Bリーグ・琉球ゴールデンキングスの桶谷大HCは「Find Way」という言葉をよく使う。日本語で「道を見付ける」「方法を探し出す」などの意味。バスケットボールにおいては、試合中に相手の戦い方にアジャストしたり、課題を修正したりして攻略する方法を見付け出すということだ。
琉球はもともと後半の勝負強さが売りのチームだったが、3月16日にあった天皇杯決勝で千葉ジェッツの勢いになす術もなく大敗。その後の数試合も含めてFind Wayの力が弱まっていた印象だった。しかし、3月30、31の両日にホームの沖縄アリーナであった東地区最下位の茨城ロボッツとの連戦では、いずれも終盤での競り合いを制して98ー96、81ー77と白星を重ね、目下4連勝中と本来の姿を取り戻してきている。
茨城は残留争いに身を置くが、シーズン途中に加入したジョニー・オブライアントとルーク・メイがフィットし、最近は上位陣とも好ゲームを演じている。そのため、桶谷HCは「最近の試合を見ていると茨城は簡単に勝てるチームじゃない。その相手にしっかり我慢して2試合取れたことは、チームとして成長できた部分だと思います」と手応えを語った。
試合中に修正を図る上で存在感を増しているのが、PGの牧隼利である。今シーズンは先発での出場は一度もないが、直近3試合は第4クォーターでいずれも10分間フル出場。試合終了時にコートに立っている「クロージング・ラインナップ」の5人はチームで最も重要視される傾向が強いため、いかに指揮官の信頼を勝ち取っているかが分かる。
31日の会見内容から、その背景を探る。
チームトップの「+14」 存在感際立つ“バランサー”の役割
岸本隆一が試合時間残り5秒で決めた劇的な逆転3Pで勝利を飾った第1戦を経て、迎えた茨城との第2戦。3Pを47.1%の高確率で決められた前日の反省を生かしたいところだったが、第1Qから3P4本を含む26得点を許し、ペースを握られる。
相手の速いペースにのまれたのか、オフェンスで攻め急ぐ場面があり、前半だけで7ターンオーバー。桶谷HCが「変なミッドレンジジャンパーが3、4本あって、オフェンスの終わり方が悪かった」と振り返る通り、まだショットクロックの時間が多く残っていても、コンテストされた状態でミッドレンジジャンパーを打ってしまう時もあった。
効率性を重視する現代バスケにおいて、そもそもミッドレンジのシュートは優先度が低いが、コンテストされた状態であればなおさら「打ってほしくない」(桶谷HC)のである。
しかし、後半は粘り強くピックを繰り返してオープンショットをつくり、ターンオーバーはわずかに一つ。最後は勝負どころで、ピックプレーでズレを作ってから今村佳太がゴールにアタックするジャック・クーリーにパスを落とし、立て続けに得点を重ねて逃げ切った。
個人スタッツではヴィック・ローがチームトップの18得点、アレン・ダーラムが9得点10リバウンド、今村が6得点に加えてチームトップの6アシストと活躍が目立ったが、その選手が出場している時間帯の得点差を示す「+/−」は牧がチームで最も高い「+14」。後半20分間のうち13分14秒コートに立ち、自身のターンオーバーは試合を通してゼロだった。
冒頭で記した通り、最近の試合でクロージングの時間帯にプレーすることが多い牧だが、その理由を桶谷HCに聞いた。
「状況判断が一番いい。シュート力やディフェンス力がある選手は他にもいますが、勝負どころで何を取るかと考えた時に、コンディションを含めて最後を締めくくるには牧が一番いいかなと思っています。オフェンスでバランサーをやってくれるので、隆一や今村も攻めやすくなる。今日も牧が出てる時間が一番リズムが良かったです」
コミュニケーション能力に対する評価も高い。
「バスケIQ高いので、やって欲しいことをすぐに理解できるからコミュニケーションが取りやすい。ギャンブルなプレーをしないからエラーが分かりやすく、こちらが『次にこうアジャストしよう』ということを考えやすくなります。外国人選手とのコミュニケーションも牧が一番うまい。彼がいることでチームが円滑になりますね」
牧も「的確な判断をオフェンスでもディフェンスでも求められています。そこで冷静に、チームがうまく回るようにするプレーすることを意識しています」と役割を自覚している。
オフェンスで重視する「リズム」とは
実際、牧はコートに出ている時にハドルを呼び掛けることが多い。フォーメーションのコールのほか、オフボールでも身振り手振りや声出しで動きを指示している場面もよく見る。茨城のように速いペースのバスケを好むチームを相手にしている時は、自分たちの「リズム」を大事にしているという。
「茨城や千葉Jはペースが速いので、落ち着けるところではペースを落とさなきゃいけない。向こうのペースにかき乱されて、相手のリズムで試合が進んでいく場面がどうしてもある。そういったところで、ペースを落とすところと、上げて自分たちのペースに持っていくところというのは、出ている時に意識しています」
この日の会見では、コーチ陣との共通認識が十分に図れていることが分かる場面もあった。先に会見に姿を見せた桶谷HCが、オフェンスにおいて「ピックを一発で終わるのではなくて、我慢強くセカンドアクション、サードアクションに入る」ことを重要視していると話し、その後に会見場に入った牧が、理想のシュートセレクションについて聞かれ、異口同音にこう答えたのだ。
「一つの動きじゃなくて、動きが二つ重なった時だと思います。昨日、今日の試合でもそうでしたが、一つのピック&ロールやピック&ポップに時間をかけてしまったり、次への展開がなくオフェンスが終わったりしてしまうと厳しい。2、3個のアクションでやりたいシュートの流れをつくるプレーが求められていると思います」
オフェンスのアクションが起きやすいようなフォーメーションをコールしたり、ベンチにいる時に同じくセカンドユニットの松脇圭志や荒川颯らと「今はこういうプレーが良さそう」などと話したりして、常にコミュニケーションを図っているという。
「僕なんかには無い素晴らしい能力を持っている選手がいっぱいいるので、その分一歩引いた目で見ることが自分に求められている点だと思います。細かくハドルを組んだり、コミュニケーションを取ってどういったものをみんなが求めているのかを擦り合わせることは意識しています」と話す。
ローや今村、ダーラム、岸本など個の得点能力が高いプレーヤーが多い琉球だが、シュートセレクションが悪ければ当然得点効率は下がる。だからこそ、全体を見渡してコントロールする牧のような“バランサー”が試合中の「Find Way」には必要なのだろう。レギュラーシーズンは終盤戦に差し掛かっているが、まだ試合ごとで遂行力にムラがある琉球にとって、牧に求められる役割は今後も大きいだろう。
(長嶺 真輝)