとても頼れる先輩ですけど、頼り過ぎている自分がいることにも気付かされた試合でした」
佐賀戦では強い覚悟がプレーに現れ、序盤からフリーになれば迷わずシュートを放ち、ペイントタッチからのレイアップも要所で決めた。この日は琉球のシュートタッチが悪く、第4Qまでにチーム全体で放った3Pは26本中7本のみの成功にとどまったが、その7本のうちの6本は牧が沈め、チームをけん引した。
今シーズンの平均得点である4.2点を大きく上回る22点を叩き出し、選手のスキル指導を担当する山下恵次プレーヤーデベロップメントコーチへの感謝も口にした。
「日頃から山下さんが一人一人のスキル練習に付き合ってくれていて、その成果が一つ出たと思います。山下さんに対して感謝したいですし、ちょっと恩が返せたかなという気持ちもあります」
桶谷HCと同様にチームの変化も肌で感じている。「前までだと、第4Qで劣勢になった時に審判にチームとして文句を言ってしまったりして、バラバラなところもありました。それを選手、スタッフが受け入れて、ポジティブに変換しようという姿勢をここ最近の桶さんから感じます。それがチームにすごく良い影響を与えていると思ってます」
最短で20日に地区優勝決定「沖縄アリーナでCSを」
レギュラーシーズン残り6試合という最終盤でCS進出を決めた琉球だが、今シーズンの歩みは決して平坦ではなかった。以下は桶谷HCのコメントだ。
「自分たちが優勝チームということで、相手は『王者を倒す』というメンタリティーで失うものがない状況。リスクを負っていろんなことをやってくる中で戦わないといけず、EASL(東アジアスーパーリーグ)もあり自分たちにとって難しい戦いでした。勝率は昨シーズンや2シーズン前に比べて落ちているかもしれないですけど、その中で着実に一つ一つ、目標にしているものに向かって行っていると思っています」
次のハードルは、CSクォーターファイナルのホーム開催権が懸かる西地区7連覇。マジックは3と目前に迫る。今週末、名古屋Dは他カードより一日早く19、20の両日に島根と連戦を行うため、20、21の両日に長崎ヴェルカと対戦する琉球は最短で20日に西地区優勝を決める可能性がある。
牧は「例年のシーズンと比べても、西地区もワイルドカードも激戦感があります。だからこそ、僕たちの最大の武器である沖縄アリーナでCSをどこまで戦えるかというところに繋げていくため、早く西地区優勝を決めたいです」と意気込む。
いずれもファイナルに進出した直近2シーズンはいずれもセミファイナルまでを沖縄アリーナで行い、一度も負けてない琉球。地区優勝という過程が、リーグ連覇に向けて大きなステップになることを実感しているのだろう。
(長嶺 真輝)