直近3試合「平均103.6点」攻撃力が急上昇した琉球ゴールデンキングス “リバウンド王”と“日本代表”がベンチスタートという脅威
ハイタッチをする琉球ゴールデンキングスのヴィック・ロー(左)と今村佳太©Basketball News 2for1
沖縄を拠点とするフリーランス記者で2for1沖縄支局長。沖縄の地元新聞で琉球ゴールデンキングスや東京五輪を3年間担当し、退職後もキングスを中心に沖縄スポーツの取材を続ける。趣味はNBA観戦。好物はヤギ汁。

 Bリーグ西地区首位の琉球ゴールデンキングスは6日、沖縄アリーナに同地区最下位の京都ハンナリーズを迎え、106-80で快勝して連勝を「7」に伸ばした。通算成績は30勝12敗。この日は西地区2位の名古屋ダイヤモンドドルフィンズが敗れたため、ゲーム差が「2」に開いた。3位につけている全体順位でも、1位で東地区首位の宇都宮ブレックス(35勝7敗)、2位で中地区首位の三遠ネオフェニックス(34勝8敗)を猛追している。

 好調さの中で際立つのが、オフェンス力の劇的な向上だ。バイウイーク明けに行った3月の3試合における平均得点は103.6点。今シーズンを通した平均得点がリーグ6位の82.2点となっていることからも、この数字がいかに高いかが分かる。

 1月末からアレックス・カークが帰化登録選手として出場し始めたことで、チーム一得点力の高いヴィック・ローが3番のスモールフォワードとしてプレーする機会が増え、スペースを使いやすくなって本来の持ち味を発揮。最近では過去に3度リバウンド王を獲得しているジャック・クーリーと日本代表の今村佳太もベンチスタートとなっており、レギュラーシーズンが終盤に差し掛かる中でメンバーの厚みも増してきている。

ベンチポイントが48点 「3P20本」のチーム記録も

 京都戦は岸本隆一松脇圭志、ロー、アレン・ダーラム、カークのスターティング5でスタート。開始直後にローが足の痛みですぐに交代するトラブルがあったほか、「ディフェンスがかなりソフトだった」(桶谷大HC)と、シーズンを通しての課題となっている出だしの悪さも顔をのぞかせ、先行を許した。

 しかし、すぐにタイムアウトを取って守りを修正すると、ローに代わってコートに入った今村が3Pを決めたり、続いてコートインしたクーリーもゴール下で攻守に存在感を発揮し、第1Q終盤で逆転。クーリーはさらにブザービーターの3Pもねじ込み、会場を沸かせた。

 第2Qもオフェンスでボールシェアを徹底し、田代直希が3Pを2本決めたり、荒川颯も3Pを沈めたりして、出る選手がことごとく活躍。前半で挙げた58得点のうち、ちょうど半分の29点をベンチポイントが占めた。

 第3Q以降も終始圧倒し、リードを広げた。日本代表合宿の練習中に右手の指を剥離骨折するなどの怪我を負った渡邉飛勇もテーピングを巻いて出場し、登録選手12人が全員得点。最終的にベンチポイントは48点に達した。3PはBリーグでのチーム新記録となる20本を決め、1月にホームであった連戦では星を分けた京都を寄せ付けなかった。

 試合後、桶谷HCは「出だしで早めにタイムアウトを取ってディフェンスを修正しましたが、それ以外の35分くらいは自分たちがやりたいバスケットをできたと思います」と高く評価。特にオフェンス面に関しては「今はもう誰が出ても点数を取れる状態になっています。一番はベンチポイントが48点で、なかなか見たことがない数字。3P20本も見たことがない。チームメートのことをすごく信頼してボールを回せるようになってるからだと思います。誰か1人がボールを持ち続けるのではなく、ボールムーブをしっかりしながら、これを続けていけたらいいなと思います」と手応えを口にした。

荒川楓らベンチメンバーも躍動した©Basketball News 2for1

ヴィック・ローが「ナチュラルポジション」についた効果は…

 桶谷HCが重視するボールムーブメントの精度が上がってきていることは、数字にも表れている。現在、琉球の平均アシスト数はリーグで17番目の17.1本で、これまでは20番台が定位置だった。しかし、平均得点が100点を超えている直近の3試合は26.0本に達している。さらにこの3試合は3P成功率がいずれも40〜50%台を記録しており、ペイントタッチや内外でのボール回しからフリーのシュートシチュエーションを多く作れているからこその高確率であることは間違いない。

 1月は4勝5敗と負け越すなど前半戦は特にチームオフェンスの連係に苦しんだ琉球だが、カークの帰化が改善における最大のきっかけとなったことは明らかだ。カークが帰化登録選手として出場し始めた1月31日の佐賀バルーナーズ戦以降、黒星はアルバルク東京とのアウェー戦のみで、8勝1敗と大きく勝ち越している。少し時間を遡るが、2月28日にあったメディア向けの公開練習の際、桶谷HCはカークの帰化によるメリットをこう語っていた。

 「アレックスがいることによって3BIGができるので、ヴィックをハンドラーで使いやすくなったことはプラスになっています。あとはジャックを温存できるところ。ジャックが10数分の出場でダブルダブルのような数字を残すので、相手からしたら『何このセカンドユニット』ってなってると思う。アレックスがいる、いないでは全然このチームは違うと思います」

 特にローは、これまで4番ポジションをこなすことも多かったが、カーク、ダーラムと3BIGで出場している時は3番ポジションでドライブや3Pという強みを発揮しやすくなったため、目に見えて状況判断が改善している。3月3日にあった三遠戦では一人で7アシストを記録するなどまわりを使うことも増え、無理な1対1を仕掛ける場面はほとんどなくなった。6日の試合後、京都のロイ・ラナHCが発したコメントに、その変化ぶりが見て取れる。

 「琉球はカーク選手が帰化をした中で、3BIGというよりは、ロー選手がナチュラルなポジションであるスモールフォワードとしてプレーができているというところが、かなり脅威だと感じています。国際的に見ても、ロー選手はウイングの選手として優れています。琉球は強い選手が揃っているので、またチャンピオンシップを取れるような段階まで仕上がってきているように感じます」

 ローが先発の3番ポジションで出場できるようになったことは、ベンチの層も厚くした。その最たる例が、3月に入ってからベンチスタートになっている今村だ。

 得点力やハンドリングに優れた今村がクーリーと共にベンチから出場し、セカンドユニットのハンドラーを務めているため、交代してもコート上の5人のレベルが落ちることがほとんどない。PGの牧隼利は腰のコンディション不良で欠場が続いてはいるが、ハンドラーの安定感やチームの層の厚さが増したことで、荒川や田代、植松義也といった、これまで出場時間が少なかった選手も伸び伸びとプレーし始めており、好循環が生まれている。

アレックス・カーク(中央)の帰化によりロー(左)が3番でプレーすることが可能に©Basketball News 2for1

千葉Jとのリベンジマッチへ 鍵は「出だし」の出来

 上り調子のまま、16日にさいたまスーパーアリーナである天皇杯決勝を迎え、昨年同じ舞台で敗れた千葉ジェッツとのリベンジマッチに挑む琉球。キャプテンの田代は、一発勝負の試合を勝ち切るためのポイントに今季を通したチーム課題を挙げた。

 「今日も立ち上がりのところで自分たちが望む展開ができなかったのですが、一発勝負の時こそ立ち上がりが大事だと思います。出だしでエナジーを持ってやれるかが大切。前回の天皇杯決勝も出だしで少しもたついていた印象があります。昨年はかなり悔しい経験をしたので、二の舞にならないように、それを糧に『今年は絶対取るぞ』という気持ちを持って、この1週間準備をしていけたらなと思います」

 昨年はBリーグで初の王者となった琉球が、国内二大タイトルの内のもう一つを初めて手中に収めることができるか。大一番でも今の力を存分に発揮することができれば、十分に可能性はあるだろう。

(長嶺 真輝)

天皇杯決勝へと意気込むキャプテンの田代直希©Basketball News 2for1

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